忍者ブログ
川柳的逍遥 人の世の一家言
[794] [793] [792] [791] [790] [789] [788] [787] [786] [785] [784]
ときどきは深いところをかきまぜる  田村ひろ子


  玉鬘と女房たち


竹河の はし打ち出でし 一節に 深き心の 底は知りきや

竹河という歌を謡ったあの一節から、
私の深い心の思いを分かっていただけたでしょうか。

「巻の44 【竹河】」

太政大臣・髭黒は、玉鬘との間にできた3男2女を残して亡くなった。

どの子の未来も幸福になって欲しいと空想を描いて、

成長するのももどかしく
待っていた髭黒だったが、突然亡くなったので、

遺族は夢のような気がして、
生前の髭黒が娘の入内を望んでいたことも

そのままになっていた。


2人とも器量がよく、特に姉の大宮の美しさは世間でも噂になるほどで、

今上帝をはじめ冷泉帝夕霧の子・蔵人少将や柏木の子・など、

多くの求婚者が集まる。

口紅をさすとおんなは花になる  美馬りゅうこ

玉鬘は姉姫をただの男とは決して結婚させまいと思っていた。

妹姫はもう少し蔵人少将が出世したなら、結婚させてもいいと考えていた。

少将は許しがなければ、盗み取ろうと思うほどに深い執着を持っている。

もってのほかの縁と玉鬘は思っている訳ではないが、相手の同意もなく

暴力的に結ばれることは、世間に聞こえた時、こちらにも隙のあったことに

なってよろしくないと思って、蔵人少将の取り次ぎをする女房に、

「決して過失をあなたたちから起こしてはなりませんよ」

と戒めているので、少将も手の出しようがなかった。

一方、上帝への入内となると明石中宮がいて姫の苦労は目に見えている。

退位した冷泉院には、秋好中宮という寵愛をする女性がいる。

どうしたらよいか、玉鬘は判断がつかない。

ハンカチの耳をそろえて少し泣く  清水すみれ
   

満開の桜と競う姉姫と妹姫

3月になって、咲く桜、散る桜が混じって春の気分の高潮に達したころ、

姫君たちはちょうど18、9くらいで、容貌も性質もとりどりに美しい。

姉姫のほうは鮮明に気高い美貌で、華やかな感じのする人で、

普通の人に
嫁がせるのは、もったいないと玉鬘が評価しているのも

もっともなことと思われる。


妹姫は、背が高くて艶に澄み切った清楚な感じのする聡明な顔つきである。

碁を打つために姉妹は向き合っていた。

髪の質のよさ、鬢の毛の顔への掛かり具合など、両姫とも見事である。

この囲碁に熱中している姉君の姿を垣間見ることが出来た蔵人少将は、

少し勇気づけられた気がした。

だが、悲運な蔵人少将の浮かれた気分は、すぐ砕かれてしまう。

マンゴーも女も甘い香を放つ  日野 愿

困り果てた玉鬘が、冷泉院からの催促に折れ、結婚を決めてしまったのだ。

それを聞いた蔵人少将は「自分はもう死んでしまう」と泣き暮れる。

姉君あてにそんな手紙を書き、同情を誘うが決まったものは動かない。

ライバルの薫も思いを残す結果となる。

やがて7月になって姫は妊娠をした。
つわり
悪阻に悩んでいる新女御(姉姫)の姿もまた美しい。

世の中の男が騒いだのはもっとなことだと院は思い、

愛する姫を慰めようと
音楽の遊びをたびたび御殿で催した。

侍従が正月に「梅が枝」を歌いながら訪ねて行った時に、

合わせて和琴を
弾いた左近中将(鬚黒と玉鬘の長男)も常に役を仰せつかっていた。

薫は弾き手のだれであるかを音に知って、姫との手紙のやり取りの仲介を

させていたころの夜を追想するのだった。


哀しみに音あり淡い彩のあり  嶋澤喜八郎

そして姉姫は翌年4月に女宮、次の年には皇子を生む。

院の多くの後宮の女御たちには、男の子が恵まれなかったことから、

院は親王誕生に喜び、ことのほか新女御を愛した。

「在位の時であったなら、どれほどこの宮の地位を光彩あるものに

   できたか、
もう今では過去へ退いた自分から生まれた一親王にすぎない

    のが
残念である」 と院は思うのだった。

愛のうたらくだに瘤が二つある  森中恵美子

しかし院の愛情が大きければ大きいほどば、新女御の立場が苦しくなる。

双方の女房の間に苦く重たい空気がかもし出されてゆく。

新女御は人事関係の面倒さに、里へ下がっていることが多くなった。

玉鬘は娘のために描いた夢が破れてしまったことを残念がった。

御所へ上がったほうの妹姫はかえって、はなやかに幸福な日を送っていて、

世間からも聡明で趣味の高い後宮の人と認められていた。

玉鬘は自分の判断が間違っていたのかと嘆き、

たまたま訪問していた薫に、
愚痴を溢すが超然とした薫は

「よくあることですね」
などと言って、
親身にはなってくれない。

柔軟剤に一晩漬けておくイケズ  山本昌乃


 囲碁を打つ姉妹

【辞典】 作者別人説

原文ではこの竹河の巻の冒頭に、但し書きのような文章が記載されている。
それに加え今までの話は紫の上に仕えていた女房の噂話で「間違っている
かもしれない」とまで書かれている。
今までのことを否定しているような説明なのだ。


原文・書き出し。
これは源氏の御族にも離れたまへりし、後の大殿わたりにありける悪御達
の、
落ちとまり残れるが、問はず語りしおきたるは、紫の ゆかりにも似ざ
めれど、
かの女どもの言ひけるは、「源氏の御末々に、ひがことどもの混
じりて聞こゆ
るは我よりも年の数積もり、ほけたりける人のひがことにや」
などあやしがり
ける。いづれかはまことならむ。

〈ここに書くのは源氏の君一族とも離れた、最近に亡くなった関白太政大
の家の話である。つまらぬ女房の生き残ったのが語って聞かせたのを書
くの
であるから、紫の筆の跡には遠いものになるであろう。またそうした
女たちの
一人が、光源氏の子孫と言われる人の中に、正当の子孫と、そう
でないのと
があるように思われるのは、自分などよりももっと記憶の不確
かな老人が語
り伝えて来たことで、間違いがあるのではないかと不思議が
って言ったことも
あるのであるから、今書いていくことも、皆、真実のこ
とでなかったかもしれな
いのである

無為な日はあっちこっちを掘り返す  森吉留里恵

その出だしの設定方法はもとより、この竹河の巻と前の匂宮、紅梅の巻
はこれまでの41巻から見て、劣っている点が多数あると古くから多くの
人が
指摘している。文体や用語の使い方、何よりも物語の面白さといった
点で、
三部の始まりの三巻は完成度が低いといわれている。

そんな指摘を踏まえこの三巻は、紫式部が書いたものではなく、あとから
別の人
が書いて、差し込んだという説がある。この説は完全に否定されて
おらず、今も
決着はついてない。

 しかしこれからつづく10巻の話は「宇治十帖」とも呼ばれ、
人によってはそれ
までの光源氏のストーリーより評価されている。

源氏物語も残り10巻。ダイナミックなストーリーが展開されます。

その先に触れると未来消されます  上田 仁

拍手[3回]

PR


Copyright (C) 2005-2006 SAMURAI-FACTORY ALL RIGHTS RESERVED.
忍者ブログ [PR]
カウンター



1日1回、応援のクリックをお願いします♪





プロフィール
HN:
茶助
性別:
非公開