慎ましいエビ天は着痩せする 山口ろっぱ
[龍馬が、寺田屋で捕り方に襲撃される寸前、
おりょうが、龍馬の部屋に駆け込んで、急を知らせたエピソード]
おりょうはその日、寺田屋に3回も伏見奉行所の与力、見廻組の隊士が、
宿改めに来ていること心配していた。
龍馬の人相書きが、市中に出回っていることも知っている。
しかし、龍馬は変装もせず、
相変わらずその日も、京に出かけていたので、
真夜中に無事に帰ってきた時は、ほっとした。
女将のお登勢とお膳と酒を2階に運ぶと、おりょうは風呂に入った。
枕の中のネズミ花火がとまらない 岩田多佳子
おりょうが入ったとされる風呂(寺田屋)
風呂は表通りに面しており、窓を開ければ外が見えるようになっている。
窓が開いているのに気が付き、表を見たおりょうは、息を飲んだ。
表通りに槍を構えた捕吏が数十人、息を殺して立っている。
「一刻も早くあの人に知らせなくては」
おりょうは、”全裸のまま”、2階に駆け上がると、
捕吏に囲まれていることを知らせた。
龍馬は、おりょうに逃げるよう伝えると、
おりょうは着物を着ると、裏階段から外に逃げた。
うす衣まるい乳房がはねている 桜 風子
そのとき、入浴中だったおりょうは、
全裸で2階の部屋へ駆け上がった、と伝えられる。
当時、おりょうは25歳。
本当に、
全裸で梯子を駆け上がり、龍馬に危険を知らせたのだろうか?
夜逃げするときのポーズを考える 福力明良
寺 田 屋
明治時代になってから、おりょうは、龍馬と過ごした日々について、
何件かの取材を受けている。
「寺田屋遭難事件」についても、
書籍や新聞、雑誌の記事としてまとめられているが、
それらを見ると、『千里駒後日譚』では、
「わざと平気で、あなたこそ静かになさいよ、・・・中略・・・
と悠々と衣服をつけて」
と言うように、衣服を着ていた、ことになっているものもあれば。
おつき合いで笑うソプラノで笑う 山本希久子
龍馬・慎蔵が襲撃を受けた部屋(寺田屋)
『阪本龍馬未亡人』では、
「急いで風呂を飛び出したが、
まったく着物を引っ掛けておる間もなかったのです。
じっさい、全裸で、恥じも外聞も考えておられない」
とみずから、全裸だったと証言している、ものもある。
≪一方、おりょうの姿を見たはずの龍馬や慎蔵は、
その後の手紙や日記のなかで、
おりょうが全裸であったかどうかについては、まったく触れていない≫
ばあちゃんの裸は許される残暑 井上一筒
だがひとつ、貴重な証言がある。
その夜、おりょうと一緒に入浴していた寺田屋の娘・力(りき)が、
龍馬が寺田屋から逃げ出すとき、
「お春(おりょうの変名)もつづいて、男の浴衣に男の帯をしめて」
逃げたと話している。
常識的に考えて、
おりょうと力が風呂場へ持っていく着替えは、女物だろう。
恥ずかしいところに貼ってある木の葉 木本朱夏
寺田屋秘密の階段
とすれば、風呂場で身につけたなら、
おりょうは女物の浴衣や帯で、逃げているはずである。
ところが、力は、おりょうが男の浴衣を着ていたという。
それならば、その浴衣と帯は、
龍馬たちの部屋にあったと、考えることができる。
つまり、部屋に駆け込んだおりょうが、とっさに羽織ったというわけである。
そう考えれば、宿の裏にあった秘密の梯子を駆け上り、
龍馬の部屋へ駆け込んだとき、
おりょうは全裸だったことになる・・・のだが・・・。
あなたより先には逃げぬ非常口 森中惠美子
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