川柳的逍遥 人の世の一家言
都大路追うていたのは陽炎か 柴田桂子
光源氏12歳 『源氏物語』には、主要な人物だけでも500人に余る人物の人間模様が描かれ
ている。試みにいえば、光源氏は、幼いころに母親(桐壺更衣)を亡くし、
祖母(北の方)とも死別して、ほとんど、孤児同然の立場で、桐壺帝のもとで 育てられた。宮中の艶やかな女性たちの中にあって、軽口を叩きながら華やか に振舞っておられる帝の姿だけを見て成長した光源氏は、夫と妻の情愛や親子 の情などを感得する機会を、持つことが出来なかった。(桐壺の第一巻) そのような成長過程をたどった場合、「どのような人物になるであろうか」と、
紫式部は、突き詰めて考えただろう。 その結果、紫式部は「自己中心的で自分以外の者は、あくまでも他人である」
としてしか見ることのできない、浮薄な人物像を光源氏のなかに見つめ------、 身勝手で、ウソをつくことを恥ずかしいとも思わない男性は、光源氏だけでは ない------世の中は「虚」なるもので満ち溢れていると、いうのである。 体内のさびしい炎売り歩く 田中博造
式部ー源氏物語に登場する主なキャスト
尼君、侍女らがいる僧都の家を外から垣間見る光源氏 「紫の上」
紫の上は、聡明ではあるが世間のことをよく知らない純情な少女であった。
光源氏によって二条院に連れ込まれ、いつのまにか、源氏の愛妻の立場に置か
れている。 母親を亡くし、父親に頼ることができない以上、源氏を頼りにする以外にない。
だから、源氏が須磨に退去した際には、必死になって留守を守ったし、源氏の 身の上を案じ続けた。だが、源氏にとって大事なことは、我が身である。 だから須磨への退去の理由について、紫の上に平気で「ウソ」をつくし、明石
で明石の君の側からみれば、裏切りである。 あらかじめ湯通しをする下心 河村啓子
自由に木に止まるスズメを見つめる紫の上 紫の上は、身勝手な光源氏に振り回され続けた。
このような不誠実な男とともにあることが、つくづく嫌になった。
「今はもう、このようなありきたりの普通の生活でなく、仏様にお仕えして
過ごしたいと思います。この世の中は、およそ、このようなものだという ことを、よく見たという気持ちになる年齢になりました」 しかし、光源氏は、紫の上の出家を許そうとしない。
この後、病身の紫の上は、死ぬ際には「源氏と決別しよう、その上で死のう」
と決意した、自らの死の準備をする。
そして最終的に、その意志を貫いて、紫の上は、光源氏と決別して死んだ。
しがらみがやっと切れたか流れ星 靏田寿子
『焔』 (上村松園画・東京国立博物館所蔵) まひろが書く物語に夢中になりつつある一条天皇が、
「白い夕顔の咲く家の女は、なぜ死ななければならなかったのだ?」と聞き、
まひろが「生霊の仕業にございます」。と答えると、一条帝は 「光る君の夢に現れた女が、取りついたのか?」
と少し怖がりながら興味津々。 まひろは、
「誰かがその心持ちの苦しさゆえに、生霊になったのやもしれませぬ」
と語り、今後、源氏物語おなじみの「生霊」が登場する伏線のような会話だった
「六条御息所」
『源氏物語』には、数多くの女性たちが登場する。
その多くは、悩み苦しみ、悶えながら生き、そして死んでいった。
その中で、最も無残に生き、無残に死んだのは六条御息所である。
御息所は、前の東宮妃で、美貌と教養を備えた人であった。
しかし、同時に自分は、男性から粗末に扱われるはずがないという「うぬぼれ」
