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川柳的逍遥 人の世の一家言
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うつろばかり仰いで首が痛くなる  清水すみれ


   源氏12歳

「巻の2 帚木【ははきぎ】」

光源氏は、12歳のときに元服した。
そいぶし
添臥には、左大臣の娘・葵の上が決まった。


「元服加冠」の儀を終えた東宮,皇子など身分の高い男子には,

当夜女子を選んで添い寝をさせる風習があり,選ばれた女子を添臥という。

その結果、源氏は左大臣家の婿となり、

以後一切の
面倒を左大臣家が見ることになる。

源氏にはじめて有力な後ろ盾ができたのだ。

桐壺帝と左大臣家という有力な後ろ盾を持った源氏は、

左大臣家をしのぐ権力の基盤を持ったといえる。

源氏よりも4歳年上とはいえ、葵の上もまだ16歳。

右大臣が東宮妃にと願い出ていたが、

左大臣はあえてそれを断って、
臣下に下った源氏と結ばせた。

おかしくてちょっと悲しいそんな朝  森田律子

葵の上は、幼い頃から将来の后となるべく、大切に育てられていた。

美しく、しかし気位が高く、人を愛するということの

本当の意味を知らない少女。


たしかに、左大臣家の娘と結ばせたのは、帝の源氏への愛情だった。

だが、幼い源氏にはそれがわからない。

彼が求めていたのは母であり、甘えられる対象だったのだ。

人形のような美少女は、彼を受け付けない雰囲気を持っていた。

そんなとき、源氏は藤壺女御のことを思った。

自分を包み込んでくれるような、慕わしい存在だった。

どんなに恋い焦がれても、二度と直接には会えない人だった。

ここにこう立つとあの日がよく見える  八上桐子


男が寄れば女性談義が始る

そして藤壺への想いを捨てきれないまま、源氏、17歳になる。

政略結婚で妻となった葵の上との関係も、

いまだぎくしゃくしたままである。


そんな源氏が、宮中で宿直勤務をしていた雨の夜、

三人の男友達が 源氏のもとを訪れ、女性談義を始めた。

そのうちの一人は、葵の上の兄で、源氏にとっては義兄でもあり、
とうのちゅうじょう
親友でもある、頭中将である。

彼らは、妻にふさわしい女性の条件などを討論し、

頭中将は以前、
中流階級の女性を妊娠させてしまった女性が、

自分の正妻から苛められて
現在行方不明になってるといことなど、

自らの体験談を披露。


「逢瀬を重ね、子供ができたのに今は行方知れずになっている女性がいる。

    常夏の君と呼んでいた人だが、知らないうちに私の正妻が嫉妬の末、

    ひどい嫌がらせをしたらしい…」と。

みんなまぼろし私を通っていった恋  安土理恵

頭中将は、当時最も将来を有望視された青年で、実際、

後に太政大臣にまで上り詰めることになる。

彼の将来性を見込んで、早くも右大臣が自分の娘と結婚をさせ

その後ろ盾になるのだが、その娘はあの弘徽殿女御の妹である。

その妻は弘徽殿女御に似て、嫉妬深く、人一倍気性が激しい。

密かに妻は、常夏の女に脅迫めいたことをしたというのだ。

悩み苦しんだ常夏の女は、そのことを頭中将にも明かさず、

こっそりと幼い一人娘を連れて姿を隠してしまったのである。

何の頼りもなく、幼い子どもを連れて、どこに行ったのか。

今頃、どれほど心細い想いをしているのだろう。

頭中将は、今になってはじめて自分がいかにつれなかったかを嘆いた。

ゆるやかにゆるやかに哀しみは帰趨  山口ろっぱ

上の空で聞いている源氏をよそに、女性談義は尽きず、夜は更けていく。

それでも話題に上った「中流貴族の女性がいい」という言葉は、

源氏に少なからぬ影響を与えた。

翌日は雨も上がり、源氏は久々に葵の上のところに顔を出す。

でも、取り澄ました妻には、まだ馴染めない。

そこで方角が悪いという「方違え」を言い訳にして、
       きいのかみ
中流遺族の紀伊守の邸に
宿を借りることにする。
                                  いよのすけ
この紀伊守の邸に泊まっていたのが、
紀伊守の父親・伊予介

若い後妻・空蝉だった。


源氏は、女性談義に登場した中流貴族の女性である空蝉に興味を抱き、

寝所に忍び込み、そして強引に一夜の契りを結んでしまう。

【辞典】 方違え=禁忌の方角に出かけるときは、直接向かわず、
      前夜に吉方の家に一泊して目的地に行くこと。

お仲間の翼も借りる好奇心  美馬りゅうこ
   えもんのかみ
空蝉は衛門督の娘で、かつては宮仕えの話もあったほどだが、

父亡き後、受領の後妻という身に甘んじていた。

源氏は、空蝉の弟・小君を通して空蝉との逢瀬を画策するが、

空蝉は人妻である自分の境遇や身分の違いなどに思い悩み、

源氏の誘いには応じなかった。

そこで源氏は、空蝉を近づくと消える伝説の木・箒木にたとえ、

恋心を訴える和歌を贈るのである。

数ならぬ 伏屋に生ふる 名の憂さに あるにもあらず 消ゆる箒木

(あなたにとって、ものの数でもない私は情けなくて、
    見えていても触れないという箒木のように消えていきます)

溶けてしまおうみーんな忘れちゃうために 竹内ゆみこ

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