火柱の中にわたしの駅がある 大西泰世
御座船
≪豊臣家をしのぐ徳川家の力を見せつけるように、
数千艘の伴船を従えて、山科川を下っていく千姫の御座船≫
「千姫の婚礼」
慶長8年(1603)、家康が、「征夷大将軍」に任命されて、
5ヶ月後の7月28日、千姫が秀頼のもとに嫁ぐ。
秀吉の生前に婚約していた2人だが、
家康の将軍職就任直後に、千姫を輿入れさせた背景には、
徳川家の政治的配慮があった。
豊臣家の心証はもちろん、
関が原の戦いで勝利に貢献した、
豊臣家恩顧の諸大名への、配慮があったのだろう。
福島正則らは、家康を天下人にするために、
関が原で、奮戦したわけではなかったからだ。
カタログをタヌキキツネが零れ出る 谷垣郁郎
7歳になった千姫は、秀頼との婚儀を執り行うべく、
伏見へと向かう。
それには、お腹に ”4人目の子” を宿しながら、
江も、同行することとなった。
娘の婚儀に、母親が同行するなど、
前例のないことだったが・・・。
それが、江らしかった。
さすがに、婚礼には出られなかったが、
伏見に行ったことで、姉の淀と初との再会を果たした。
≪ここで身籠っていた子は、やはり女児で、、初姫と名付けられ、
子供の出来なかった姉・初との約束で、姉の養女となる≫
悲しいときは嬉しい顔の叩き売り 前中知栄
伏見城から大坂城へ、船で下る千姫の輿入れは、
盛大なものだった。
千姫が乗った「御座船」の周りには、
葵の紋所が染め抜かれた幔幕が張られた。
迎えの数千艘の船を従えた御座船を、
大坂城に向かわせることで、
徳川将軍家の威光を、
豊臣家の影響力が強い上方に、知らしめようとしたのだ。
手応えを握りこぶしは知っている 片岡加代
当時、家康は伏見城にいたが、秀忠は江戸城にいた。
実は、徳川家側は、この婚儀をあまり歓迎していなかった。
そんな徳川家の姿勢を物語る、次のような話がある。
婚儀となれば、
諸大名は、自ら婚儀に出席するが、
出席できなければ、
祝意を述べる使者を、派遣することになる。
考える葦一本の生き上手 皆本 雅
例えば、妻のガラシャを、
関が原の直前に失った小倉城主・細川忠興は、
7月11日に、小倉城から大坂に向かう。
21日、大坂に到着し、
26日に、伏見城にいた家康に、祝意を言上した。
婚儀から2日後の晦日には、秀頼に祝意を述べている。
忠興は、小倉にいた嫡子・忠利に、
婚儀に祝意を述べる、使者の派遣を命じようとする。
処方箋裂けたぎょうにんべんと0 井上一筒
家康にとっては孫娘、
秀忠にとっては長女の、輿入れであり、、
徳川家への配慮にもつながると、判断したに違いない。
忠興は、使者を送る前に、
徳川家に、この件を問い合わせている、
が、意外な指示が下る。
「使者をわざわざ、豊臣家に送るには及ばない。
祝意を述べる書面を送れば充分である」
というのだ。
約束の指で消去のキーたたく 斉藤和子
11歳で政略結婚をした秀頼
この婚儀を通じて、
「豊臣家が、天下の注目を浴びるようなことは避けたい」
という、徳川家の意向が伝わってくる。
新しい天下人の徳川家としては、
かっての天下人・豊臣家の印象は、極力薄めたかったのだ。
こうした徳川家の姿勢を、当然、お江は察していただろう。
お江がわざわざ、大坂城に赴くことに、
家康が、あまり歓迎しなかった理由は、ここに明白である。
しかし、豊臣家と徳川家の間が、
「将来、手切れになる事態は、どうしても避けたい」
との気持ちが、お江を動かした。
秀忠も、黙認せざるを得なかったのかも知れない。
リセットができないままのトコロテン 山口ろっぱ
大河ドラマ「お江」・第37回-「千姫の婚礼」 あらすじ
「関が原の戦い」が終わって、1年余、
力を増すばかりの家康(北大路欣也)は、
主君である秀頼(武田勝斗)への新年のあいさつを、
なんと、2月になってから行う。
治長(武田真治)は、その不遜な態度をとがめるが、
家康はまったく気にする様子もない。
それどころか、
「征夷大将軍を拝命することになりました」
と、さらりと宣言し、秀頼とともに、
挨拶を受けた淀(宮沢りえ)を驚愕させる。
もちろん淀は、
「秀頼様が成長するまでの仮の将軍」
という家康の説明を信じてはいなかった。
心してかかる相手は宇宙人 山内美代子
「征夷大将軍といえば、亡き秀吉も就きたいと望んでいた、
武家を束ねる役職である。
今、武家の頂点にあるのは、
秀頼ではなかったのか・・・・」
家康が、その将軍職に就くと聞き、動揺する江に、
秀忠(向井理)が、さらなる衝撃的な話を聞かせる。
長女の千(芦田愛菜)を、
秀頼に輿入れさせるというのだ。
秀頼と千の婚姻は、秀吉の遺志でもあり、
既定の流れだったとはいえ、千はまだ7歳。
かつて、わずか3歳で嫁に出した次女・珠(渡辺葵)が、
不憫でならず、
今も泣いてばかりいる江(上野樹里)としては、
「もう少し先でも」
と思わざるをえない。
油断した隙に尻尾が生えてくる 合田瑠美子
しかし江は、自身の経験から、
こうした話が動き出せば、まず拒めないことをよく知っていた。
ゆえに、
「この婚姻を、豊臣と徳川の ”和平の証し” としたい」
という秀忠の意もくみ、
しかたなく千の嫁入りを受け入れる。
そして今度は、千とともに、
「自分も大坂に行きたい」 と願い出る。
江は婚儀直前に、千の気持ちを確かめ、
もし嫁入りを心底嫌がっているなら、
どうあっても、連れかえるつもりだったのだ。
また、千の姑となる姉・淀に会い、
「直接話をしたい」 とも考えていた。
臨月のあなたの中のダイナマイト 河村啓子
[5回]