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川柳的逍遥 人の世の一家言
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オーラ消しなさい角質とりなさい  森田律子


   賢 木

そのかみを 今日はかけじと 忍ぶれど 心のうちに ものぞ悲しき

昔の懐かしい日々のことを、今日は考えず、心にかけないようにしようと
思っていたのだけれど、心の底では苦しくて思い出してしまう。

「巻の10 賢木(さかき)」 

光源氏23歳。正妻の葵の上が亡くなり、これで、源氏の最も早い恋人の

一人
六条御息所も晴れて源氏の正妻に迎えられるだろうと世間が噂をする。

事実、彼女自身もそれを期待した。

六条御息所は源氏に手紙を送るが、帰ってきたのは、生き霊となった

彼女の姿を源氏が見てしまったと、そのことをほのめかす内容だった。

「すべては終わったのだ。もはや何の望みも残されていないのなら、

いっそ斎宮になった娘に付き従って、伊勢に逃げよう」と彼女は決意する。

石蹴って孤独を蹴って明日にする  北原照子

そして今は、事前に身を清めるため、六条御息所は野宮で暮らしている。

源氏はこの野宮に六条御息所を訪ねる。

物の怪を見たとはいえ、愛しい恋人には変わりなく、

伊勢には行って欲しくないのだ。

源氏は思いとどまってほしい、と誠意をこめて言葉をつくした。

顔を合わせてしまうと、やはり再び思いが乱れる御息所だったが、

予定を変えることなく伊勢へと下って行くのであった。

過去捨てて女電池を入れ替える  上田 仁

そのころ、死期を悟った桐壺院朱雀帝春宮と源氏のことを遺言で託し、

ほどなく崩御してしまう。

桐壷院が崩御して、世の中の空気が一変する。

藤壺中宮は悲しみのあまり三条の宮に引き籠り、

源氏も自分の屋敷の籠りきりである。
                    こうきでんおおきさき
世の中心は朱雀帝とその母である弘徽殿大后に移った。

さらに、時は移り、権勢は桐壷院の外戚であった左大臣側から

朱雀帝の外戚である右大臣側に移って行く。

朱雀帝は桐壺院の遺言を片時も忘れたことはなかったが、

年の若さもあり、
また気性が優しすぎて、

政治は右大臣の思うがままになっていく。


世代交替のゴングが鳴っている  高島啓子



そんな世間の風とは無関係に、朧月夜と源氏との恋はまだ密かに続いていた。

彼女は右大臣の六女で、弘徽殿大后の妹で政敵側の人であるが、

源氏は危険な関係のときこそ恋心を燃やすタイプ。

この厄介な性格が災いとなる事件が起こる。

右大臣の世になり、誰もが自分から去っていく中、

朧月夜だけが、
人目を盗んでまでも自分を愛してくれる。

それがたまらなくいじらしい。


禁じられた夜を過ごした源氏は、夜明け前にこっそり立ち去るつもりだった。

が、雨がにわかに激しく降って、雷が闇を切り裂く。

大臣家の人々が起き騒ぎ出したため、源氏は出るに出られなくなってしまう。

たどり着く岸もないのに流れてる  信次幸代

そんな中、慌ただしい足音がひとつ、2人のいる部屋に近づいてくる。

「大丈夫ですか、夕べは大変な雷で心配していたのですが」
                みす
父である右大臣がすっと御簾を引き上げ、中を覗き込んだ。

朧月夜は困り果て、蚊帳の外へいざり出た。

顔がひどく赤らんでいたので、具合でも悪いのかと右大臣は心配する。

そのとき朧月夜の衣に男物の帯が絡まっているのが、右大臣の目に入った。

おかしいと思った右大臣が几帳から中を覗くと、

何と源氏が臆面もなく、源氏がそこに横たわっているではないか。

右大臣は目も眩む思いがして、あたふたとその場を立ち去ったが、

報告を受けた弘徽殿大后は怒り心頭で、

源氏の失墜を本気で考え始めるのである。

妹の膝から下は霜柱  酒井かがり

【辞典】 源氏物語の中で古くから、名文と伝わる「野分の段」ー
      野宮のある嵯峨野の紫式部渾身の絶妙な風景描写をどうぞ。

遥けき野辺を分け入りたまふより、いとものあはれなり。
秋の花、みな衰へつつ、浅茅が原も枯れ枯れなる虫の音に、
松風、すごく吹きあはせて、そのこととも聞き分かれぬほどに、
物の音ども絶え絶え聞こえたる、いと艶なり。

遙々と広がる野に足を踏み入れなさると、とてもしみじみとした風情です。
秋の花はみな萎れ、浅茅が原も枯れ枯れになっています。
嗄れ嗄れに聞こえる虫の声に、松を吹き抜ける風の音が寒々しく重なっている
中に、
はっきりどの曲だと聞き分けられないほど微かに楽器の音色が
途絶え途絶え
聞こえてくる様子は、とても優美です。


夕焼けがうっかり涙ぐんでいる  高橋ふでこ

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