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川柳的逍遥 人の世の一家言
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右足はもう結界を踏んでいる  森田律子


    夕 顔
箒木三帖ー「帝の子といっても、すべて清廉潔白なのはウソっぽい」
という意見に対し、少し不謹慎な色恋沙汰の話を挿入した、というのが、
箒木・空蝉・夕顔の三巻で「箒木三帖」と呼ばれている。

「巻の4 【夕顔】」

光源氏が病気の乳母を見舞いに出かけたときのこと。

粗末な家の垣根に咲く、朝になるのを待たずに萎んでしまう

哀れな夕顔の
花を見つけます。

「可哀想なさだめの花だなぁ 一房取ってまいれ」と源氏は従者に命じます。

すると粗末な家から可愛い女の子が出てきて、

従者が折り取った夕顔の花を「これにのせてお持ちなさい」

と香を焚き閉めた白い扇を渡してくれた。

その白扇には、恋文のような意味深な和歌が書かれていました。

心あてに それかとぞ見る 白露の 光添へたる 夕顔の花
(ひょっとしたらあなたさまかと思いました。
 白露の光を添えている夕顔の花のように美しい方なので)
心あてには、あて推量をすること。白露の光は源氏のこと。

源氏はこの歌を詠んだ人に、その場で返歌を書き従者に遣わします。

寄りてこそ それかとも見め たそかれに ほのぼの見つる 花の夕顔
(たそがれどきにほのかに見た夕顔という花の夕方の顔よ)

これが夕顔との出会いでした。

さりげない一言渦となってゆく  山本昌乃



源氏は和歌に心を奪われ、歌の主の女性のもとに通いはじめるようになる。

しかし相手の住まいは粗末な家。

世間を気にして源氏はいつもお忍びである。

名を明かさぬ源氏に、女性も正体を知らさぬまま、

女性を「夕顔」と呼び、2人は逢瀬を重ねます。

8月15日の満月の夜、いたずら心を起こした源氏は夕顔を誘って、

「この住みかを出て、どこか近いところで夜を明かしましょう」と言う。

素性の分からない男と、行き先も分からずに出かけるのは、

さすがの夕顔もためらわれた。

すると源氏は軽々と略奪同然に夕顔を持ち上げ車に乗せた。

そして車は廃墟と化した屋敷についた。

いにしえも かくやは人の まどいけん わがまだ知らぬ しののめの道
(身分の低い女とのはじめての体験に、源氏が興奮をしている様子)

夕日しか見えない窓に立たされる  八上桐子

夕顔は荒れ果てた屋敷の様子に怯えている。

源氏はひたすら震えている夕顔の様子を、可愛いと思っている。

源氏はこれほど深い仲になったので、

今さら隠し立てしても仕方がないと思い、姿をさらした。

夕顔も、男が源氏だろうとは、うすうす感じていた。

実際に源氏を目のあたりにして、その息を呑むほどの美しさに感動している。

だからこそ、わざと自分を卑下して、夕顔は気持とは裏腹の歌を詠んだ。

光ありと 見し夕顔の 上露は たそかれ時の そらめなりけり
(光が添えられて輝いて見えた夕顔の花の上においた露は、
 黄昏時の私の見間違いでした)

ハタキをかけると光源氏でした  加納美津子

宵を過ぎる頃、源氏は少し眠ってしまった。

すると、枕元に美しい女が座っている。

「私がこんなにお慕いしているのに、少しもお訪ねくださらず、

   つまらない女を愛されていらっしゃるのが恨めしい」

源氏はぞっとして太刀を抜くと、女の幽霊は消えた。

源氏は慌てて夕顔を手で探ってみたが、息をしている気配がない。

源氏は驚き、夕顔を起こそうとするが、彼女の体は冷たくなるばかり。

息は完全に途絶えている。

そのとき時間は止まった。


源氏の胸に空洞が出来た。恐ろしいとも、悲しいとも思わない。

闇の中で、自分の魂がさまよっている。

つるつるをザラザラにして終える恋  上田 仁
                 これみつ
急を聞き駆けつけた腹心の惟光の進言で、源氏はその場を離れた。

亡骸は、惟光と夕顔の侍女である右近が寺へと運び、、

葬儀は内密に行なわれた。

源氏は嘆き悲しみ、右近に彼女の正体を尋ねた。

聞けば、頭中将が雨の夜に話したあの「行方知れずの女性」だった。

頭中将と恋仲になるも、奥さんの嫌がらせが怖くなり、

粗末な家に隠れていたのである。

一昨年の春には、頭中将の落としだねである女の子も生まれている。

椿落つ由緒正しき孤の音で  中野六助



【辞典】-和歌
源氏物語の全54巻のそれぞれには、もれなく和歌が挿入されています。
当時の恋愛の育み方は、手紙に和歌を書き、それをやりとりして、
互いの気持を確認しあうというのが、王道でした。
恋愛は源氏物語の大きなテーマの一つ。
この夕顔では19句。多い所では10巻33句、12巻48句、13巻30句等。
全体で795句の和歌が挿入されています。作中の人物の心理を見事に描写して
源氏物語を書き進めていく、紫式部の才能の豊かさが伝わってきます。

降り注ぐ鱗粉イパネマの娘  酒井かがり

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