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川柳的逍遥 人の世の一家言
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見返り美人とすれ違った戻り橋  新井曉子





  この美しい女性が安倍清明のお母さん(安倍王子神社蔵)





「安倍清明」
安倍晴明とは、史実では「天文博士」と、記されている。
天体を移り行く星や雲の動きを観察し、天変地異を事前予知する専門家、
いわゆる今の気象予報士のようなものである。
一方で、呪術を学び、占術や呪術を使う「陰陽師」といわれる。
安倍清明が陰陽師として、歴史の表舞台に登場するのは、
978年(天元元)で、このとき、清明は57歳くらい。
この天才陰陽師が、それ以前に何をしてきたのか、正史には一切記録に
残されていない。
そして正史に登場するや、天皇や藤原道長に重用された記録がつづくの
である。
あまねく正史に登場したのが57歳としたが、実際には、年齢も本物か、
両親は誰なのか、いつどこで生まれたのか、などなにも分かっていない…
「謎から生まれた謎の人物」なのである。
とりあえず「どんな謎がある」か伝わる説をみてみよう。




良い運だけ教えてくれる占い師  山本さくら











式部ー安倍清明 幻の実像
  



平安時代、絵巻物にみる華やかな王朝貴族のその裏には、目をそむけた
くなるような忌わしい闇があった。
「人が人を呪い、死にいたらしめ、人が人を怨んで祟り、
 それは、人にあらざる鬼を呼び、物の怪をこの世に生みだす」
藤原実資(さねすけ)日記『小右記』ゟ
こうした時代に闇と闘い活躍したのが、陰陽師・安倍晴明である。
だが、この安倍晴明には謎がいっぱい。





外れかけの顎 桜貝のボタン  井上一筒




謎-① 両親は誰なのか、?
1,父親は人間で、母親は狐、とする説。
2,清明そのものが人間ではない、とする説がある。




父さんは毛蟹だったと聞かされる  榊 陽子




謎ー② 幼少時代の悪食伝説。
1,クモやゲジゲジを好んで食べた。
2,竜宮城を訪れたことがある。
3,カラスの話を理解した。
4,人に見えない鬼を見る力があった。




宇宙服つけず大気圏突入  宮井いずみ




謎ー③ 陰陽師として発揮した力の数々
1,花山天皇の前世を見抜いた。    『古事記』
2,式神という鬼を自在に操った。   『今昔物語集』
3,死者を甦らせることができた。   『今昔物語集』
4,花山天皇の譲位を予知できた。   『大鏡』
5,人の感情を操ることができた。   『北条九代記』
6,どんな呪いをも打ち返した。    『宇治拾遺物語』
7,在原業平の家を災害から封じた。  『無名抄』
8,藤原道長の命を眼力で救った。   『古今著聞集』
これらは公卿の日記に残されおり、清明の秘術に関する証言でもある。




焼け跡をベールのように覆う雪  花篤洋二




謎ー④ 悪鬼怨霊と戦った清明。
平安時代は、怨霊が続々と現れた時代であると述べた。
清明は知っていたのだろうか? なぜ怨霊が現れるのか?…を。
怨霊は、朝廷や天皇を、大臣や公卿を祟り、次々と、病死や狂い死に追
い込んだ、と記録はつたえている。
なぜ鬼が現れるのか?…を。
勇猛で知られる渡辺綱ですら、倒せなかった”大江山の酒呑童子””九尾の
狐””一条戻橋の鬼女”など、悪鬼妖怪は、安倍清明をおそれたという。




富士山を見たことがない天保山  森 茂俊










謎ー⑤ 清明の母親は白狐ー葛の葉伝説
伝える内容はこうである。
ある日のこと、稲荷の境内で安倍保名は、数人の狩人に追われた一匹の
白狐を助けた、が、手傷を負ってその場に倒れてしまった。
命を助けられた白狐は、葛の葉という美しい女性に化け、保名を介抱し
て家まで送りとどけ、その後も、保名を何度も見舞った。
やがて互いの心が通じ合い、夫婦になり安倍童子という子供をもうけた。
しかし、その子が五歳のとき、ふとしたことから、葛の葉の正体が狐で
あることが露見して、狐は泣く泣くその子を置いて、信太の森へ帰った。
別れ際、葛の葉が夫と子に、口に筆を咥えて障子に書き残した一首がある。
 「恋しくば尋ねきてみよ和泉なる、信太の森のうらみ葛の葉」 
その時、残された子(童子丸)が、後の陰陽師、安倍晴明だと伝わる。
(安倍保名=清明の父のひとり)




