計り売りしておりますよ今日の空気 北原照子
高杉晋作と伊藤俊輔
「名付けの名人・高杉晋作ー登場」
『動けば雷電のごとく、発すれば風雨のごとし。
衆目駭然として、敢えて正視するものなし。
これ、我が東行高杉君に非ずや』
”一たび動けば雷電のごとく、発すれば風雨のごとし。
周りの者は、ただただ驚き、呆然とするばかりで、敢えて正視する者すらいない。
それこそ、我らが高杉さんのことだ”
同じ松下村塾の門下であった伊藤俊輔は、改名して伊藤博文となり、
馬関海峡(下関海峡)を通過したおり、同志として働いた高杉晋作を想い、
彼の人となりを、こう読んで、碑とした。
見つけてください私は此処にいるのです 春野ゆうこ
井上聞多
伊藤俊輔は井上聞多(馨)らと、馬関海峡で欧米列強の艦隊を相手に、
一戦を交えてきた相手である。
時代の申し子というか、維新のために、
それぞれの才を開かせて、寄せ集めた時代が幕末であった。
高杉晋作の場合は、奇知があるというか、
出くわした曲面に対し、瞬間的に策を思いつき、
その実行が、またまた要を得て効をなすのであった。
≪奇兵隊という組織の編成がそれを表す≫
セピア色剥がすと熱を帯びてくる 谷垣郁郎
高杉晋作
≪高杉晋作は、小柄で本人もそれを気にしていたため、
立って写っている写真はない。
しかし小柄ではあったが、何故か長刀を好んで愛用していた。
そのため歩く姿は、刀を引きずって見えたという≫
”高杉いわく”
「兵には正と奇とがあり、戦には虚と実とがある。
正兵は正々堂々として敵に対し、実をもって実にあたればよい。
藩の部隊がまさに、正兵であろう。
しかるに寡兵(小兵)をもって敵の大兵の虚を衝き、神出鬼没の兵があってもよい。
私が創設する部隊は、常に奇道をもって相手を悩まし、
勝利を制するのが目的である。
よって、この部隊を”奇兵隊”と名付ける」 となった。
中七に八分休符が利いている 井丸昌紀
しかし、長州藩の正兵はすでにある。
高杉は、義や徳を重んじる男でもある。
藩主にお伺いを立てなければならない。
「そうせい公」の異名をもつ、
長州藩主・毛利敬親(もうりたかちか)に、申し立てたところ、
「緊急時だから、そうせい」 と、快諾がおりたのである。
高杉のこうした考えに、反感をもつ長州藩士も多かった。
追いかけられる、命を狙われるで、
地元・萩で奇兵隊を創設するわけには行かない。
ビーナスの鼻はめがねを掛けにくい 井上一筒
奇兵隊は、農民・僧侶・下級武士・商人の寄せ集め部隊だった。
そんなわけで、高杉により、馬関で結成された「騎兵隊」は、
和洋折衷の軍服で、
隊士の意識と機動力とを高めるとともに、
理解しやすい隊則で組織をまとめた。
例えば、
「農道で牛や馬に出会えば、奇兵隊士は道を譲って、通り抜けるのを待て」
とか、
「農家に押し入って動物とか物品を奪ってはいけない」
など、隊則は理解しやすい内容をもって、
組織の集中力を強化することに、成功したのである。
羞恥心なくせば一気にスターダム ふじのひろし
「攻山寺」・高杉晋作銅像
雪の降りしきる頃、
馬関の「攻山寺」で農民・僧侶・下級武士・商人など多様な人材を集めて、
奇兵隊は、出陣を決行する。
馬関を通過するたびに、
伊藤博文は、こうした高杉晋作のエピソードを思い出した。
”博文”と命名したのも高杉である。
≪博文の2文字には、日本の文化をあまねく、広めてほしいとの、
高杉が伊藤に託する熱い願いが込められていた≫
実印を男の顔で押している 多良間典男
毛利敬親
「蛇足」
長州藩主・毛利敬親が、土佐の山内容堂のように、
幕末期において、あまり表に名前が出てこないのは、
「そうせい侯」 と呼ばれるように、家臣の意見に対して、
いつも、「うん、そうせい」 と言い、
家臣の申し出にほとんど意義を挟まず、
家臣の好きなように、藩政をまかせたためである。
そのため、藩士からは慕われ人気があった。
やる気がなかったのかと言えば、そうかもしれないが、
家柄や年齢にこだわらずに、
下級武士の息子である吉田松陰の才を見い出し、
その門下から、高杉晋作など数々の優秀な人材を、
輩出させた影の功績もある。
字引より軽薄がよい電子辞書 八木 勲
『龍馬伝』・第29回-「新天地、長崎」 あらすじ
薩摩藩の西郷吉之助(高橋克実)と小松帯刀(滝藤賢一)に、
身を預けた龍馬(福山雅治)たち、脱藩浪士は、
大坂から薩摩へ航行中、長崎に立ち寄る。
そして豪商・小曽根乾堂(本田博太郎)の屋敷に泊まることに。
西郷や小松は、龍馬たちに薩摩の船の、操船をさせようと考えていたが、
龍馬たちは特定の藩に頼らず、
龍馬、近藤長次郎(大泉洋)や沢村惣之丞(要潤)らは、
操船技術を生かすため、蒸気船を手に入れようと計画する。
折り返し点で傘一本買う 大槻和枝
そして龍馬らは、イギリス商人のトーマス・グラバー(ティム)を訪ねる。
惣之丞や陸奥陽之助(平岡祐太)が、英語で交渉するが、
グラバーは龍馬たちを信用せず、船は借りられなかった。
そこで龍馬たちは、
花街である、丸山の料亭・引田屋(ひけたや)に乗り込み、
商人相手に、船を借りようとする。
その引田屋では、
長州藩の高杉晋作(伊勢谷友介)や井上聞多(加藤虎ノ介)、
伊藤俊輔(尾上寛之)が、酒を飲んでいた。
高杉は、外国から武器を購入するため、
正体を隠して長崎に潜りこんでいたのだ。
なめくじの関節だろう鳴ったのは 東おさむ
高杉の部屋では、芸子のお元(蒼井優)が踊りを披露していた。
そこへ龍馬たちが入り込んでくる。
龍馬は、「自分たちを利用しないか」 と、高杉に売り込む。
するとそこへ、薩摩藩士たちが乗り込んでくる…。
豆腐のような煙のような明日です 徳永政二
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