- 2011/12/18
- Category : ポエム&川柳
日露ーバルチック艦隊
建造直後の「三笠」
『興国の興廃この一戦にあり、各員一層奮励努力せよ』
の信号旗を真之に「三笠」メインマストに掲げさせた東郷が、
「7段構えの戦法」の第二段から第四段までの攻撃で、
「バルチック艦隊」撃滅に成功したのは周知の通り。
東郷の卓抜なる指揮能力と、島村の側面援助により、
智謀の人・秋山真之の名は、世界会戦史に不滅の輝きを刻んだ。
「ついにバルチック艦隊来たる」 40分/ 5分
明治37年(1904)8月10日の「黄海海戦」、
同月14日の「蔚山沖海戦」、そして38年1月2日の「旅順開城」と、
多少の錯誤と混乱はあったが、
戦略的な諸問題は、次第に整理されてきた。
陸軍の砲弾によってロシア海軍の極東艦隊は、
戦艦・セヴァストーポリ1隻だけを除いて殱烕された。
ただ1隻残されたセヴァストーポリも、水雷攻撃によって仕留めた。
これでようやく日本艦隊は、ドック入りして艦の立て直しをすることができる。
三笠内部ー1
≪艦首には菊のご紋章が備わり、旗竿には二の丸が、
そして、三笠の有名なZ旗がマストに翻る≫
第3艦隊だけは、陸軍との共同作戦のため残ったが、
第1艦隊は呉へ、第2艦隊は佐世保へとそれぞれ帰港した。
日本海軍にとっての次なる問題は、
「バルチック艦隊がいつやって来るか」
ということである。
バルチック艦隊戦闘絵
その「バルチック艦隊」は、司令長官・ロジェストウェンスキーに率いられ、
明治37年(1904)10月15日に、
バルト海に面したリバウ港を出航していた。
出航早々、北海海上でイギリス漁船を、日本の水雷艇と見誤って、
砲撃するという事件が起こった。
厄というなら君と出会ったことだろう 本田洋子
イギリスのロシアに対する態度は硬化し、
イギリスは、フランスにも圧力をかけたため、
本来ロシアの同盟国であるフランスも、
ロシアへの援助を控えることになった。
これが、バルチック艦隊の長征を、
いっそう苦難に満ちたものにしたのは、言うまでもない。
日本海会戦の絵
≪真ん中が東郷、右から三人目が秋山参謀≫
2月14日、東郷が乗る「旗艦・三笠」は呉港を出発、
佐世保港を経て、朝鮮の「鎮海湾」に入った。
バルチック艦隊が来るまでの待機場所である。
5月14日、バルチック艦隊が仏領安南を離れた。
ロジェストウェンスキーが「対馬へ」と針路を定めたのは、
5月25日のことであった。
もちろん日本艦隊は、まだ知る由もない。
コースとしては太平洋から、津軽海峡か宗谷海峡を通って、
「浦塩」へという選択も考えられた。
さすがの秋山真之も迷った。
三笠内部ー2
≪秋山真之が指揮をとった場所が示さた上部艦橋≫
「司馬氏記」
≪真之の心気はこの時期乱れつづけ、
敵のコースを予測するについて、不動の判断というものがなかった。
彼のこのときの神経と頭脳の極度の疲労が、
その後のみじかい余生を、ずっと支配しつづけるのだが、
この時期の懊悩ぶりは、
その行動に常軌を失なわせたほどであった。
天才のまわり孤独の匂いする 武内美佐子
たとえば、彼は靴をはいたまま眠った。
彼の上司である加藤友三郎参謀長が、
『そんなことをしていては体がもたない』
と、見かねて忠告したが、
真之はその加藤の顔をじっと見つめているだけで、
加藤の言葉が耳に入らないようであった≫
三笠内部ー3
≪ホテルのような司令長官公室と指揮官用のバスルーム≫
秋山作戦参謀は、三笠の作戦室で全神経を集中させていた。
黄海海戦の実績から判断して、
ロシア艦砲の発射速度は、
日本側の大体3分1であることに気がついた。
もう一つ、日本海軍の長所は「火薬の威力」である。
日本の「下瀬火薬」は、
ロシアの「綿火薬」の二倍以上の威力があった。
秋山はこの二つの条件を生かせば、余程の大失敗でもしない限り、
射距離・5000㍍以内に飛び込めば、「絶対勝つ」と考えた。
パスカルは葦の迷路で戯れる 山口ロッパ
問題は、接近経路である。
秋山の天才的頭脳が、世界最初の「独創的な哨戒計画」を編み出した。
可能性のある海域を、碁盤の目のように細分し、
その一つ一つに哨戒用の艦船を配置する構想である。
絶対に見逃すことはない。
そしてさらに、秋山は「七段構え」と称する迎撃計画を策定した。
三笠内部ー4
≪上甲板の前部と後部には30㌢の主砲を装備してある≫
その構想は、昼間は砲撃、夜間は雷撃、そしてその反復、
作戦予想海面を概定し、訓練と作戦の準備を示すもので、
秋山の必死の考察の成果であった。
* 下瀬火薬=海軍技手・下瀬雅允が開発した強力な火薬。
日本の砲弾は、装甲帯をつらぬかぬかわりに、
艦上で炸裂し、その下瀬火薬によって、
そのあたりの艦上構造物を根こそぎに吹っ飛ばすのみか、
必ず火災をおこしてしまう。
「この当時、世界にこれほど強力な火薬はなかった」
二日後の12月20日最終章に続きます。
まっさらの闇から風が生まれます 合田瑠美子




