渦ふたつ擦れ合いながら生きている たむらあきこ
御陽成天皇・聚楽第行幸の屏風絵
天正16年4月(1688)、
2年の月日をかけて建てられた「聚楽第」に、
秀吉は、自らの力を誇示するかのように御陽成天皇を迎えた。
実に、このとき警備の者だけで、6千人余りが動員されたという。
しかし秀吉が一世一代をかけて建てた絢爛豪華なこの聚楽第も、
完成から10年も経ずに、秀吉自らが解体してしまう。
そこに何があったのか、興味のある謎がある。
(この謎はドラマの中で、おいおい解決されていくらしい)
順風満帆夢を見ているのだろうか 柏原夕胡
聚楽第跡
≪聚楽第の大きさは、東西600メートル、南北700メートルあった。
だが、今は寂しく石碑が一本があるのみ≫
秀吉は、小谷攻めのおいて、
織田軍で中心的は役割を果たし、
父・長政の命を奪い、
腹違いの兄・万福丸を串刺しの刑に処した張本人。
北の庄攻めでは、
さらに母・お市と義父・柴田勝家の命をも奪った。
盃の数といのちの数が合う 森中惠美子
いくら憎んでも憎みきれない仇敵・秀吉に、
身を任せることになった茶々の心情は、
いかばかりであったろうか。
でも、その後の茶々の行動からすると、
彼女を単純に、
「秀吉の生け贄になった犠牲者・被害者」
ととらえるのは、
決して正しい見方とはいいきれない気がする。
のたうち回ってる確かめあってる 前中知栄
弱者であるがゆえの悲哀を、嫌というほど味わった茶々は、
「力こそが全てであり、どんな正義にも勝る」
ということを身に沁みて、実感していたに違いない。
だとすれば、秀吉の求めを、
「茶々自身も積極的」に受け入れた可能性がある。
秀吉の側室になることは、
秀吉の持つ圧倒的な「力」を自らに手繰り寄せ、
我がものとする絶好の機会なのだ。
御手付き中臈ジオラマを掠める 井上一筒
北野大茶湯図
≪秀吉が天正15年(1587)10月1日、
北野天満宮境内で、九州平定と聚楽第の竣工を祝って催した茶会≫
2度の落城という、悲惨きわまりない体験を通じて、
茶々はそれくらいの、逞しさと強かさを、
身に付けた強い女性に、成長を遂げていたように思われる。
ラップ剥がして正しい呼吸 富山やよい
天正13年(1585)7月11日に関白に就任し、
9月9日には、新たに「豊臣朝臣」という氏姓を賜った秀吉には、
糟糠の妻である、お祢がいた。
関白正室として、「北政所」と呼ばれるようになった彼女は、
天正16年4月19日には、
「豊臣吉子」の名で、従一位に叙せられ、
位の上では、夫・秀吉に並ぶ存在になっていた。
ちょうちょうはひらがなでとぶ黄でとぶ 河村啓子
北野茶会に掘られた「太閤の井戸」
他にも、茶々にとっては、従姉にあたる京極竜子(松の丸)や、
前田利家の娘・摩阿(まあ-加賀殿)をはじめ、
秀吉には、たくさんの側室がいた。
けれど彼女たちの内で、子宝に恵まれたものは、
ひとりもなかった。
そうした中、茶々がはじめて懐妊する。
この懐妊により、茶々は、他の多くの側室から抜きん出て、
お祢に次ぐ立場となる。
絶妙の間合いを泳ぐ接続詞 中井アキ
「大河ドラマーお江・第21回ー『豊臣の妻』 あらすじ
茶々(宮沢りえ)と結ばれたことで、
たちまち元気を取り戻した秀吉(岸谷五朗)は、
京・聚楽第に帝を迎える計画を立て、準備にまい進する。
そして、秀吉は聚楽第に迎えた帝の前で、
諸大名に、「朝廷と関白である自分への忠誠」
を誓わせ、巧妙に支配体制を強化した。
白い器に僕の野心を盛りつける 和気慶一
茶々と秀吉の間で、何があったのかを知らない江(上野樹里)は、
帝の行幸の話を聞き、
「まず先に茶々の縁談を進めるべきだ」
と不満顔。
秀吉をせっついてほしいと頼んで、
事情を知っていたサキ(伊佐山ひろ子)を困らせる。
妹の左手どこかへ行ったまま 桑原鈴代
やり取りを見ていた茶々は、供の者たちを下がらせて、
江に言う。
「そなたに話がある」
意を決し、すべてを打ち明けた茶々。
姉の告白に衝撃を受けた江の胸は、
怒りと悲しみでいっぱいになり、
秀吉に対する憎しみを、さらに強くするのだった。
吐き出してごらん心が晴れるから 菱木 誠
そんな折、秀吉が大坂城にやってくる。
すぐさま彼の居場所を突き止め、激しく食ってかかる江。
だが、怒る彼女を止めに入ったのは、ほかならぬ茶々だった。
見れば、茶々と秀吉は、心通じ合っている様子。
江は深く傷つき、以降、茶々と口もきかなくなってしまう。
しあわせが製造ラインからポトリ 清水すみれ
しばらくしたある日、初(水川あさみ)が大坂城にやってきた。
茶々からの文で、事態を知った彼女は、
2人を仲直りさせるのは、
「自分しかいない」と、使命感に燃えていて、
再会するやいなや江の説得にかかる。
そして最後には、半ば強引に江を連れ出し、
茶々の前へと座らせた。
いもうとの影に咲いてる吾亦紅 八上桐子
実はこのとき、江はもう、茶々を許していい気持ちになっていた。
不条理に思える彼女の心変わりも、
竜子(鈴木砂羽)や初といった年上の女性たちは、
穏やかに受け止めている。
本当は姉を慕っている自分が、いつまでもこだわるのはよくない。
そう思い始めてていた。
俯瞰してみれば些細なことばかり 早泉早人
行幸のあと、秀吉は、家康(北大路欣也)を茶室に招く。
そこで秀吉は、茶々のことを嬉々として語り、
一転して、天下人とは思えないほどの無邪気さを見せる。
家康の際どい嫌みも、気にせずにのろける、
浮かれぶりであった。
いけない人ねいつも尻尾を振っている 酒井かがり
そんな調子の秀吉から最初に、茶々とのいきさつを聞いたのは、
正妻である北政所(大竹しのぶ)だ。
夫の茶々に対する気持ちを知っていた彼女は、
苦々しく思いながらも、2人の関係を受け入れる。
だがやがて、心の広い北政所ですら、心乱されるときが訪れ・・・。
そして、久しぶりに対面した茶々とお江が、
ようやく和解に至るかと思われたそのとき、
茶々の口から、衝撃的な事実が明かされる・・・。
アレンジが乱れたままの春の音符 北原照子
「茶々の本心」
初が京極高次に嫁いでまもなく、茶々は秀吉の側室になった。
[4回]