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川柳的逍遥 人の世の一家言
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赤巻き紙青巻き紙だいだい色巻き紙  酒井かがり






名刀村雨丸試し斬りの図



八犬伝における名刀「村雨丸」とは?
寛正文明の頃(1460年代)武蔵国菅菰大塚の里に大塚番作一戌(ば
んさくかずもり)という浪人がいた。父の匠作三戌(しょうさくみつも
り)は、鎌倉官僚足利持氏の近習として結城合戦に参加したが、結城の
落城の時に、匠作は16歳の番作一戌に大塚に帰って母と姉の亀篠(か
めざさ)に孝養をつくすように諭し、その際、主君重代の佩刀(はいと
う)「村雨丸」を手渡し、これを守って足利持氏の子春王丸に無事に返
すように言う。村雨丸は、中心に露が滴っていて、人を斬っても血潮が
洗い流されるという名刀である。


こぼれ萩私に何ができるだろう  山本昌乃






   村雨丸託す


「紙芝居風ー八犬伝」 おしまい





   
  蟇六夫婦と額蔵        番作と亀篠
 
 
 

 
大塚番作が大塚村に戻ったとき、大塚家の家督は、姉の亀篠と蟇六の夫
婦に奪われており、番作は姓を犬塚と改めて隠棲した。その後、番作
手束(たつか)を娶り、生まれたのが信乃である。蟇六夫婦は、番作
持つ村雨丸を奪おうと画策し、信乃の飼い犬・与四郎が、管領家からの
御教書を破損したと言いがかりをつける。番作は自害することで信乃
救うとともに、足利家に将来、村雨丸を返還することを託して、逝く。


あちこちが軋みだしてる 雨どすか  北原照子





  
  犬塚志乃    犬川荘介


蟇六夫婦は村人の手前信乃を引き取ることとし、養女浜路の将来の婿と
することにした。蟇六夫婦は下男・額蔵信乃の監視にあてる。しかし、
ふとしたきっかけから信乃額蔵は、互いが同じ珠と痣を持っており
犬川荘助であることを知り、義兄弟の契りを結ぶ。2人は共に知ら
ないふりをながらともに文武の研鑽に励んでいた折、村人の糠助が死に
際、珠と痣を持つ息子(犬飼現八)がいたことを語り、梅の木に八房の
梅の実が生り、仁義八行の文字が浮かび上がったことから、同じ縁に連
なる義兄弟の存在を予感するのだった。


陰と陽リバーシブルの帽子です  合田瑠美子





  
   道中の志乃      火遁の術を使う道節
 
 

信乃18歳の夏、蟇六夫婦は、信乃滸我成氏(こがなりうじ)の許に
旅立つことを勧めた。村雨丸は蟇六夫婦の指示で、浪人網乾左母二郎
あぼしさもじろう)が偽物にすりかえていた。信乃を慕う浜路は旅立つ
前夜の信乃に情を訴えるも聞き容れられず、信乃は去ってしまう。蟇六
の内緒話から浜路は、網乾が本物の村雨丸を所持していると知る。浜路
はこれを取り返そうとして、網乾によって斬られてしまう。
そこに現われたのが浜路の異母兄・犬山道節だった。道節浜路の敵討
ちに網乾を殺害するが、浜路が本物の村雨丸を信乃に渡してほしいとの
頼みごとを振りっ切って、実家の煉馬家を滅ぼした関東管領・扇谷定正
への恨みを晴らすことの執念に走る。浜路は失意の中で息を引き取る。
信乃を栗橋まで送った荘助がここに行き合い、道節と斬り合いになるが、
道節は火遁の術を使って逃れた。斬り合いの中で二人の持つ珠が入れ替
わった。荘助は浜路を葬り、大塚への帰路を急ぐ。



回転がかかって思わぬ展開に  吉岡 民






  芳流閣の決闘





信乃は滸我(こが)で成氏に謁見したが、村雨丸が贋物であった事から
管領方の間者と疑われ襲われる。防戦しながら芳流閣の屋根に追い詰め
られた信乃を捕らえるべく、投獄されていた捕物の名人犬飼現八が登場
するが、二人は組み合ううちに利根川に転落。下総行徳へと流れついた
二人を助けたのは、旅籠・古那屋の主人古那屋文五兵衛とその子の犬田
小文吾であった。しかし古那屋に匿われてまもなく、信乃は破傷風によ
り瀕死の床に就く。また、信乃にかけられた追手によって、文五兵衛
拘引されてしまう。


