忍者ブログ
川柳的逍遥 人の世の一家言
[111] [110] [109] [108] [107] [106] [105] [104] [103] [102] [99]

時を吸い尽くす紫色の蛭  井上一筒

b2ccee6f.jpeg

     清 洲 城

「清洲会議のちょっとした史実」

清洲会議は事実上、柴田勝家羽柴秀吉の対決となった。

柴田勝家は信長の父・信秀の代からの重臣である。

その一方、秀吉がかなり身分が低かったのは、衆知の通り。

しかし、経歴以上にこの二人は、

性格的にもまったく合わなかった。

ライバルはおヘソの裏に棲んでいる  小谷小雪

天正4年(1576)8月、柴田勝家を総大将とする”加賀平定の陣”で、

秀吉は勝家といさかいを起こし、

信長に無断で戦線を離脱してしまう。

あの信長の直命を蹴ってまで、秀吉がなぜそこまでしたのかは不明だが、

「死んでも勝家の下にはいたくない」

と、思うほどの関係になっていた。

何事も斜めに読んで平のまま  西内朋月

清洲会議では、まず、

「信忠の後継者を誰にするか?」 が話し合われた。

先に述べたように、次男・信雄は、もともと人望がなく、

さらに光秀の討伐にあたっても、功がなかった。

さらに、理由なく安土城に放火するという失態を犯し、

まず外された。

引き潮がさらっていった桐の下駄  嶋澤喜八郎

その一方で、三男の信孝は、光秀討伐にも功があった。

勝家は、秀吉に対抗してというよりも、

「織田家が安泰であればよい」

と言った、消極的な理由で、信孝を推した。

これに対して、秀吉はかなり強引だった。

さよならの形に紐が絞められる  谷垣郁郎

30160728.jpeg

当時わずか3歳の信忠の子・三法師(秀信)を織田の後継者にして、

秀吉が、「その後見人になる」 と主張したのだ。

もちろん三法師に譲るのは、”織田の名跡だけ”。

織田の遺領の実権は、秀吉が握ることになる。

勝家が秀吉に対して、激怒するのも当然であった。

片頬に笑み乗っ取りは丸らしい  高原まさし

ただ秀吉も勝家の反応が、

「織田の家臣団全体に、広がるかもしれない」

と考えたのだろう。

勝家に、二つの妥協案を提示している。

一つは、秀吉の所領である北近江長浜を勝家に渡すこと。

これにより、雪に閉ざされ勝ちな北陸の地から、

勝家は、秀吉を監視しやすくなる。

横道へそれるローマ字の弁解  山口ろっぱ

もう一つは、お江たち三姉妹と、お市の身柄を勝家に渡すことであった。

お江たち三姉妹は、浅井の子であると同時に、

織田の血を引く重要な存在であった。

光秀討伐にあたって、柴田勝家は、まったくなにも働いていない。

にもかかわらず、

秀吉がここまで申し出るのは、かなりの譲歩であり、

勝家としても、妥協できるぎりぎりの線だったと言えるだろう。

先輩の猫に子猫がごあいさつ  末盛ひでみ

c2f3df99.jpeg

   三法師丸

『ドラマの展開・「織田家の跡目相続」』

天正10(1581)年6月半ば。

山崎の戦で光秀(市川正親)が自刃したことで、騒動は一段落し、

市(鈴木保奈美)と三姉妹は、そのまま尾張の清洲城で過ごしていた。

市たちの関心事は、織田家の行く末だった。

跡取りとしては、信長の嫡男・信忠が亡くなったことで、

次男・信雄(山崎裕太)と、三男・信孝(金井勇太)のどちらが継ぐかが焦点だった。

