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川柳的逍遥 人の世の一家言
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目くすりを添えて訴状送ります  美馬りゅうこ


   宮中行事   (拡大してご覧ください)

恋ひわぶる 人のかたみと 手ならせば なれよ何とて 鳴く音なるらむ

恋しい人の代わりと思って可愛がっている猫よ。
どういうつもりで、そんなに愛らしい鳴き声をたてるのだろうか。

「巻の35 【若菜下】」

柏木は、一目垣間見た女三宮が忘れられないでいた。

光源氏の妻であるということは分かっている。

だが、源氏は女三宮を大切に扱ってないではないか。

そんな煩悶する柏木のところへ、紫の上の義母にあたる式部卿宮

柏木を孫娘である真木柱の婿にと言ってきた。

だが、女三宮に夢中の柏木は、見向きもしない。

仕方なく諦めた式部卿宮は、真木柱を蛍宮と結ばせたが、

この結婚はうまくいかず、真木柱は不幸な結婚生活を余儀なくされた。

それを聞いた玉鬘は、もし蛍宮と結婚していたら、

自分も同じ目にあったのか と考えると、

髭黒との今の幸せを噛みしめるのだった。

おかげさま そよ風というこのご縁  徳山泰子

柏木は女三宮の御簾をめくった猫をもらいうけ、夜も自分の側に寝かせた。

夜が明けると、すぐに猫の世話にとりかかる。

猫は初めのうちは人見知りしていたが、今はすっかりなつきじゃれてくる。

柏木は猫を心から可愛いと思った。

女三宮を思い、物思いに耽っていいると猫が「ねうねう」とすり寄ってくる。

柏木は、猫を女三宮に見立て、慰めにしていたのである。

猫にしか心開かぬ猫マニア  清水久美子

そうして目立った事件もなく、月日は過ぎ、源氏は46歳になった。

女三宮は20歳前後に、柏木は30歳前後である。

冷泉帝が譲位を決意し、位を次の帝に譲る。

明石女御が夫人になっている今上帝である。

そして、明石女御の第一皇子が東宮に立った。

明石女御に対する今上帝の寵愛も厚く、明石一族は栄えるばかりであった。

髭黒は、右大将から右大臣に、夕霧は、大納言にそれぞれ昇進。

雲居雁の父・太政大臣(かつての頭中将)は辞職願をだして引退した。

また女三宮は、帝のはからいで二品に叙され、格式はいよいよ高まった。

これにより源氏も女三宮の扱いに、丁重さが増すばかりである。

シャボン玉映った顔を見て笑い  杉山ひさゆき


 琴を弾く夕霧

源氏は、身内から東宮が出たお礼参りで住吉神社への参詣をする。

同行するのは、明石女御、母親の明石の君、祖母の尼君、そして紫の上

参詣はとても盛大で人々は、稀にみる幸運に恵まれた明石一族を讃えた。

その頃、出家した朱雀院、娘の女三宮に会いたいと言ってくる。

それに源氏は、来年、朱雀院の五十賀で対面するようはからった。

しかし女三宮はまだ幼さが残り、このまま朱雀院に会わせるには心許ない。

そこで源氏は、女三宮に琴を習得させ、その上達振りを見てもらおうと、

自ら先生になって特訓する。

となると、源氏が泊まるのはほとんど女三宮のところ、

紫の上はほったらかしになってしまう。

寂しい人はいませんかへ手を上げる  奥山晴生


 琵琶と琴の合奏

一方、紫の上は明石の君や女三宮に比べて、

自分の立場の不安定さを思っていた。

源氏の愛情だけが頼りだったが、近頃、源氏と話す機会も減っていく。

いつの間にか、紫の上は出家を願いはじめるのである。

年も改まり特訓の成果を試そうと、源氏は女君を集めた演奏会を催した。

紫の上の和琴、明石の君の琵琶、明石女御の琴、女三宮の琴の合奏である。

出来栄えは素晴らしいものだった。

女三宮の上達ぶりはなかなかで、それに合わせた女君や夕霧までも見事で、

源氏は大満足だった。

そんな上機嫌な源氏に持ちかけられたのが、紫の上の出家願いだった。

チゴイネルワイゼン見事に弾き終える  本多洋子

もちろん、源氏は許しません。

過去に付き合った六条御息所などを引き合いに出し、

あなたがいなくては何も出来ないと訴えるのである。

その夜、紫の上は急に具合が悪くなり病の床に臥せってしまう。

高熱で粥などにも手を触れない。

果物さえ口にするのを嫌がり、起き上がることもままならぬ日が経過する。

さまざまな加持祈祷を試みるも効果なし。

場所が悪いと、六条院から昔住んだ二条院に移っても、病状は変わらず、

源氏はつきっきりの看病で、朱雀院のお祝いも延期になった。

今や六条院にいた多くの人は紫の上が心配で、

二条院に移り、
六条院は灯が消えたようだった。

女から突然血の気引く話  上田 仁

そこに運命のいたずらが重なる。

小侍従を通して女三宮に合わせて欲しいと頼んでいた柏木の願望が叶う。

