忍者ブログ
川柳的逍遥 人の世の一家言
[234] [232] [233] [231] [230] [229] [228] [227] [225] [224] [223]

五階まで若葉をつれた人が来る  森中惠美子

kiyomori-4.jpg

「エピソードー清盛のやさしい一面」

清盛が若い頃の話である。 

「ある人が嫌なことをしたとしても、

 その人が、戯れでやったことと思い、

その人をいたわる気持ちから、

おかしくなくても笑ってあげた。

誰かが間違いをおかしたり、

 

ものを散らかしたりしても荒々しく声を立てることもなかった。

流れ行く一部始終を見た辛夷  山下怜依子

冬の寒い頃には、

若い奉公人たちを、

自分の衣のすその下に寝かせてやり、

彼らが寝坊したら、

そっと寝床から抜け出して思う存分寝かせてあげた。

善人の面そおっと置いていく疲れ  山本昌乃

身分の低い召使であっても、

その者の、家族や知り合いの見ている前では

一人前の人物としてあつかったので、

その者は、大変名誉に感じて心から喜んだ。

うどんの神様 コタツの佛さま  壷内半酔

このような情けをかけたので、

ありとあらゆる人が清盛に心を寄せたのだった。

人の心を感動させるというのは、

こういうことをいうのである」

焦点にずらし具合を聞いて情  蟹口和枝

kiyomori-3.jpg

『平家物語』で知られる横暴な清盛像とは、

だいぶかけ離れている。

清盛の若かった頃の話ということだから、

「保元・平治の乱」前か、

もしくは、その直後のことであろう。 

大つぶの涙ファイルの中の染み  オカダキキ

 

明治以降の「国定教科書」」では、

「皇室への反逆者」 として、

その「横暴ぶり」が強調された清盛だが、

平家全盛の時代から、

さほど遠くない鎌倉時代の「少年向け教訓書」の中で、

「理想の上司」として、描かれているのはおもしろい。 

B面を辿れば焼きいもに出会う  山本早苗

be958354.jpeg

 

『十訓抄』が成立した鎌倉中期は、

平家に対する懐古の雰囲気が、

色濃い時代であったといわれる。

平家の全盛時代を懐古した『平家公達草紙』が、

編まれるのも、鎌倉初期のことである。 

筆太に書いて信号青にする  谷垣郁郎

 

『平家物語』による、

「悪者」のイメージが定着していない時代でもあり、

平家の世を、正当に評価しようという機運が、

このような逸話を掘り起こさせたのかもしれない。

では、「この逸話の信憑性やいかに」

ということになるわけだが、

晩年の清盛は、「福原遷都」「南都焼き打ち」など、

その活動はお世辞にも、

「やさしい」とはいえない。 

オーロラは強く掴むと消えてゆく  井上一筒

 

その一方、権力を握る前の若かりしころは、

「十訓抄」の第7の項にあたる、

「アナタコナタ」する「気配りができる人」だった。

「十訓抄」が、

「若かったころ」 とあえて限定しているところに、

かえって、真実味が感じられるのだが・・・

どうだろうか?!。

追い出した鬼をときどき思い出す  河村啓子

27d6f421.jpeg

    『平家公達草紙』

「十訓抄の内容」

第一 人に恵を施すべき事
   情けは人のためならず、人に与えた恩は必ず自分に帰ってくる。

第二 傲慢を離るべき事
   美貌で知られる小野小町の尊大な態度を例に、戒めのこと。

第三 人倫を侮らざる事
   倫理ばかり尊重していてかえって馬鹿を見る。

第四 人の上を誡むべき事
   無知のまま、べらべらと色々しゃべると恥をかく。

第五 朋友を選ぶべき事
   友達選びに失敗し、人生を棒に振った悲しき人々の話。

第六 忠直を存ずべき事
   忠義の善悪について話そう。

第七 思慮を専らにすべき事
   人の立場を思いやる気持ちの大切さ。

第八 諸事を堪忍すべき事
   忍耐こそが最高の徳である。

第九 懇望を停むべき事
   人に罪の意識を植え付ける。

第十 才芸を庶幾すべき事
   誰にも一つ優れた才能がある、それを伸ばして世の中に役立てよ。

というように、道徳の教科書になっている。

ここにこそ、本来の清盛の内面がみえてくる。

欲張らず等身大で生きてゆく  田中荘介

拍手[4回]

PR


Copyright (C) 2005-2006 SAMURAI-FACTORY ALL RIGHTS RESERVED.
忍者ブログ [PR]
カウンター



1日1回、応援のクリックをお願いします♪





プロフィール
HN:
茶助
性別:
非公開