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川柳的逍遥 人の世の一家言
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淋しさに私の未熟溢れ出る  宮崎美知代


    平安貴族の衣装

篝火に たちそふ恋の けぶりこそ 世には絶えせぬ 炎なりけれ

篝火と一緒に立ち上がる恋の煙は、絶えることない私の想い…
永遠の愛の炎なのです。

「巻の27 【篝火】」

内大臣が引き取った娘・近江の君が笑いものになっている。

その噂を伝え聞いた源氏は、

「どんな事情があるにせよ、内大臣のやり方は感心しないね。

   ひっそり暮らしている娘を自分の都合で引っ張り出し、

   大袈裟にとりたて、挙げ句の果てには世間の笑いものにしてしまう。

   何事によらず、取り扱いの仕方ひとつで、

   穏やかに事を済ませることができるのに」

と内大臣を批判した。

あいまいな男と小さい影を曳く  森中恵美子

玉鬘はそれを聞き、たまたま源氏のもとに身を寄せた幸運を思った。

自分も九州の田舎育ちで、貴族の世界のことなど何一つ知らなかった。

近江の君と少しも違わないのだ……

いきなり内大臣の前に名乗りをあげていたら、

近江の君の二の舞になっていたかもしれない。

源氏の自分に寄せる気持ちに厄介さはあるが、

それでも自分の情に任せて強引な振る舞いをすることはない。

いよいよ思いやりは、深まるばかりである。

玉鬘はしだいに源氏に心を許していく自分に気づいた。

情に酔い女虚ろな紅を引く  上田 仁

やがて季節は秋。

源氏は和琴などを教えると称し、玉鬘を訪ねる。

でも、自制心を働かせ、添い寝をしても、身体を求めたりはしない。

外は日暮れて、源氏は「篝火をつっけなさい」と供のものに命じる。

篝火に照らし出された玉鬘の姿は、美しかった。

長い黒髪の手触りもひんやりと艶やかで、

身を固くしているしている様子が、なんとも切ない。

寄り添うだけで、それ以上進まない仲なんてあるだろうかと、

源氏は小さく溜め息を漏らすのだった。

脱皮への方程式が見付からぬ  松下和三郎

そこに音楽が聞こえてくる。

夕霧が内大臣の息子たちと集まり演奏をしているのだ。

「ほら、ごらんなさい。東の対から美しい笛の音が聞こえてくる。

   夕霧がいつもの友達と遊んでいる。あの笛の音は柏木のものだね」

玉鬘はそっと耳を澄ませた。あそこに実の弟の柏木がいる。

何も知らずに一心に笛を吹いている。

そう思うと、いとおしい。

源氏は使いをやり、夕霧たちを呼び寄せる。

後の二人は、ともに内大臣の息子である柏木紅梅である。

浜風がそっと耳打ちした夕べ  合田瑠美子

源氏は柏木に琴を渡し「早く、早く」と演奏するように催促する。

「御簾の中には、音色の善し悪しを聞き分ける人がおいでなので」

それを聞いて玉鬘は切なくなる。

この御簾の向こうでは、

自分の弟たちが自分のために合奏してくれるのだ。

柏木は自分の姉とも知らず、琴を引くてが緊張のあまり震えていた。

あれほど恋焦がれた人が、

あの御簾の中で自分の演奏に耳を済ませている。

源氏はそうした状況を、何を思ってか全身で感じとっていた。

篝火の中、美しい琴と笛の音が月明かりの空の中へ消えていく。

そしてまた待たされている正直者  山本昌乃

【辞典】

篝火は、源氏物語全巻のなかで最も短い巻です。
玉鬘の巻の12分の1.短い常夏の巻にも7分の1の短さである。



「平安貴族の正装」
平安貴族の男性の正装は、朝廷に出向くときに着用し束帯と呼ばれる。
重ね着の一番上に袍(ほう)という衣装をつけ、それをベルトのような
皮の帯を使って、こしで束ねることから「束帯」という名がついた。
女性の正装は、俗に十二単と呼ばれている女房装束である。
(ひとえ)や袿(うちかけ)などの上に唐衣を着て、腰から下には裳をつけた。

その狭間万葉仮名で抜けてこよ  大葉美千代

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