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川柳的逍遥 人の世の一家言
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手付かずの夢がそのまま年をとる  たむらあきこ

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伊勢湾を望む、小高い丘に築かれていた尾張大野城。

佐治氏は、大野湊を中心とする伊勢湾の海運を収めていた。

「江の結婚」

三姉妹は、秀吉を仮親として、

実父・浅井長政、母・お市、そして義父・勝家をも死に追いやった、

憎むべき男の庇護のもとにあった。

こともあろうに秀吉は、三姉妹の母・お市の方に、

ほのかな恋心を抱いていた。

だが、彼女を得たいとの夢は、その死によってかなわず、

その想いを15歳の茶々に向けた。

いわば妹二人は、邪魔な存在であった。

その一方、この姉妹を懐に抱えてみて、

子どものいない秀吉は、彼女たちを養女にして、

政略の道具につかえることに、気付いた。

落石注意ただ一枚の免罪符  高原まさし


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    織田信雄

こうした魂胆から秀吉は、三姉妹を織田家に帰さず、

当時の主城だった山崎城に連れ帰り、自ら面倒をみた。

秀吉は、賎ヶ岳の戦いの同盟者だった織田信雄に、

「お江の嫁ぐ先を見つけてほしい」

と頼む。

本来なら、年の順に嫁入り先を探すのが、普通だが、

茶々を我が物にしたい秀吉は、

お初を嫁がせれば、

一つ違いで、気心も通じ合った茶々が動揺し、

計画に、狂いが生じる恐れがあると思った。

そこで、狡猾にも年下のお江を、先に嫁がせることにしたのだ。

わたくしを省けばスムーズな流れ  太田扶美代

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      お犬の方

信雄が見つけてきた相手は、

「大野水軍」を支配する知多半島の、大野城6万石の城主・佐治一成だった。

秀吉は、信長が重視した大野水軍を我が手にできると喜んだ。

お江にとっても悪い結婚ではなかった。

一成の母・お犬の方は、お市の姉だったからだ。

つまり従姉妹同士の結婚だった。

お江は母を失って半年余り、心の傷も癒えぬうちに、

11歳で4ッ年上の一成に嫁いだ。

あじさいの色うれしくて悲しくて  安土柾子

お江同様に、一成も孤児だった。

母・お犬の方が、他界していただけでない。

父・信方も信長軍の一翼を担って、

伊勢長島の一向宗門徒制圧に、水軍を率いて出撃した。

信長が男女2万人を焼殺する、阿鼻叫喚の戦いのなかで、

決死の一揆衆に、討たれて死んだのだ。

ジッパーを上げたら月も踏みはずす  酒井かがり

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    大野水軍の船

信長の庇護のもとで、少年城主となった一成だったが。

お江同様に「本能寺の変」で、信長という庇護者を失った。

お江と一成は、実に酷似した運命をたどってきた。

そして、秀吉は水軍が欲しいがため、信長に代わる後ろ盾となり、

水軍を自由に操ろうとした。

だがその秀吉の思惑は、

一成・お江夫妻と、関係ないところで狂いが生じる。

蜜月の秀吉と信雄の関係に、ヒビがはいったからである。

叶うまい割れない皿の願いごと  長瀬川久美子

信雄(のぶかつ)は、秀吉が自分の天下を望むあまり、

織田家を駆逐しようとしている、ことに気付いたのだ。

危機感をつのらせた信雄は、徳川家康に近づく。

家康も秀吉の野望に、不快感を示していた。

両者は握手し、秀吉への敵対行動を起こした。

髪型が変わる調律ふいになる  井上しのぶ

お江は11歳、まだ女の体になっていない。

結婚当初、一成とは兄と妹のような夫婦であった。

しかし、よく似た境遇の二人である。

愛が芽生えるのに時間はかからなかった。

大野城でお江は、心のゆとりを取り戻す。

≪だが、ここに天正12年(1584),小牧・長久手の戦いが起こった≫

幸運は通り過ぎたと思ってた  森田律子

お江と一成の仲人は、信雄であった。

一成は秀吉を知らず、お江は秀吉との縁も薄く、

しかも、秀吉を父母の仇と恨んでいた。

若い夫婦に、秀吉への恩はない。

これに対し信雄は、一成の後ろ盾となった信長の息子であり、

お江にとっても信雄は従兄弟であり、

近しい存在だった。

だから、秀吉と信雄が敵対した時、

自ずと、一成が信雄に味方して当然といえた。

しかも、信雄は、尾張50万石・清洲城の城主となったが、

先の戦を先見するかのように、木曽川河口の島々からなる、

かっての一向宗門徒との激戦地・長島城を、大改築して主城としていた。

マッサージチェアが漏電しています  井上一筒

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『お江ー第13回・「花嫁の決意」-みどころ』

江が嫁に行く・・・! 