こんぺいとう敵か味方か五月闇  菊池 京





 
  犬飼現八    犬江親兵衛


結果として、房八夫妻(沼藺山林房八ー沼藺は小文吾の妹)の犠牲で
信乃は救われることとなった。そしてたまたま古那屋に居合わせた丶大
によって、里見家の「伏姫の物語」が語られ、珠を持つ犬士たちがその
縁に連なることが告げられる。また、死んだと思われた大八が息を吹き
返して珠と痣を示し、大八もまた、犬士の一人であることが示される。
大八丶大によって犬江親兵衛の名を定められた。


一生に二度は乗れない霊柩車  櫻田秀夫





  
    五犬士         道節と4犬士





一方、荘助は大塚へ向かう途中陣代らによって襲われる。これを返り討
ちにするが、主人殺しの罪として濡れ衣を着せられて投獄され死罪を言
い渡される。神宮河原着までやって来ていた三犬士は、道節の郎党・
四郎からこのことを聞き、情報を集めて荘助を救うことを計画。まさに
荘助の処刑が行われようとする刑場を破り、荘助を救出する。追手をか
けられた四犬士の窮地を救ったのは、世四郎と子力二・尺八であった。
大塚志乃、犬川荘助、、犬田小文吾、犬江親兵衛と揃い四犬士は、世四
郎とゆかりのある音音が暮らす上野国荒芽山に向かう。
四犬士は途中、犬山道節が扇谷定正に仇討ちを仕掛けた騒ぎに巻き込ま
れながら、音音(実は道節の乳母、力二・尺八の母)が嫁たち(曳手
単節)と暮らす荒芽山の家にたどり着く。道節・世四郎もそれぞれここ
に合流。珠の因縁を知った道節は、村雨丸を信乃に返し、邪法である火
遁の術を捨てて、犬士の群れに加わる。道節が加わり5犬士が揃うが、
管領家の軍勢が襲撃し、犬士たちは離散を余儀なくされる。


お互いの隙間に入れる接続詞  みつ木もも花







  小文吾腕まくり


荒芽山から武蔵国に逃れた小文吾は、宿を貸した旅人を襲っていた盗賊
の並四郎を返り討ちにする。並四郎の妻・船虫は、小文吾に謝礼として、
千葉家の重宝であ尺八嵐山を渡したが、これは罠であった。船虫は石浜
城主・千葉家の眼代に小文吾を盗人として突き出すが、尺八を訝しいと
睨んだ小文吾がひそかに返していたために罠は不発に終わる。小文吾
千葉家の家老・馬加大記(まくわりだいき)に引き合わされるが、実は
大記こそがかつて船虫夫婦に嵐山を盗ませた黒幕であった。大記小文
の才覚を見抜き、自らの主家への謀反に加担するよう持ちかけるが断
られる。小文吾は警戒した大記によって城内に軟禁される。抑留はその
まま1年近く続いた。


厄介と関わる癖のある右手  中野六郎


その抑留の間に小文吾は老僕の口から、かつて大記が千葉家の重臣・
飯原胤度(あいはらたねのり)を排除して権力を掌握するために行った
策謀の話を耳にする。寛正6年(1465年)、大記は同僚の籠山逸東太
胤度を殺させ、逸東太も千葉家にいられないよう仕向けた上、粟飯原一
族を子女に至るまで皆殺しにしたのである。


神さんがくしゃみしてはる間に悪さ  居谷真理子





  
  犬坂毛野     犬田小文吾


石浜城下に女田楽師が連れ立って訪れたが、そのうちの一人である美貌
旦開野(あさけの)を馬加大記は留め置いた。旦開野大記小文吾
に送り込んだ暗殺者を仕留めて小文吾と語らい、いずれは夫婦となる約
束を交わす。実は旦開野は男であり、粟飯原胤度の遺児・犬坂毛野であ
った。毛野は仇と狙う大記を対牛楼で討ち果たす。正体を明かした毛野
小文吾は混乱に乗じて城を脱出するが、2人は川を渡ろうと試みるう
ちに離れ離れとなる。


別に淋しくはないの生き死にはひとり  靍田寿子


  
     雛衣        庚申塚手束
 
 
 
 
 
荒芽山の離散後、諸国を巡った現八は、文明12年(1480年)9月に下野
国網苧(あしお)を訪れ、庚申山山中に住まう妖猫の話を聞く。期せず
して庚申山に分け入った現八は妖猫と遭遇し、弓をもって妖猫の左目を
射る。現八が山頂の岩窟で会った亡霊は、赤岩一角を名乗り、自らを殺
した妖猫が赤岩一角に成り代わっていることを語り、妖猫を父と信じて
疑わない犬村角太郎(犬村大角)に真実を伝えるよう依頼する。また
大角現八と同じ因縁に連なることも告げる。山を降りた現八は、
麓の返璧(たまがえし)の里に大角の草庵を訪う。大角の妻である雛衣
の腹は懐妊の模様を示しており、身に覚えのない大角は、不義を疑って
雛衣を離縁、自らは返璧の庵に蟄居していたのであった。