の心と、自分が世間から、どのように見られているかを気にする「みえ」の心を 備えた人でもあった。
あれほど熱心に言い寄った光源氏が、一転して冷たくなるという現実を「うぬぼ
れ」の心は、冷静に受け入れることを拒否する。 また、源氏が冷たくなったことが世間に知られて、噂の種になったり同情や嘲笑
の対象になったりすることを「みえ」の心は許さない。 物の怪になった六条御息所 御息所は、亡くなった後、源氏の前に物の怪となって姿を現わす。
そして、娘である秋好中宮(あきこのむ)に、次のように伝えてほしいと、
源氏に頼む。 「宮仕えしている間、決してほかの人と競ったり、妬んだり、するような気を
起こしてはなりません」 御息所は、生前、自らの「人ときしろひそねむ心」(人と競ったり、妬んだり
する心)のゆえに、苦しみつづけた人である。 その人の物の怪に、このように言わせる紫式部のイタズラ心には、苦笑をして しまうが、いずれにせよ、「人と競ったり、妬んだりする心」は「うぬぼれ」 の心及び「みえ」の心と、表裏の関係にある。 女性の生き方として「うぬぼれ」「みえ」の心は、女性の目を曇らせ、冷静な 判断をできなくするものであると、紫式部はいうのである。 振りむくと妙ちきりんな過去の悔い 森井克子
桐 壺 更 衣
「桐壺更衣」 更衣は光源氏の母。桐壺帝の愛を一身に受け、光源氏を産むが、後宮の女性た
ちの嫉妬と嫌がらせに苦しみ、その心労から病死している。 もう一人、悲惨な人生を生き、死んだ人は、藤壺である。
この藤壺のドラマチックなストーリーは、後のページで登場します。
鼻歌で出かけて御詠歌で帰る 森田律子
母桐壺更衣そっくりの藤壺の側を離れない10歳の光源氏 「藤壺女御」
12歳の元服を迎える頃、光源氏は決して許されることのない恋心を覚えた。
父帝のもとに入内した藤壺女御である。
3歳という幼さで死に別れた美しく優しい母、桐壺更衣によく似た人だった。
やがて源氏の初恋の女性となり、ついには、不義の子をなすまでの深い関係を
結んだのは11歳のときだった。その結果、藤壺は冷泉帝を産む。(17歳)
「葵の上」
光源氏の正妻。光源氏の後見役でもあった左大臣の娘であったが、年下の源氏
との結婚は、愛の薄いものだった。源氏との間に息子の夕霧をもうけるが、 物の怪に苦しめられ出産後急逝する。(16歳 )
水仙が色とりどりの庭に咲き 大橋恒雄
「空蝉」
受領の妻という低い身分で、若くも美人でもなかった。
人妻でありながら、契りを結んだことを恥じ、ある夜、源氏の前から袿(うち
き)を残して逃げたので、空蝉と呼ばれた。(17歳) 「軒端荻」(のきばのおぎ)
空蝉の継娘。
空蝉とともに寝ているところに源氏が忍び、逃げ出した空蝉に代わって源氏に 口説かれ、契りを結ぶ。(17歳) サイダーのゲップが止まぬスナイパー きゅういち
葵の上と六条御息所の牛車の鉢合わせ 「六条御息所」
前皇太子の未亡人で、六条の館に住むところから六条と呼ばれる。
6歳年上の身分も気位も高い恋人。葵の上との車争い、生霊となって葵の上に
憑りつく。(17歳) 夕顔を訪れる頭の中将
「夕顔」 頭中将の元恋人。
隠れ住んでいた住まいの夕顔の花が縁で、源氏がお忍びで通うちに、しかし、 源氏が、その素性を明かしたその夜に変死を遂げる薄幸の人。(17歳) 幸せは手のひら大がちょうど良い 宇都満知子
「朝顔の姫君」
光源氏とは従姉妹にあたる姫で、六条御息所の二の舞になるまいと、源氏の
求愛を拒み続けたにもかかわらず、源氏に「思慮深く優しい」といわれ続け た女性。(17歳) 「紫の上」
