川柳的逍遥 人の世の一家言
一つだけ違う色した影がある みつ木もも花 「西郷どん」 エピソード (拡大してご覧ください) 西郷と二匹の犬 白い方を「雪」、黒い方を「攘夷家」という。 攘夷家は川辺郷の中条良正に贈られた犬で、 洋服の人を見かけるとよく吠えたことからそう名付けられた。 「西郷のあれやこれ」「うんざりした」 明治維新とは、薩長の書生による革命というべきものであった。 きび 木戸孝允など第一級の書生はともかく、その「驥尾に付していた連中」の 中で思わぬ身分を得て、心の平衡を失うものも出た。 それらが馬車に乗り、洋服を着、官員風を吹かせて四民の上に君臨する さまは、旧幕府の旗本の比ではなかった。 福沢諭吉はそういう連中に対して、「人面獣心」と吐きすてた。 ※ 驥尾に付す=優れた人物の後につき従っていれば、自分の能力以上の ことが成し遂げられること。 芯がない鉛筆けずるまた今日も 杉山ひさゆき 歴史散歩偉人たちの末裔は今 で初公開された西郷の肖像画 しかし西郷は、そういう官員たちとは違っていた。 彼は東京に在るとき、日本橋小網町の古屋敷に下僕と共に住み、 雲水のように男所帯でひっそり暮らし、出入りは徒歩だった。 このため近所の人々も、彼が誰とも知らず、まして参議・陸軍大将である とは気づいていなかった。 そんな西郷が、うつ病患者のような時期がある。 明治6年11月、新政府の人間や政治にうんざりした西郷は、 俄かに参議の職を辞め、単身故郷に帰ってしまう。 その時の詩に「脱出ス、人間虎狼ノ群」という激しい句があり、福沢のいう 人間獣心とよく照応している。 そしてそんな西郷を癒し、西郷が唯一心を許したのが「犬」であった。 雲として暮らす一身上の都合 月波与生 犬を連れ西郷の軍服姿(床次正精画) 「西郷のあれやこれ」 犬好きだった 上野の西郷像は犬を散歩させている珍しい銅像で、モデルになったのは、 「ツン」という名のメス犬だった。 西郷は大変な愛犬家で、20頭ばかりの犬を飼っていたという。 京都霊山歴史館にある西郷の肖像画には愛犬の「ユキ」と「ゴジャ」が 描かれている。 ユキは真っ白だったことからそう名付けられた。 ゴジャは明治6年頃、飼い始めた鹿児島川辺産の猟犬で黒の斑があった。 洋服を着た人間によく吠えたことから、西郷が「攘夷家」という愛称を つけて可愛がっていたという。 筋書きのない一日が暮れていく 合田瑠美子 私欲のなかった西郷も犬だけは例外で、鰻を食べさせ店の人を怒らせたり、 肉を与えすぎて猟犬を肥満体にしてしまったこともあるらしい。 また西南戦争末期には、愛犬との別れを惜しんで、 男泣きしたという話も残っている。 西郷は愛犬「寅」を京都祇園の料亭にも連れて行っている。 木戸孝允、山形有朋、伊藤博文、は若い芸者を呼んで、 夜更けまで騒いでいたが西郷だけは、昼間に「寅」と一緒にやってきて、 一緒に鰻を食べてすぐに帰ったという。 祇園の芸妓君竜は「ほんまに粋の中の粋を知ったお方」と評している。 また明治政府に出仕した時に「西郷が妾を2人抱えた」という噂が流れた。 そこで真相を確かめようと若い軍人が訪ねたところ「2人抱えたよ」と 西郷は何を隠すこともなく、連れてきたのは、2匹の猟犬で両方とも、 メスだったという。 乗らぬブランコ押している揺らしてる 徳山泰子 「西郷のあれやこれ」 甘党だった。 西郷は愛煙家だった。 故郷鹿児島県国分の煙草を愛し、刻みタバコとキセルを常に携帯していた。 西郷所有の煙草入れが現存している。 ありすがわみやたるひと これは鳥羽伏見の戦いの戦功により、東征大総督・有栖川宮熾仁親王より 賜ったものである。 しかし西郷は甘党だったから、酒はほとんど飲まなかった。 ただ桜田門の変の一周忌には、朝から黒糖焼酎を飲んで酔っ払ったという 話が残っている。 西南戦争の時に白金酒造の焼酎を大量に買ったという話もある。 これは飲むためではなく、負傷した兵の傷を消毒するためであった。 なんでやろ飲めば宿無し犬になる 新家完司 「西郷のあれやこれ」 お洒落について。 西郷はオシャレには、まるで頓着しないイメージがあるが、 女性の調度品、特に、櫛・簪にはかなりの鑑識眼を持っていた。 これは篤姫が将軍・家定に輿入れする際の調度品を調達したからである。 また青竹を熱したもので髪の毛を巻いて、パーマをかけていたこともある。 そんな西郷であったが、戊辰戦争の途中で鹿児島に帰った時は、 丸坊主にしていた。 当時西郷はのぼせ症だったので、髪の毛を剃っていたのである。 そして、意外に近代的な懐中時計を持っていた。 これは英国のロンジン社製で薩摩藩主の島津忠義から贈られたという。 しかし服装は、明治政府に出仕していた時にも、 木綿の着物に小倉袴という質素な身なりだったという。 かすり 鹿児島に帰ってからは、肥満のために暑がりだったようで木綿藍染の絣や、 自宅では、裾の短い単衣で寛いでいたらしい。 戸締りはしない家にもこころにも 阪本こみち PR |
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