芯のない色鉛筆で夢を描く  前田咲二

一方、信長の敵を討った秀吉(岸谷五朗)は、

織田家中における存在感を一気に高め、気分上々。

信長の茶頭だった宗易(石坂浩二)を、新たに自分の茶頭に迎え、

彼がたてた茶を楽しみながら、

さらなる影響力拡大をもくろんで、策を練っていた。

ザラザラと流れる私のなかの音  河村啓子

631577b0.jpeg

いわゆる跡継ぎのノミネートは、表向きのことで、

実際には、筆頭家老の柴田勝家と、

山崎の戦いで、明智を破った秀吉の戦いだった。

勢いでは秀吉だが、

「勝家が信孝を担いで決まるだろう」

というのが、大方の予想だった。

しかし、秀吉の機転の良さを熟知している家康(北大路欣也)は、

「秀吉が何かアッと驚くような裏技を用意しているのではないか」

と感じていた。

水面下天狗の鼻を折る話  下田幸子

やがて、清洲城で跡継ぎを決めるための評定の日が来た。 

江(上野樹里)は、誰が伯父上の跡を継ぐのか興味津々で、

こっそりと覗きにいく。

その途中で、おね(大竹しのぶ)に会う。

久しぶりの再会だった。

おねは、男児を連れていた。

江はおねと秀吉の子供かと思ったが、そうではないらしい。

秀吉が連れて来た子供で、素性はまったく、知らされていないらしかった。

ただ、秀吉は「ほうし様」と呼んでいるという。

ポーカーフェイスで躱す怪しい雲の向き 池田はるみ  

77026717.jpeg     

そこに秀吉が戻ってきた。

秀吉は、江と男児が一緒にいることに気付いて慌てる。

江は何処の子か聞いてみると、秀吉は、

「親戚の子で、戦で身寄りがなくなったので引き取ったのだ」

と、その場を取り繕う。

だが、その表情から、嘘をついていることは明らかだった。

雑魚なりに心に描いてきたビジョン  木村徑子

それから数日過ぎて、天正10年6月27日。

清洲城で、織田家の跡継ぎを決める評定が開かれた。

筆頭家老の柴田勝家は、早速三男の信孝を推した。

勝家  「お二人のうち、長幼の序からすれば、次男の信雄様となろうが、

    それがしは、あえて信孝様をご推挙申し上げたい。

    わけは他でもない。

    お屋形様の弔い合戦となった明智討伐に、信孝様が加わっておられたゆえである」

その勝家の言には、誰も異議を唱えるものはなかった。

静寂のひととき金柑が熟れる  菅野泰行

f7689aab.jpeg

もう信孝で決まりだと誰もが思ったとき、突然秀吉が立ち上がる。

秀吉  「待たれよ、柴田殿!」

勝家  「羽柴殿は異論でもおありか?」

秀吉 「 いやいや、どなたかを、お忘れではないかと思いましてなあ」

勝家  「どなたかとは?」

秀吉  「我らが主君たる織田信長様のお世継ぎともなれば、やはり筋目を通さぬわけには・・」

勝家  「筋目?  筋目とはいかなる意味じゃ?」

秀吉  「後継には嫡流をもってすべきかと」

勝家  「嫡流?」

秀吉  「一家の長男、そのまた長男と連なるお方のことにて。

         ゆえに推挙致しきお方はただお一人。

    お屋形様のご嫡男にして、本能寺の折、共に亡くなりし、

         ご長男信忠様のご嫡子にござる」

召し取った音出し閉じる改札機  小川しんじ

fbc87fc7.jpeg

そう言うと襖を開けると、

先ほどの男児が入ってきて、秀吉に抱きつく。

秀吉  「一同、頭が高い!