藤壺女御の姪。幼くして源氏の元に引き取られ、理想の女性に養育される。
子供にこそ恵まれなかったが、源氏との愛は深く、彼女の死後、源氏は出家
を決意する。(18歳)
噛む程にほんのり甘くなる言葉 津田照子
筝を奏でる末摘花を覗き見る源氏と頭の中将 「末摘花」 故常陸宮の娘。
源氏は、琴の名手との噂に心惹かれて、その元に通うが、古めかしいばかりの うえに、赤鼻で不器量だった。しかし、その一途さに打たれ、源氏は晩年まで 面倒を見る。(18歳) 「源典侍」(げんのないしのすけ)
家柄もよく才気もあり、60歳近くなるのに色香衰えずの女性。
源氏はさほどの気はなかったが、頭中将と張り合って言い寄る。(19歳)
ばあちゃんにピンクの髭が生えてきた 平井美智子
「朧月夜」
右大臣の六の君。姉は、源氏の母・桐壺更衣を憎み通した弘微殿女御である。
源氏の異母兄・朱雀帝のもとに入内する身でありながら、源氏と恋に落ちる。 政敵・右大臣の娘・朧月夜の君と関係を結んだことから、朱雀帝への謀反を
疑われ、須磨へ追い払われる不遇の時を迎え破目になる。
姉は、源氏の母・桐壺更衣を憎み通した弘微殿女御である。(20歳)
光源氏と花散里 「花散里」 桐壺帝の女御のひとり。麗景殿女御の妹。
誠実な人柄で、熱い恋の相手ではないが、最後まで源氏の元に暮らす。
夕霧の養育や玉鬘の教育をまかされ、紫の上とも仲がよかった。(25歳)
「明石の君」
明石の入道の一人娘で、明石に退去中の源氏と結ばれる。
源氏の帰京後、娘(のちの明石の中宮)を産む。(27歳)
満開で値段を下げていく花屋 奥山節子
可愛い息子夕霧を抱く光源氏 「光源氏は おっさんになった」
「夕霧」
光源氏と葵の上との間に生まれた子。
生まれてすぐに葵の上が他界したため、祖母(葵の母)の元で育てられる。
源氏とは違って、真面目な性格。幼馴染の雲居雁を妻として迎える。
「雲居雁」
頭の中将の娘で、後に夕霧の妻となる。
「柏木」
頭中将の息子で、いとこの夕霧とは仲よし。
源氏の正室である女三の宮を偶然垣間見て一目惚れし、懐妊させてしまう。
女三の宮との関係が、光源氏にばれて嫌味を言われ、恐怖のあまり体を壊し
この世を去る。 「冷泉帝」
光源氏と藤壺が密通して出来た子で、光源氏そっくり。
表向きは桐壺帝の子として育ち、のちに帝になる。
母である藤壺がなくなった後に、自分が不義の子であることを知り苦しむ。
「女三ノ宮」
葵の上に代わる源氏の正妻。朱雀院の第三皇女。
幼くして降嫁した皇女と源氏の間には、愛が深まらず、女三ノ宮は、柏木と
密通、不義の子。薫の誕生という悲劇をもたらす。 ジェンダーの波にクラゲが漂って 村山浩吉
「明石中宮」
匂宮の母。光源氏の長女で、母は明石の方。紫の上の養女となる。 「玉鬘」(たまかずら)
頭中将との間にできた夕顔の忘れ形見。
母と死別後、筑紫で成長。夕顔の面影を残し美しい娘に成長し、上京後は源氏
の庇護を受け、その美しさに、多くの貴公子から求婚されるが、武骨な髭黒の 右大将に力づくで妻にされてしまう。(35歳) 冷泉帝の中宮の座を巡り、弘徽殿大后側と梅壺側絵合わせのやり取り 「梅壺女御」
六条御息所の娘。亡きあと源氏が養子として引き取った。
冷泉帝に入内し梅壺女御となる。絵が得意。
見てごらん斜め後ろの影法師 徳山泰子
「光源氏は爺さんになった」
「薫」
光源氏と女三宮の間の子(父親は、実は光源氏ではなく柏木)。
宇治十帖編の主役。生まれつきよい芳香を放つことからこの名で呼ばれた。
