冗談ですまなくなった物忘れ 靏田寿子
「将棋の一手 その時、脳は?」
対局の中盤の盤面を4秒見せ、「攻めるべきか、守るべきか」を2秒間
で直感的答えてもらった。その間の脳活動を計測すると大脳の中心部に
ある「帯状皮質」と脳表面にある「前頭前野」が活動していた。
逆風に立ち位置変えて待つ一手 小林満寿夫
「脳のお話し」-2 こんなときだからこそ
脳との付き合い方
「最も大事なことは、人生を楽しむこと、幸せを感じること、
それが全てです」 オードリーヘップバーン
『日常会話というのは、ボクシングでいえばジャブである。
無駄なような積み重ねの後、だんだん核心に近づいていくのである』
阿久悠 (「作詞入門ゟ」)
人間の脳は心を支配する。新しいものを見れば脳は活性する。
人間らしさは「大脳皮質」に宿る。 大脳皮質の本質は、知性です。
幸せの真っただ中で気がつかず 中岡千代美
『モーツアルトは演歌を作れない』 茂木健一郎
天才作曲家といわれるモーツアルト。しかし、いかにモーツアルトが
天才だとしても、彼がさままざまな音楽に接していたことなしには語
れないだろう。例えば彼が、トルコ軍隊がウイーンを占領した後のト
ルコ風音楽の流行の中で「トルコ行進曲」を作曲している。
その経験、学習がなければ、その名曲は生まれていない。
創造性は、体験が基礎となって生まれるモノ。モーツアルトの曲の中
に「演歌」がないのは、彼が演歌を聞いたことがないからである。
正解を探して白紙のままの僕 柴田桂子
『人間はひとくきの葦にすぎない。自然の中で最も弱いものである。
だが、それは考える葦である。同時に無限の可能性を秘めている』
ブレ―ズ・パスカル
蓄積されたものは「大脳皮質」の中の「側頭葉」で徐々に様々な意味や
価値に変換される。すなわち側頭葉は体験したものを整理したり、それ
を変化させて意味を付け加えたりという作業をする。
この「変換作業」は常に自発的に起こっているが、一つの情報を活用す
る上で重要な働きをしているのが「前頭葉」で、人間が人間として存在
するために最も重要な場所である。いわば前頭葉は、頭の統合作用を受
け持つ領域で、側頭葉に蓄積された情報を整理活用する場所なのである。
つまり、いくら有益な情報が側頭葉にインプットされていても、前頭葉
が働かなければ、それらの情報は意味をなさない。
図書館で得た知識をどう活かすか意欲の部屋。
前頭葉湿った話止しましょう 前川和朗
『感動することをやめた人は、生きていないのと同じである』
アインシュタイン
人は生きていく中で、実に多くのものに出会っている。沢山の人たちに
出会い、初めての街や風景に出会い、味わったことのない美味に出会う。
その一つ一つに感動を覚えることで、人生は輝く。
もしも目の前にある新しい出会いに気づかなかったら、折角の新しい発
見に感動することがなかったら、私たち人間は輝きを失ってしまう。
ただ肉体が活動しているだけで、精神は死んでしまっている。
頭とは別行動をとる手足 前中一晃
『人間の脳は生きている限り活動を続けている』 茂木健一郎
脳の中には約一千憶の神経細胞があり、いかなる時もこの細胞は活動を
続けており、学び続けるという性質を持っている。
私たちは、長時間仕事をした時など「少し頭を休ませよう」などと言っ
たりする。しかし実際には、脳は休んでいるのではない。考えることを
止めただけで、何もしないでボッとしている時でも脳は考え続けている。
眠っている時でさえも、脳細胞は常に活動をしているのである。
このように脳が活動することで、体験したことを蓄積し、その意識がな
くても、脳に痕跡を残していくのである。
飾りボタンはためらい傷なのだろうか 前中知栄
『人は存在するものだけを見て「なぜそうなのか」と考えるが、
私は存在しないものを夢見て<なぜそうではないのか>と考える』
