ドーナツの穴が気休めばかり言う たむらあきこ
ポルトガル・宣教師たち
「龍馬とカステラ」
室町時代末期の元亀二年(1571年)、
開港したばかりの長崎港に、遥か遠く西欧から交易を求め、
初めてポルトガル人が上陸した。
「長崎のカステラ」は、
この時に、日本にその製法が、伝えられたと言われている。
70年間に渡るポルトガル人たちの長崎在住の中で、
カステラはやがて、その由来となる名前だけを残し、
日本型に、長崎で独自の進化を遂げていった。
今日もまた愛の形でパンを焼く 上野楽生
文明堂・「海援隊カステラ」
その長崎の地で、坂本龍馬は、カステラと出会う。
「こいつは美味いぜよ!」
と、口にほうばったに違いない。
そして、このうまいカステラを、「自分たちで作ろう」 と考えたのも間違いない。
というのは、
慶応3年(1867)に、龍馬らは長崎で組織した「海援隊」の日誌に、
”カステラ作りのレシピ”の記述が残っているからだ。
『カステイラ仕様 ・正味 ・玉子百目・うどん七十目・さとふ百目 、此ヲ合テヤク也 和蘭実』
とある。
うまい汁皆に吸わせてやってくれ 壷内半酔
「雄魂姓名録(ゆうこんせいめいろく)」
この海援隊の日誌のレシピを基に、
長崎市の老舗カステラ店「文明堂総本店」が、「海援隊カステラ」を再現。
現代のカステラより、きめが粗く、パサパサしているものの、
「香ばしく、素朴な味わいが、よみがえった」
と、懐かしい?・・・というような表現を聞く。
どちらにしろ評判は、上々のようである。
このカステラを齧れば、龍馬と、杯ならぬ、「ケーキを交わした仲」になる。
龍馬は、おりょうとの新婚旅行にカステラを持参し、
”手でちぎって食べた”
と、される文献もあることから、
「あえて切れ目は入れず、縦14センチ、横16センチのサイズのままで」
と、こだわっている商品だ。
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炭を使って焼いた昔の焼き釜
≪上下に炭を入れ、中に入れた水入りの缶で釜の温度を計った≫
「カステラの歴史をかじる」
昔のカステラ焼き風景昔の製法では、
ひと釜焼くのに、約1俵もの炭が必要だった。
先にも述べたが、一般的な説では、
16世紀の室町時代末期に、
ポルトガルの宣教師によって、長崎周辺に伝えられたとされる。
当初のカステラは、卵、小麦粉、砂糖で作ったシンプルなものであり、
ヨーロッパの菓子類としては、珍しく乳製品を用いないことから、
乳製品を生産、常用しない当時の日本にも、残ることができた。
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”松翁軒の歴史”よりカステラ作り
カステラの製造に重要なオーブンは、当時の日本には存在せず、
オーブンに代替する天火として、
「引き釜」という、炭火を用いる日本独自の装置が考案された。
江戸時代には、菓子、製造の盛んだった江戸・大坂を中心にカステラの日本化と、
カステラを焼くための、炭釜の改良が進められ、
江戸時代中期には、現在の長崎カステラの原型に近い物が作られている。
≪長崎カステラの特徴である、水飴の使用は、明治以降の西日本で始められた≫
これにより、現在のしっとりとした触感となった。
血糖値ケーキを見てもいけません 井上一筒
池内蔵太
「龍馬伝」・第30回-「龍馬の秘策」 あらすじ
長崎滞在の龍馬(福山雅治)たちは、船を借りることも出来ずに、
途方に暮れていた。
そこへ、土佐勤王党だった池内蔵太(桐谷健太)が訪ねて来る。
池は高杉晋作(伊勢谷友介)とともに、長崎に潜伏していたのだった。
龍馬は池に連れられて、高杉に会いにいく。
そこには、引田屋で出会った伊藤俊輔(尾上寛之)と井上聞多(加藤虎ノ介)もいた。
高杉は長州藩が幕府に従わず、戦いぬく覚悟であると語る。
この辺で所望しましょう起爆剤 西恵美子
龍馬が小曽根邸に戻ると、
長次郎(大泉洋)が、カステラ作りをして、金を稼ごうと提案する。
龍馬は、「カステラを長崎で売って良いか」
と長崎の豪商、大浦慶(余貴美子)や小曽根乾堂(本田博太郎)に相談する。
大浦慶は、龍馬たちに興味を覚え、カステラ作りに必要な金を貸す。
そして龍馬たちは、偶然引田屋の芸子のお元(蒼井優)と町で出会う。
お元は、長崎奉行・朝比奈昌広(石橋凌)に、情報を伝える隠密として、
働いているのだが、実はキリシタンだった。
道標をあなたに向けて生きている 八田灯子
「面白い町じゃのう、長崎は」
長崎を訪れた龍馬は、これまでに見たこともないような光景に、
目をみはる。
西洋や中国から来た異人たち、華やかで異国情緒あふれる町並み。
その中で、龍馬にもっとも大きな影響を与えたのは、
侍に媚びることなく、しかも、異国の商人と対等に渡り合う
長崎の豪商たちの姿だった。
商売への出資を願い出るため、豪商・小曽根乾堂(本田博太郎)を訪ねた折り、
小曽根は長崎の豪商たちと麻雀の真っ最中。
彼らは、互いに嫌みを言い合いながらも、同じ麻雀卓を囲んでいた。
一服の煙を吐いて街を見る 両澤行兵衛
麻雀に興じる、大浦慶と小曽根乾堂
異国の商人という脅威に対抗するため、
敵同士であっても、つながりは決して断たない。
そんな商人のしたたかさと、たくましさを見た龍馬は、ある途方もない
計画を思いつく。
西郷吉之助(高橋克実)に、長州と手を結んではと提案するのだ・・・。
朝敵である長州と結びつけば、薩摩も朝敵となるおそれもある。
はたして西郷が出す答えは…。
船底の空気は神の思し召し 吉田わたる
[5回]