         こちらにおわすは、畏れ多くも織田信長公のご嫡孫、三法師様にあらせられるぞ!」

その言葉に場内の人々は、一斉に平伏してしまう。

その瞬間、後継は、三法師で決まった。

未来図へわがまま色を足している  浜田さつき

部屋に戻った秀吉は、全員をまんまと出し抜いたと大得意。

それには、妻のおねや、母のなかも知らなかったとはいえ、

加勢したことになり、あまりいい顔はしていなかった。

秀吉  「わしは織田家のために、やっておるのじゃ。

     ・・・いかなる形であれ、このわしが支えなんだら、

     他の大名衆が寄ってたかって、織田家を裸にひん剥いてしまうではないか」

おね  「わたしには難しいことはわかりませぬが、ひとつだけ、分ってることがございます」

秀吉  「な、なんじゃ」

おね  「猿が天下人になるなど、聞いたことがございません」

秀吉  「やかましい!」

たくらみの罠へ我が身も落ちて行く  森 廣子

bd672aba.jpeg

その頃、秀吉に出し抜かれた形で、家督相続を逃がした信孝が、

市の部屋を訪れていた。

信孝は、市に折入って話があると言う。

  「母は、嫁ぐことにした」

  「ええーっ!」

茶々  「お、お相手は、どなたなのでしょうか?」

信孝  「それはわしから言おう。柴田修理亮勝家である」

それは三姉妹にとっては、思いもよらぬ名前だった。

捕まえた熊の哀しい顔を見よ  新家完司

7c6fb49c.jpeg

勝家は、市とは年が離れすぎており、

さらに見た目がさつで、秀吉と変わらないぐらいの醜男だったからだ。

とても市と釣り合うとは思えなかった。

勿論、3人とも大反対だった。

  「柴田殿をお好きなのでしょうか?」

 「(吐き捨てる)そんなわけがあるまい」

 「好きでもないのに嫁ぐのですか?」

市 「それは違う」

茶々  「違う、とは・・・・?」

市  「私は柴田殿を猿に勝たせたい。 ゆえに妻となる。

     ・・・誰かの思惑に縛られ、操られて動くのでもない。

    母は武将の心で嫁ぐ。そう申してもよいのかもしれぬ」

その言葉は、以前に浅井家に嫁ぐときに言った言葉でもあった。

夫婦の幸せどんな色ですか  前田紀雄

c261dca4.jpeg

一方、市の婚礼話を聞いた秀吉は驚いていた。

そして、勝家に対して怒りを露にした。

秀吉  「織田家を危うくするのは、この秀吉じゃと?

         それを防げるのは勝家だけである・・・そしてもっと言うならば、

         お屋形様の妹君が嫁いだ先を、わしが攻めるはずがなかろうと?」

秀長  「兄者、ちっとは落ち着け!」

秀吉  「望み通りにしてやろうではないか

         ・・・わしが織田家を危うくする、そこをまことにしてくれようぞ・・・・!

         これはお屋形様の命じゃ。

         お屋形様が、わしをお試しになっておられるのじゃ・・・

        よくぞ明智を討った、しかし次は、天下をおぬしのものとすることができるか?!

        とな・・」

秀長  「て、て、天下じゃと?」

太陽に向かって羽の生えた下駄  くんじろう

4a831fbe.jpeg

秀吉 おのれ見ておれ勝家!

    おぬしを討ち滅ぼし、その首、お屋形様の墓前にそなえてみせようぞ・・・。

    天下取りはその次じゃ。見ておるがよい・・・・!」

秀長  (呆然と)天下・・・・取り・・・・」

決意の表情をする秀吉。

その頃、勝家は市の部屋を訪ねていた。

市と三姉妹の前で、小さくなり顔を真っ赤にしていた。

とても市の顔をまともに見れそうもまかったが、

市は背筋をまっすぐに、勝家を見据えていた。

三姉妹は、勝家に対して敵愾心を露にしていた・・・。

安定剤が寒い畳を転がって  森中惠美子

拍手[6回]

PR


Copyright (C) 2005-2006 SAMURAI-FACTORY ALL RIGHTS RESERVED.
忍者ブログ [PR]
カウンター



1日1回、応援のクリックをお願いします♪





プロフィール
HN:
茶助
性別:
非公開