二進法古い頭は受けつけず 杉本克子
戦いには、常に、『二つの正義』 が相克する。
幕府を討つ側の青年たちに、一つの正義があれば、
彼らを取り締まる、「新撰組」 の側の青年たちも、
また、一つの正義を持って、行動したのである。
稜線へ放った声が戻らない 山口ろっぱ
その対立する二つの正義は、長州と江戸から打ち上げられて、
それぞれが、独自の放物線を描き、
京都三条河原町付近で交わって、火花を散らした瞬間が、
幕末維新に特筆される、「池田屋事件」である。
このあたりから、社会は騒然となり、
二つの大きな正義は、蒼き青年の群れに 操られていく・・・。
戦いあった”維新の群像”は、みな、このような正義を確信した行動と、
対立正義を、不正義と決め付ける、詮索だろう。
パレットに青青青を足している 前中知栄
結果的に、幕府が倒れ、維新がなったのだけれども、
一つの正義が、価値を認められて、勝利をもたらしたということではなく、
挫折を重ねながらも、
次のスプリング・ボードに移ることの出来た、歴史の幸運に巡り合ったほうが、
勝った。
たとえ、幕府軍が勝っていても、
世界史の勢いからして、日本が、鎖国を続けることは出来ず、
幕府に好意的なフランスの強い影響下で、”新生日本”が、
誕生したことだろう。
正論の四隅削ると転げ出す 津田照子
歴史に、「もしも・・ なら・・」 はタブーとされるが、
維新史が逆転していたら利根川は、東京セーヌ川と呼ばれ、
フランス料理店が、下町の食文化を定着させ、
横須賀あたりは、フランス人街として栄え、
今では、成田とパリとを結ぶ空路に、ジャンボジェットが、発着していたかも知れない。
漂白剤ひとふり前科消しました 和田洋子
幕末から明治にかけて、最後まで、反幕府勢力と死闘を繰り広げた「新選組」。
そこに集ったのは、
近藤勇・土方歳三以下、農民や浪人など、社会の底辺に生きる若者たちだった。
国の行く末を憂えた彼らが、政治に参加する唯一の道。
それは、”剣の腕前を上げること” しかなかった。
幕府が初めて、公募した将軍の護衛役に、近藤たちは勇んで志願し、
遂に念願を果たす。
≪ 浪士隊募集の言葉―
尽忠報国の志を元とし、公正無二、身体強健、気力荘厳のもの、
貴賤老少にかかわらず、御召寄せに相成り候 ≫
散りばめた螺鈿も海を恋しがる 古田祐子
そこで、結成された「新撰組」は、
武士道が失われていく幕末に、一生懸命に志を掲げ、
磨いた剣の腕をもって、純粋に、そして健気に、国に尽くそうとした。
それはやがて、幕府中枢に利用される形で、
抵抗勢力との戦いの矢面に、立たされ、
「何のために戦うか」 というビジョンを持てぬまま、
悲劇のドラマを演じた、”最後のサムライたち” の姿なのである。
ワクチンは欲しがりません国のため 山田順啓
「会津藩預かりとなった直後に、近藤勇が郷里に送った手紙」
” 天下の安危、切迫のこのとき、寸志奉公つかまつり、命捨つるべしと覚悟 ”
〔文久3年3月23日付・近藤勇書簡「志大略相認書」〕
≪このとき、京都守護職・会津藩主・松平容保から下されたのが、『新撰組』の名である≫
「京都の地は危険であるから、命を捨てる覚悟でおります」 と言うのだ
このように、言い切る近藤勇の率いる、新撰組は、
”腕は立つ、なお命を惜しまない”、当時、最強の”武闘派集団”であった。
ファイナルな形で風に舞ってゆく 佐藤正昭
八木邸で共に殺された芹沢・平山の墓
とにかく、新撰組の隊員たちは、上から下まで強かった。
そんな中で、一番強かったのは?
1位は、新撰組・初代・局長 芹沢鴨(せりざわかも)
2位は、2番隊・組長 永倉新八
3位は、1番隊・組長 沖田総司
4位は、副長 土方歳三 2代目・局長 近藤勇
5位は、3番隊・組長 斎藤一 となる。
其の他大勢の中の私が省かれる 坂本晴美
理由ー 一位の芹沢は、滅茶強かったようだ。
会津藩が、土方歳三・山南敬助・沖田総司・原田左之助らに、
芹沢の暗殺を密命した折。
芹沢は、酔っていた上に、寝込みを襲われながらも、4人の剣客を手こずらせた、
その凄さが窺える。
2位の永倉新八といえば、沖田総司に並ぶ、新選組大幹部の一人。
沖田は、新八に助けられた、池田屋事件でランクを逆転した。
そして、剣術の腕は「沖田さんより進んでいた」 と元隊士(阿部十郎)も証言している。
4位の二人は、沖田も同じ道場で、沖田より弱いが、互角の腕前。
5位は、腕前で、順当に決まった、3番組長の役職である。
人間を刻んだ不幸な包丁 小栗和歌子
蛇足になるが、当時、江戸三大道場といわれた、
千葉周作(北辰一刀流)の玄武館、桃井春蔵(鏡新明智流)の士学館、
そして練兵館(神道無念流)があり、
その中でも最強をほこったのが、”神道無念流”である。
芹沢鴨、永倉新八は、この神道無念流の免許皆伝者。
近藤勇、土方歳三、そして天才の沖田総司は、天然理心流の免許皆伝者。
岡田以蔵、稲次春之助(新選組・隊士)は、一番古い、鏡新明智流。
坂本龍馬は、承知のとおり、北辰一刀流の免許皆伝者である。
しかし、免許皆伝といっても、当時は大安売りでお金で買えたものである。
基本的に、刀に対する理念が違う、龍馬や、以蔵には、
隆盛を誇った”無念流”や、新撰組流儀の”理心流”には、
到底、歯がたたなかった。
さっと吹く風に力を試される 佐藤正昭
『龍馬伝』・第22回‐「龍という女」 あらすじ
容堂(近藤正臣)の、帰国命令を拒んだ龍馬(福山雅治)ら、
勝塾の土佐藩士は、脱藩浪士の身となる。
一方、役人に追われる以蔵(佐藤健)は、なつ(臼田あさ美)のもとへ逃げ戻る。
だが、なつは、「以蔵が人斬りだ」と知り、以前のように接することができない。
それを見た以蔵は、一人去る。
「自分が追い出したのかもしれない」
と感じたなつは、龍馬に彼を捜してほしいと懇願。
龍馬は京へ向かう。
失くしてから大事な人と思い知る 浅雛美智子
京では、攘夷志士が斬られる事件が、ここかしこで起こっていた。
幕府が集めた浪士組・「新選組」が、
攘夷派の残党を問答無用で斬り捨てていたのだ。
早く見つけださなければ、以蔵が危ない。
龍馬は懸命に捜し回るが、以蔵の姿はどこにも見当たらない。
やがて日も落ち、龍馬は扇岩という宿に、泊まることにする。
そして深夜、階下から宿の主人と誰かが言い争う声が、龍馬の耳に聞えてくる。
それは、ならず者に連れ去られた妹を、
一人で助けに行こうとしていたお龍の声だった。
一か八か進むしかない泥の舟 柴本ばっは
そのころ土佐では、容堂の勤王党弾圧が激化。
島村衛吉(山崎雄介)は、吉田東洋(田中泯)暗殺の取り調べのため、
拷問を受けていた。
その悲鳴は、獄中の半平太(大森南朋)の耳に届いて・・・。
かしこい人の頭の皮を剥がす 井上一筒
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