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川柳的逍遥 人の世の一家言
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冬景色何処かに僕がいる筈だ  牧浦完次


第三部主な登場人物 (拡大してご覧下さい)

おぼつかな 誰に問わまし いかにして 初も果も 知らぬわが身ぞ

はっきりわからないことだ。誰にどう尋ねたらよぴのだろう。
最初も終わりもわからない、自分の身の上よ。

「巻の42 【匂宮】」

光源氏の逝去以降、それほど世間を魅了する人がいなかった。

今上帝明石中宮の子で紫の上に愛され育てられた「匂宮」と、

同じ六条院で成長した朱雀院の女三宮の子・「薫」の二人が、

それぞれ美貌の評判が高く、貴公子として育ってはいるが

源氏に比べると、まばゆいほどの美男というのでもない、が、

しかし世間には、この2人の貴公子に準じて見るほどの人もいない。

神様がくれた鏡を見てごらん  河村啓子

は、表向きは源氏が父親であるが、実は柏木の不義の子である。

一方の匂宮は、今上帝と明石中宮の三男、帝にも后にもお愛され、

宮中に住居の御殿も持たせてもらっているが、幼い頃、

紫の上に二条院に
住むように言われたこともあってか、

気楽な二条院にいることが多い。


元服の後は兵部卿宮と呼ばれた。

本の眉に小さな目が二つ  筒井祥文

薫は、成長していくにつれ、子ども心にかすかに小耳に挟んでいた

自分の
素性への疑問が大きくなっていく。

「母の三宮はなぜ若くして出家したのだろうか、

   どのような御道心でからか、
急に出家されたのだろう。


   不本意な過ちがもとで、きっと世の中が嫌になることがあったのだろう。

   母に真相を聞くことは、とてもできない。

  後を追うようにして亡くなった柏木という人は・・・?」

隠しておかなければならないことのために、

事情を語ってくれる人がいない
と、薫は推量するが、

生まれ変わってでも真実に出会いたい気持ちが勝ち、


眩しいほど華やかな身辺も気に染まず、自然とひっこみ思案になった。

逆行線のあたりでちょっと泣いてみる  山本昌乃

馨には、この世のものとも思われぬ高尚な香を、身体に備わっている。

遠くにいてさえこの人の追い風は、人を驚かせるほどだった。

多くは、わざわざ香を焚いて、よい匂いをつけていたが、その必要がない。

怪しいほど放散する匂いに、忍び歩きをするのも、知人と接する時にも、

不自由なことになるので
薫は、薫香などは用いない。

庭の花の木もこの人の袖が触れると、春雨後の枝の雫もすがしく香った。

秋の野のだれのものでもない藤袴は、この人が通ればもとの香が懐かしい

香に変わるのだった。

さりげなく薄桃色である尻尾  合田瑠美子

薫は19歳で、帝も后にも愛され三位の参議に昇進し、中将も兼ねていた。

臣下としてこれ以上幸福な存在はないと見られるのだが、心の中には

父や母に対する不幸な認識が潜んでいて、楽天的にはなれない。

貴公子に共通な放縦な生活をするようなことも好まなかった。

すでに円熟に達した老成なふうの男であると 人からも見られていた。
       
自分ながらも予期せぬ恋の初めの路に踏み入るようなことが、

もしあっては、
宮のためにも、自身のためにもよろしくないと思い、

女性は遠ざけた。


独りは寂しい独りは素晴しい  上山堅坊

しかし、人に愛されるべく作られたような風采のある薫であったから、

かりそめの戯れを言いかけたにすぎない女からも、好意を持たれて、

やむなく情人関係になったような、愛人と認めていない相手も多くなり、

女のためには秘密にするほうがよいと、思い、すべて蔭のことにして、

薫の誘うままに女を三条の母宮の所で、女房勤めをさせるようにした。
       
冷淡な態度を始終見せられているのも苦痛ではあったが、

絶縁されるよりはよいと女たちは思って、