それは、江たち三姉妹にとって青天の霹靂だった。

相手は、尾張大野城の城主・佐治一成(平岳大)。

尾張・佐治家は、信長の妹で、市の姉にあたる、お犬の方の嫁ぎ先で、

一成はその子だ。

江(上野樹里)とは、従兄弟の関係にあった。 

秀吉(岸谷吾朗)は、織田家一門の強化の為だと言う。

めでたしで終わる話が嘘っぽい  西山春日子

現在、信雄が、家康(北大路欣也)と組んで、

秀吉に戦を仕掛けようとしていた。

そうなれば、秀吉は信雄(山崎裕太)を討たなければならなくなる。

それは織田家一門の崩壊を意味するのだ。

それだけは、防がねばならなかった。

そんなことになれば、亡きお屋形様に合わせる顔がない。

そこで、今回の縁談となったのだ。

それぞれに大文字抱き赦しあう  前中知栄

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一成は信雄の家臣であり、江が嫁ぐということは、

信雄との争いの懐柔策となるという。

だが、何故、江なのか?

秀吉が江を佐治家に嫁に出すのには、二つの理由があった。

一つは、邪魔な江を茶々から引き離すこと。

一つは、佐治家の水軍の存在だった。

羽柴軍の弱点は水軍が弱いこと。

そこで、佐治家が持つ強力な水軍を、手に入れることが必要だった。

窓際を外せば見え方も変わる  森 廣子

秀吉が、「自分と姉を引き離そうとしている」ことはわかっている。

江は悩んだ。

もう一つ、秀吉が言った言葉が、頭から離れないのだ。

秀吉は、亡きお屋形様が夢枕に出て、

秀吉に「織田家を頼む」と言われたと言った。

つまり自分が嫁にいくのは、亡き叔父上の遺志なのか?

江は、考え抜いた結果、佐治家に嫁ぐ決意をする。

そして、それには、もう一つ別の意味もあった。

父の記憶に黄色い花とサーカスと  中村登美子

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やがて、江は決意を胸に秘めて、尾張へと旅立っていった。

江がいなくなって火が消えたように、静かになった姉妹たちの居室。

と、そこに、おねが訪ねて来いぇ、

「どうしても茶々の耳に入れておきたいことがある」と言う。

それは江が、縁談を受け入れる条件として、秀吉に、茶々に対して、

「邪な気持ちを持たない」

という約束の念書を書かせたのだった。

嘘をかさねて本当の恋になる  杉本克子

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おね  「茶々様には黙っているつもりでした。

      されど、あなた様のご気性を思えば、お伝えせずにいる方が

     むごいことのように思えてならず・・・。」

茶々  「すぐに、すぐに江を連れ戻してください!」

おね  「お茶々様!お江様は腹をくくられたのです。

           そのお覚悟、あなた様も覚悟をもってお受け取りくださいまし。」

茶々  「江の覚悟?」

おね  「お覚悟です・・・」

茶々  「情けないことですね・・・。妹のことを思っていたつもりが、

             逆にこれほど思われ、気遣われていたとは・・・。」

も一つの世界へ めがねかけ直す  山本昌乃

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それから数日後、江の乗った輿は尾張の大野城に到着した。

夫になる佐治一成とは、どんな男性なのか?

気になる江だったが・・・。

婚礼まで相手の顔を見るのは、はしたないと考えているところへ、

夫となる一成がやってきて、

「会えてうれしいぞ、江。われわれいとこ同士じゃ。

  織田、佐治、両家の繁栄のために、共に歩んで参ろうぞ」

と言う。

江は嬉しそうに頷く。

ゆっくりと逢えば畳の匂う部屋  森中惠美子

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「これで戦は回避できる」

と江は思った。

がしかし、事態は急変する。

秀吉が、おねに計画を話す。

おね  「戦ですと?」

秀吉  「そうよ。信雄め、わしに内通したというて、おのれの家老を三人も斬り殺しおった」

おね  「で、でも、戦はせぬと・・・。」

秀吉  「殺された者の身になってみよ。」

おね  「それでは、お江様はどうなるのです?」

秀吉  「どうしようもできぬな。・・・佐治一成がこちらに寝返ることあらば、話は別じゃが」

これは小牧・長久手の戦いの序章であった。

未来図は黒一色で事足りる  井丸昌紀

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