指切りを信じ込んではいけません  竹内ゆみこ





   
  犬村大角      犬山道節



偽赤岩一角(妖猫)は、後妻に納まっていた船虫とともに大角を訪れ、
雛衣を復縁させた。これは偽一角が目の治療のために孕み子の肝とその
母の心臓とを要求するためのものであった。大角は孝心に迫られて窮し
たが、夫を救い自らの潔白を明かすために雛衣は割腹する。その腹中か
らは珠が飛び出して偽一角を撃った。以前、雛衣が病となった際、大角
は珠をひたした水を飲ませたのだが、雛衣は珠を誤飲してまい、その後
懐妊と見られる様子が現れたのであった。大角現八とともに正体を現
した妖猫を退治した。大角は妻の喪に服し、家財を処分して現八ととも
に犬士として故郷から旅立つ。


真っ直ぐな息吐く海に還るまで  太田のりこ



   浜路




荒芽山の後、諸国を巡った信乃は甲斐国を訪れていた。ここで志乃は、
武田家家臣の泡雪奈四郎に鉄砲で誤射されてトラブルとなるが、仲裁に
入った猿石村村長・四六城木工作(よろぎむくさく)の家に逗留するこ
とになる。降雪によって逗留は長引くが、木工作の家には浜路という名
前の養女がいた。ある夜、この浜路に大塚村の浜路の霊が乗り移り、信
に想いを伝える出来事があった。木工作の後妻である夏引(なびき)
らがその場に踏み込んで騒動となるが、信乃と語らった木工作は・さま
ざまな因縁に感じ入り、浜路信乃に嫁がせることを考える。





ポロっとこぼし本音をホンネらしくする  片山かずお






   浜路と浜路


夏引泡雪奈四郎と不倫の仲にあり、浜路を疎ましく思っていた。木工
作は奈四郎の許を訪ねて口論となり、逆上した奈四郎木工作を撃ち殺
す。夏引奈四郎はその罪を信乃にかぶせようと石禾(いさわ)の指月
院で謀議をめぐらすのであった。指月院は故あって丶大が住持を務め、
そこにたまたま荘助・道節らが立ち寄ったことから犬士の捜索拠点にな
っており、夏引奈四郎の謀議は、小坊主に立ち聞きされる。信乃
のことも知られ、道節の後にやって来た本物の眼代も、偽装工作の不
審に気づいて夏引らは拘引され、奈四郎は逃亡したが悪行の報いを受け
ることになる。指月院で丶大はまた、浜路は実は義実から家督を譲られ
里見義成の五女で、幼少時に大鷲に攫われた浜路姫であったというこ
とを伝える。


耳塚でまわれ右した風だ  河村啓子






  不忍池にて




現八、大角、信乃、道節の四犬士は、武蔵国穂北荘で邂逅する。穂北荘
は、結城合戦の残党や豊島家の遺臣など、管領家を快く思わない郷士た
ちの自治の里であった。当初は盗賊と間違えられるという出会い方をし
た犬士たちと穂北荘であるが、伏姫神の加護もあって誤解は解け、犬士
たちはこの地を新たな拠点とする。現八大角はいったん指月院に行き、
荘助・小文吾と合流することになった。


余生には無用な過去を破り捨て  松浦英夫





  道節 定正を刺す


そのころ毛野は物四郎と名乗り湯島天神で放下僧となっていた。扇谷定
夫人蟹目前(かなめのまえ)の猿を救ったことから、毛野は蟹目前お
よび扇谷家の忠臣・河鯉守如の知遇を得る。力量を見定められた毛野は、
蟹目前河鯉守如から奸臣・竜山免太夫の殺害を依頼される。竜山免太
夫こそは、毛野の仇・籠山逸東太であった。翌日、小田原北条家に使節
として派遣される籠山を襲撃する計画が立てられるが、これを立ち聞き
した道節は毛野の仇討ちに乗じ、穂北郷士たちとともに挙兵することを
計画する。その夜、六犬士は司馬浜に結集するが、この場所は船虫が辻
君をしながら強盗殺人を行う場所であった。犬士たちとさまざまな悪因
縁を持つこの悪女は、出陣の門出として牛の角で誅戮された。
毛野が籠山を討って本懐を遂げたころ、信乃は扇谷家の本城である五十
子城を攻め落とし、道節は出陣した定正の軍勢を打ち破る。