女房勤めをする身分でない人々も
薫とはかない関係を続けることで、

自らを慰めているのだが、
その姿を、

目にするだけでも情感を受けられる人であったから、


どの女も強いて自分をを欺くようにして、この境遇に満足していた。

失恋に効きそう水の一気飲み  青砥たかこ


  右・匂宮と大宮

一方、匂宮といえば、薫とは対照的に女性好きでおしゃれ。

祖父の源氏の性格を受け継いでいるようだ。

そして薫に対してライバル意識を持っている。

そのため自分もいい匂いをさせようと、特別にいろいろの優れた香を焚き

匂いをつけたりすることに熱心で、個々の花を愛でたりする風流の心は、

少しも、持ち合わせてはいなかった。

例によって、世間の人は、「匂う兵部卿、薫る中将」と、言い立てて、

良い娘がいる高貴な所々では、心をときめかし婿にと申し出てくる人もあった。

とびきりに化けております鏡の中  北原照子

こういうことで、夕霧の右大臣は大勢ある娘の中の1人は、匂宮へ、

1人は、薫に、
嫁がせたいという希望を持っていた。
                  とうのないしのすけ
雲井雁の生んだ娘たちよりも、藤典侍にできた六女は、

ことにすぐれて美しく、
性質も欠点のない女の子であった。

劣った母に生まれた子として、世間が軽蔑して見ることを惜しく思い、

女二宮がお子を授かれず、寂しい様子であるために、

夕霧は六の君を典侍の所から迎えて、宮二宮の養女に差し上げた。
       
「よい機会に二人の公子に姫君の気配をそれとなく示したなら、

   必ず熱心な求婚者になしうるであろう、すぐれた女の価値を知ることは、

   すぐれた男でなければできぬはずである] と、大臣は思い、

六の君を后の候補者というような大業な扱いをせず、

はなやかに人目を引くような派手な扱いをして、

彼らの心を惹くようにした。


待っている酒が真水に還るまで  雨森茂喜

源氏が亡くなって、六条院にいた人たちの生活も大きく変っていく。

源氏に仕えた夫人たちは、泣く泣くそれぞれの家へ帰り、

六条院の中は寂しく人も少なくなって廃れていく様に、

明石の中宮の嘆くのを見た、右大臣の夕霧は、

「昔の人の上で見ても、生きている時に心をこめて作り上げた家が、

   死後に顧みる者もないような廃邸になっていることは、

   栄枯盛衰を露骨に形にして見せている気がしてよろしくないものだから、

   せめて私一代だけは、六条院を荒らさないことにしたいと思う。

   近くの町が人通りも少なく、寂しくなるようなことはさせたくない」

と言い、
東の町へ落葉宮を移し、

雲居雁の邸と一夜置きに月十五日ずつ正しく分けて
泊るようにした。

そして南町には女一宮二宮(東宮の弟)が住み

花散里は遺産として与えられた東の院に住んだ。

もぐると見える一身上の都合  山口ろっぱ


   匂 宮

【辞典】 光源氏逝去のその後

この寛では、匂宮という、2人の人物を中心にストーリーを引っ張る。
それとは別に、源氏亡き後の主な登場人物たちが、どうなっているのかが、
細かく語られている。
主には、光源氏が住んでいた六条院に暮らしていた人たちにスポット。

紫の上がいた六条院の春の町には、今上帝と明石中宮の子・女一宮が入り、
夏の町には落葉宮、秋の町は変らず、秋好中宮の里邸、冬の町は明石の君
もともと夏の町にいた花散里は、二条東院を相続しそこに住むことになる。
そして尼になった女三宮は、六条院を出て三条の宮邸に移り、勤行に励む。
女三宮の息子である薫はたびたび、母の様子をうかがいにここに訪れている。
そして夕霧の長女は東宮妃になった。
さらに二番目の娘も、東宮の弟・二宮に
嫁いでいる。
藤典侍が生んだ美人と評判の高い六君という娘は、子どものいな
い落葉宮の
養女にして、いずれは薫か匂宮の妻として向かえてもらえるように
備える。

葛根湯を骨折に処方せり  くんじろう

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