ジョージ・バーナードショー
創造性は、ゼロから生まれることはない。どのような新しいものを生み
出す時でも、必ずその元になる「体験や知識」というものがある。
人生経験のない五歳の子に恋愛小説は書けない。
だが「創造性は伝染するものだ。大いに伝えていこう」
三ミリの違いでなかったことにされ 河村啓子
『年配の人たちは「これは何?」と尋ねる。
でも少年は「これで何ができるの?」と尋ねる』
スティーブ・ジョブズ
自分の感じる時間と、実際の時間を同じくらいに感じられる年齢のボー
ダーは19歳頃という。子どもは見るモノ見るモノが新しい経験だから、
感動し楽しむことが出来るが、大人になって見たことのある景色は、経
験予測できるから、いまさら感動しない。
子どもの感性とうまく付き合うことで、トキメキが少しは共有できるよ
うになる。
「トキメキやワクワクを忘れてしまった大人たちの一年は、アッと言う
間に過ぎて行ってしまう」
つれ添ったつっかい棒も少し老い 山本昌乃
『やってしまった後悔はだんだん小さくなるけど、やらなかった後悔は
だんだん大きくなる』 林真理子
年老いるとトキメキを感じることが減る。時間の経過をどう感じるかは
心理学で「時間評価」の問題といわれている。ヒトには心的時計といえ
るものがあり、これが実際の時計よりも速く進めば「まだ1時間しかたっ
ていない」と感じるし、逆に心的時計が遅く進めば「もう1時間過ぎた」
と感じる。
退屈な会議で何度も時計を見る場合、時間がなかなか過ぎないと思うよ
うに、時間経過に注意を向けるほど、同じ時間でも、長く感じられる。
これが、子どもと大人の違いに関係している可能性もあるそうだ。
子供には待ち遠しい行事が多いのに対して、大人になると慣れ親しんだ
刺激の少ない出来事ばかりのため、時間経過に注意を向ける回数が減り、
その分時間の進行が速く感じられるという。
秒針の無い時計で計る二十秒 くんじろう
『自分自身でいよう。他人でいることは誰かがもうやっている』
他人の心が分かるということが、なぜこれほど難しいことなのか。
感情などが瞬時に伝わるという共感回路をもちながらも、なかなか他人
の心を理解することができない。実はその理由は、人間にしか持ち得な
いある特性があるからだという。
その特性とは「ポーカーフェイス」のこと。
つまり心に抱いている感情と、表に出てくる顔の表情に食い違いがある
ということである。
今ここで抜いたら竹光がばれる 倉 周三
『世界には、きみ以外には誰も歩むことのできない唯一の道がある』
ニーチェ
他の動物は感情の動きと表情が一致している。怒っている時は牙を剥き
出しにするし、喜んでいる時は体でそれを表現する。
ところが人間は、心の動きを表に出さず、隠してしまうことができる。
ものすごく怒っているのに、冷静な表情をつくることができる。
こうした表情の操作ができる人間だから、互いに気持ちが分かりあうこ
とが難しくなる。他人を思いやる気持ち、互いに分かり合おうとする気
持ち。それはまさに、見かけとは違う心の状態を、いかに推測できるか
ということになる。人と人との関係は、初対面のときから分かり合える
ものではないから推測のしようもない。しかし時間を重ねて関係が深ま
ってくるにつれて、互いの心を推測し合えるようになる。
いずれにしても人間の脳は、他の動物より複雑なもの。
わたくしを破ると春になりました 柴田園江
『世に最も輝き、かつ最ももろきもの二つあり。
一つは女の顔、一つは陶器』 スウィフト
男性は「論理的思考」が強く、女性は「感情的、情緒的」な傾向がある
と最近のデーターで分かってきた。
脳には「右脳」と「左脳」があり、右脳は、主に感情やイメージを司り、
左脳は、論理的思考を司る。この右脳と左脳をつなぐ「脳梁」(のうり