女三宮は無心で眠っていたが、身近に男の気配がするので、

源氏が帰ったのだと思っていた。

だが、そこにいたのは柏木だった。

女三宮はわなわなと震え、気も失わんばかりである。

柏木はずっと思い描いていたイメージの人とは違うと思った。

アラジンのランプで君を奪いたい 大西俊和


女三宮を抱きしめる柏木

今目の前に怯えているその人は、高貴な姫ではなく、優しくて、可愛くて、

小さくて、抱きしめたら消えてしまいそうな人、可憐なひとりの人だった。

柏木の中の自制心が消え、我も忘れて女三宮を抱きしめた。

女三宮は、現実のことだとは思えず、正気を失っている。

こんな恐ろしいことが源氏に知れたらどうしよう。

どうしていいかわからず、泣きじゃくるばかりだった。

脱色をしても私に戻らない  笠嶋恵美子

激情の虜となった柏木は、女三宮と2人で破滅していくのを願った。

だが、女三宮はあまりにも幼すぎた。

ただ、源氏に怯え、震えるだけの人だった。

柏木は妻の女二宮(落ち葉の宮)のいる自邸には帰らず、

今は隠居の身となる父の邸にこっそり入り、横になってみたものの眠れない。

そして自分の犯した過ちに怯えた。

そうして源氏が紫の上を看病している数ヶ月の間に、何度か逢瀬を重ね、

女三宮は柏木の子を宿してしまう。

花に流れ風に流れる白昼夢  加納美津子

一方、紫の上は病状が悪化し、ついに息絶えてしまう。

源氏は分別もつかず、心の中が真っ暗になり、無我夢中で二条院に帰った。

「せめてもう一度だけでも目を開けて、私の目をみてください。

あまりにもあっけないご臨終だったので、その間際にさえあえなかった」

と取り乱しながら、源氏は必死の思いで一層の祈祷をさせた。

すると近くにいた女の子に物の怪が憑依し、紫の上は息を吹き返した。

物の怪はあの六条御息所の霊だった。

紫の上は回復に向かい、安心した源氏は、女三宮のとこへ戻った。

本日は百鬼夜行を見にいく日  清水すみれ

源氏は女三宮のところに長く通わなかったので、

恨んでいないかと心が咎め、
年配の女房を呼び寄せ、

女三宮の様子を尋ねると女房は、


「普通の病気とは違うようです。ご懐妊らしいです」と答えた。

「おかしいね。ずいぶん時が経ってから、珍しいことがあるものだ」

と源氏は首を傾げた。

それからしばらくして源氏は、見失った扇を探しているとき、

布団の端に置き忘れられた恋文を発見する。

男の文字である。

紙に焚き染めた香の匂いなどなまめかしく、恋情が籠もっている。

細々と書き連ねた筆跡は、紛れもなく柏木のものだった。

源氏は人のいないところで何度も手紙を読んだ。

やはり柏木に違いない、源氏はとても信じられなかった。

わたくしをポンと打ち抜く白い月  大海幸生


  賀 宴

2人は怯えていた。

柏木は体調を崩し、邸にこもったまま。


女三宮は源氏の自分への接し方の冷たさに悲しんでいる。

源氏の計画した朱雀院の賀宴は延期を重ね、12月になった。

この御賀の予行演習の試楽があるので、紫の上は六条院に帰ってきた。

明石女御も次々に子供をもうけ、六条院に戻ってきている。

玉鬘も出席する。

柏木一人をこういった大切な催しに参加させないというのも、

人々が不審に思うので、源氏は参上するように督促した。

父からも、「無理しても参上するように」と再三手紙が来るので、

柏木は参上をすることに決めた。


痛み止め下さい 二日分下さい  河村啓

宴が盛り上がる中で柏木は源氏の嫌味を含んだ言葉に、心は滅入っていた。

源氏はそんな柏木をわざと指名して、酔ったふりをしながら、

陰湿な嫌味を言う。


柏木は動悸が激しくなり、杯がまわっても来ても頭がずきずきして、

飲む振りだけをして、その場を取り繕う。

源氏はそれを見咎め、無理に杯を持たせて、執拗に酒をすすめる。

柏木は苦痛に耐え切れなくなり、宴席も終わらないうちに退出してしまう。

それは、一時の悪酔いによる苦しさではなかった。

柏木はそのまま重い病気になり、寝ついてしまったのだった。

しあわせがすり抜けてゆく針の穴  西田雅子

【辞典】 受戒

病床に臥す前から、紫の上は出家の願望を源氏に告げていた。
でも源氏は、それを許さなかった。物の怪の正体がわかり病状が
落ち着いてからも、幾度となく源氏に出家の気持ちを伝えた。
そこで源氏は、妥協案を示す。在家のままの受戒である。
受戒とは仏教の定めた戒めを受け入れ、それを守っていきますと
約束すること。受戒には段階があり、紫の上が受けたのは、在家の
信者が受ける五戒である。完全に俗世の生活を捨てる出家ではないものの
これにより少しでも救いが得られ病気が良くなっていけば、という思いが
源氏にはあった

思い切り叫ぶ ひとりの処方箋   阪本こみち

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