生き血生き肝脳みそすする  井上一筒






    蟇田素藤





里見家に従属していた館山城主蟇田素藤(ひきたもとふじ)は、盗賊の
倅から幸運に恵まれて一城の主に成り上がった人物である。妙椿(みょ
うちん)の幻術によって、浜路姫の姿を見た素藤は、浜路姫に恋慕して
婚姻を願うも、義成に断られる。妙椿の助力を得た素藤は、里見家の嫡
男・義通を人質にとり、里見家に反旗を翻した。里見の軍勢は、人質と
妖術に悩まされ、館山城を攻めあぐねた。そのころ富山を訪れた老侯・
里見義実は刺客に襲われたが、このとき犬江親兵衛と名乗る大童子が現
れて危難を救う。親兵衛の「神隠し」伏姫神によるもので、犬江親兵
伏姫神の庇護下に置かれ、実年齢以上の成長を遂げていた。また、
荒芽山で行方不明となった音音・世四郎夫婦らも富山に導かれていた。
親兵衛は速やかに「素藤の乱」を鎮定する。


逆らって生き強靭な顎一つ  佐藤正昭




 
親兵衛、素藤、妙椿


ひとたびは助命され追放された素藤であったが、妙椿とともに再乱の機を
うかがう。やがて妙椿は幻術によって、親兵衛浜路姫と密通していると
いう疑いを義成に持たせることに成功。義成親兵衛を結城に向かわせ、
また珠からも引き離してしまう。親兵衛がいない里見家の領国では、素藤
妙椿が上総館山城を奪取した。まもなく義成は幻術により親兵衛を疑っ
たことを覚る。誤解が解かれた親兵衛は館山に赴き素藤を討った。そして
退治された妙椿が現した本体は、玉梓の怨念の宿った狸であった。
一方結城では、悪僧徳用と一部の結城家重臣が法要の妨害を図った。七犬
士は協力して襲撃者と戦い、素藤の再乱を鎮定して駆けつけた親兵衛も合
流し、ここに八犬士は集結し安房へと向かう。


人裁く法は鬼にも仏にも  上田 仁






   

12敗将稲村の城に幽せらる   稲村の城に八犬士





八犬士は夫々の恨みや誤解、冤罪を晴らしたのち、里見の諸将とともに稲
村の城に凱旋する。文明15年12月のことである。論功行賞も粛々とな
され、捕らわれた敵将たちも里見の仁政と誠意に次第に自らの非を認める。
翌年、親兵衛が室町幕府に和議の要請をしたことにより扇谷・山内両管領
と里見義成との間に和睦が成立。ここに長い戦は終結する。里見家は12
敗将をそれぞれ領土に帰したが、犬塚志乃は足利成氏を送って行き、途中
国府台の城で、村雨丸を返還し、父と祖父の遺志を果した。そして八犬士
一行は7月23日に安房に到着した。


負けん気の法被も足袋も風を切る  森乃 鈴





 
   八犬士集合      八犬士嫁候補


その年8月の吉日、諸臣の論功行賞があった。八犬士はそれぞれ一城の
主になり、一万貫文を与えられた。伏姫神に与えられた勅額は神体とさ
れ富山の石の神社に納められた。その後、義成は自分の8人の姫たちを
八犬士に嫁がせることに定め、「紅糸をひきて婦を娶る」という中国の
故事に倣い、8本の糸合せで相手を繋がせた。時が移り明応9年、ゝ大
は須弥(しゅみ)の四天王を造っていたが、八犬士の8個の霊玉を四天
王の玉眼とし、安房の四隅に埋めて守護神とすることを提案。八犬士は
それに応じて自分たちの玉をゝ大に渡したが、それはいつの間にか文字
が消えて、ただの白玉になっていた。


どこを切っても僕であるようなないような 山口美代子





  
    八犬士       八犬士を訪う息子たち


それから20年、二代目の代になり、八犬士は富山の峰に庵を構え、息子
たちには知らせず仙人の生活をしていた。息子たちは、父たちがいる庵を
探し訪ねた。そして親と子の会話の中で、世の流れ、人の善悪、五常八徳
などを説いた。息子たちは慎み畏まって頭を垂れて聞き入った。諭しが終
わり皆が頭を上げると、8人の翁はいなくなっていた。
ただ部屋には、香しい匂いが漂っていた。


可も不可もネットに入れて洗濯機  美馬りゅうこ


 
 
    本編の挿絵 と馬琴の下絵

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