ょう)というものがあり、橋ともいわれるその脳梁が女性の方が男性よ
りも太いことも分かってきた。
つまり女性の方が、右脳と左脳の情報伝達が、スムースに行えることが
できるということになる。
例えば、考え事をしている時、一般的に女性は右脳と左脳を均等に使っ
ている。これに対して男性は、ある部分を集中して使う傾向がある。
男は論理的、女は感情的というのが実験によって分かってきたのである。
さらに最近では、人間関係の捉え方でも、男女で違うことが解明された。
目分量ですが青空をいちまい 吉松澄子
『束縛があるからこそ、私は飛べるのだ。悲しみがあるからこそ、
私は高く舞い上がれるのだ。逆境があるからこそ、私は走れるのだ。
涙があるからこそ、私は前に進めるのだ』 マハトマ・ガンジー
共感回路の使われ方。
「共感回路」とは、人が痛みを感じていたら自分も痛みを感じる。
人が喜んでいたら、自分も嬉しい気持ちになる。
他者との共感を生むという回路が脳の中にあり、感動を受ける上で重要
な役割を果たしている。この共感回路の働きが、男と女では違う。
女性はどんな時にも、共感回路が働いており、男性の場合は、社会的な
状況に応じて、この回路をONにしたりOFFにしたりできる。
すなわち人の痛みに男は、ずるく鈍感なのである。
いっそのこと納豆にでもと思う 雨森茂喜
『あらゆる偉業の出発点は、目的を明確にすることから』
クレメント・ストーン
共感回路の実験。
数人が集まりゲームをさせる。ゲームでズルをすると微量の電流を流す
という罰を与える、という実験である。
仕掛人としてズルをする人は決めてある。ズルをして電流が流されると、
ズルをした人は当然痛がる。みんな多かれ少なかれ共感回路が働く。
ここで女性の大半は、自分も同じ痛みを脳が分かろうとする。
一方、男性の方は「アイツは悪いことをしたのだから、少々、痛い思い
をするのは当然だ」という論理を導き出し共感回路のスイッチをOFF
にしてしまう。
終電の終着駅で待つ始発 近藤北舟
『痛みなしでは、何も増えない』 フランスの外交官
これはおそらく、男性が社会秩序を維持するという役割を担てきたため
だろうと解釈される。正義や秩序を守るためには、それを犯すものには、
時に非情にならなければならない、いちいち共感回路を働かせていては、
秩序や法が守れないのである。
ただし男性社会であった警察官も、最近は女性が増えてきているように、
男女の間に職業の差はなくなってきている。社会的な役割も減少してき
ている。共感回路を自らの意志でOFFにできる女性が増えてきている
証である。実感。
ロキソニンまぶたの裏のツボに貼る 井上一筒
『楽しいから笑うのではなく、笑うから楽しいのだ』
ウィリアム・ジェームズ
「身体は脳の支配下にある」と思われがちだが、本当は逆で、「カラダ
が主導権」を握っている。進化の過程を思い出せばわかる。脳とカラダ
のどちらが先に発達したか。もちろんカラダである。カラダのない動物
はいない、が、脳のない動物はいくらでもいる。脳は進化の歴史では、
新参者なのだ。「楽しいから笑う」のではなく「笑うから楽しい」「や
る気が出たからやる」のではなく「やるからやる気が出る」のである。
こそっと何を聞いたのだろう笑うてはる 通利一辺
「おまけ」‐①
『明日死ぬかのように生き、永遠に生きるかのように学ぼう』
これは大変有名なガンジーの名言ですが、ガンジーは1869年生まれ。
この言葉が活字に最初に出たのは、1867年と発言をする人がいる。
脳はときどき誤作動をするから、真実はどうなんだろう。
「おまけ」‐②
『心が変われば行動が変わる。行動が変われば習慣が変わる。
習慣が変われば人格が変わる。人格が変われば運命が変わる』
山下智茂(星稜高校野球部監督))
間延びした記憶が元に戻らない 嶋沢喜八郎
[2回]