「匂宮」(におうのみや)
明石の中宮(源氏の娘)と帝の間に生まれた第三皇子。源氏の外孫。
薫とともに育った幼馴染みで、薫をライバル視している。
名ばかりの立秋として蕎麦の花 前中知栄
いよいよ容態の悪くなった柏木を夕霧が見舞う。 同じような過ちを犯した源氏と柏木ですが、桐壺院の愛を疑うことのない 柏木 柏木の一周忌が巡ってきた。
源氏は、薫〔源氏の妻女三宮と柏木の子〕の代わりに丁重な布施を贈った。
裏の事情を知らない柏木の父致仕太政大臣〔かつての頭中将〕はそれに感謝し、
悲しみを新たにする。 女三宮の出家、落葉の宮の夫の死と、相次ぐ姫宮たちの不幸を嘆く朱雀院から、
女三宮のところに筍が贈られてきた。 それを生えかけた歯でかじる薫を抱きながら、源氏は今までの人生を思い、
また薫の幼いながらも、高貴な面差に注目するのであった。
秋の夕暮れ、夕霧は、柏木の未亡人落葉の宮を見舞った。
その帰途、落葉の宮の母一条御息所は、柏木の形見の横笛を夕霧に贈る。
その夜の夢枕に柏木が立ち、笛を伝えたい人は、他にあると夕霧に語る。
後日、源氏のもとを訪れた夕霧は、明石の女御の御子たちと無心に遊ぶ
薫に、柏木の面影を見る。そして源氏に柏木の遺言と夢の話を伝えるが、
源氏は話をそらし「横笛」を預かるとだけ言うのだった。
樹木葬近くで遠い物語 下谷憲子 「桐壺」から「藤裏葉」までが源氏物語33帖・第1部です。 ドラマの中で紫式部は「33巻」までできましたと 語っていましたね。 その33巻目が「藤葉裏」です。 「藤葉裏」
"春日さす藤の裏葉のうらとけて 君し思はば我も頼まむ "
四月の初め、内大臣(頭の中将)は、「藤花の宴」に夕霧の若君を招かれ、
雲居雁の姫君との結婚をお許しになった。
六年ぶりの再会を果たした二人は、ようやく結ばれます。
四月の二十日過ぎには、明石の姫さまが、春宮のもとにご入内なさって、
これを機に紫の上は、その後見役を実母の明石の君とお代わりになった。
八年ぶりの姫さまとのご対面に涙を流す実母の明石の君と、これまでその成長
を見守ってきた紫の上。 源氏の大殿を支え抜いてきた、美しくも誇り高い二人の女性の、これが初めて のご対面でした。 鉢巻きをきりりのんびり最後尾 森井克子
「その他」
弘徽殿女御(こきでんのにょうご)
桐壺帝の妃。朱雀帝の母。桐壺帝が、第一皇子を産んだ自分よりも
桐壺の更衣を溺愛することに強く嫉妬して、桐壺をいじめた。
「冷泉帝」
桐壺帝と藤壺の宮の子と認知されるが、実は光源氏と藤壺の子。
藤壺の没後に出生の秘密を知り、帝位を源氏に譲ろうとするが断られる。
秋 好 中 宮
「秋好中宮」 六条御息所の娘。頭中将の娘(弘徽殿女御)を妃とする。
玉鬘に好意を抱くが妃にはできず、後に玉鬘の娘を寵愛する。
「頭中将(とうのちゅうじょう)」
左大臣家の息子であり、光源氏のいとこ、葵の上の兄。
光源氏にとっては親友であり、恋のライバルでもある。
「藤原惟光」(これみつ)
光源氏とは乳兄弟である。光源氏に誠実に仕え、
光源氏が最も信頼する家来である。
「藤典侍」(とうのないしのすけ)
惟光の娘、夕霧の妾。五節の舞姫をつとめたところ、
夕霧に見初められ、愛人となり、数人の子を出産する。
「髭黒の大将」
色黒の髭面であることから、髭黒の大将と呼ばれる。
玉鬘に恋焦がれ強引に結婚してしまう。今上帝の伯父。
本日の象のお風呂は右の脚 くんじろう
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