馴れ初めをそれからそれと聞き上手  前中一晃





謎ー⑥ 安倍晴明、出生の謎







     信太森葛葉稲荷神社。
葛の葉伝説にまつわる白狐が祀られている。
白狐は葛の葉という人間に化身し、安倍保名と結ばれ、男の子を授かり、
仲良く暮らしていたが、ふとした気のゆるみから、葛の葉は、子に狐の
姿を見られてしまった。これを恥じた白狐は、泣く泣く夫や子供を残し、
信太の森に帰った。





零れた濁点は天使になりました  市井美春





         稲荷大明神の井戸。
境内にある「姿見の井戸」は、白狐が葛の葉に化身した時、鏡に代えて
自分の姿を映していたという。
狐の姿を見られ夫と子供のもとを去った葛の葉が、無事にこの森に帰り
ついたことから、この井戸に自分の姿を映しておけば、再び無事に帰っ
て姿を映すことができると言い伝えられており、交通安全や旅行安全の
ご利益スポットとして信仰を集めている。




さよならが下手です深くお辞儀する  山本昌乃




謎ー⑦ 安倍晴明の生誕地?
清明の出生地については諸説あるが、大阪説が最も有力か。
清明が「白狐の子」という話が有名になったのは、江戸時代の古浄瑠璃
『信太妻釣狐付安倍晴明出生』(しのだつまつりぎつね)からで、これ
が大人気となると、仮名草子歌舞伎でも『信太妻』ものが次々と作ら
れるようになった。
江戸時代の作品のほとんどが、清明の出生地を阿倍野としているのは、
いずれも<しのだつまつりぎつね>に倣ったものとされている。が、
『あべの今昔物語』には、清明の父とする安倍保名が物語だけではなく、
実在の人物であったという伝説が記されている。
大阪府豊能郡能勢町には「信太の森」と呼ばれる場所があって、近くの
稲荷神社には室町時代初めのころの石塔と、二つの供養碑が建っていて、
いずれも安倍保名であると、同書で指摘している。
さらにこの地には「塩谷湯」という冷泉があり、そこに保名が葛の葉
傷を治すためにやって来たという言い伝えも残っている。
これらから保名と葛の葉が一緒に暮らしていたと考えるなら、能勢町で
清明が生れたと考えられることができる。




脳内グラフを埋めつくすめとぬの字  きゅういち






            『泣不動縁起』
「不動利益縁起」や「泣不動縁起」に、それらしい「式神」の姿を見る
ことができる。疫病神を鎮めようと、呪文を唱える清明のうしろにいる
のが赤い鬼神と緑の鬼神である



     赤い鬼神 と 緑の鬼神





「清明に正体を見破られた酒呑童子」
「酒呑童子」は大江山に住む鬼で、数多くの人を殺して食ったり、貴族
の姫君をさらったりして、都を荒らしまわっていた鬼である。
当初は何者の仕業か、まったく分かっていなかった。
その正体を言い当てたのが、安倍晴明であった。
清明が一条天皇に呼び出されると、
「これは大江山に住む鬼の仕業です。このまま捨ておけば、都はおろか、
 諸国にまで仇なすこと、間違いありません」と、
陰陽道の力で酒呑童子の存在を明らかにした。
そこで天皇は、源頼光に酒呑童子の退治を命じた。
源頼光は、渡辺綱ら四天王を連れて大江山に向かった。
いっぽう清明のほうは、「式神や御法童子」を京の都のあちこちに放ち、
酒呑童子が都に入ってこおれないように守りを固めた。
そして歯噛みして悔しがる酒呑童子の前に、鬼のふりをした頼光たちが
現われ、酒呑童子は、騙されて毒酒を飲まされ、退治されてしまった。
(式神=陰陽師が呪文で呼び出し、自分の手足として使う鬼神)




はたき掛け始まる終演五分前  宮井元信






         斬られた腕を咥えた戻り橋の鬼女 (豊原国周画)





「一条戻り橋の鬼女」
「一条戻り橋の鬼女」は、夜更けに美しい女の姿で橋のたもとにたち、
「家まで送ってほしい」と、言っては食い殺す恐ろしい鬼である。
源頼光の四天王といわれた武者・渡辺綱が、子の鬼の右腕を切り落とし、
その報告を受けた源頼光が安倍清明に相談すると、それに清明が
「鬼の祟りを避けるために、綱には七日の間、物忌みさせるように」
と、答えた話が伝わる。




画鋲とび散るイタチごっこのイタチ  湊 圭伍

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