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川柳的逍遥 人の世の一家言
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浅漬けのナスとキューリと白い飯  津田照子






    「女房36歌仙」 赤染衛門  鳥文斎栄之





「枕草子」の作者、清少納言「女房」である。
女房の「房」は部屋と言う意味。
つまり女房とは、部屋を与えられて貴人に仕える女性をいう。
ところで宮中に何人ぐらいの女房がいたのだろうか。
藤原道長の娘・彰子一条天皇に入内したときには、40人もの女房が
いたという。この時すでに宮中には、中宮定子の女房、他の女御・更衣
たちの女房、さらに天皇づきの女房もいたのだから、その数は、相当な
ものであったと推測される。
その中に、清少納言紫式部、和泉式部、赤染衛門、百人一首でお馴染
みの伊勢大輔、大弐三位らがいた。
お節介ながらここに「女房の一日」を再現し、王朝時代に思いを馳せな
がら、その生活を覗いてみよう。




アンテナを広げて揺れる象の耳  大島美智代





式部ーとある女房の一日





    辰の刻  (8:00 a. m)
朝起きた女房は、身支度を始める。
髪を洗うことはめったになく、
簡単な手入れですませていたようである。
白粉を塗り、額の上に眉を書いて、歯にはお歯黒、口には紅。
これで女房メイクの完成。
香をたきしめた女房装束に身を包む。




私の顔やさしくしてる低い鼻   岸本孝子





     巳の刻  (10:00 a. m)
女房装束にはいつも、香がたきしめられていた。





     午の刻  (12:00 p . m)
女房たちが与えられている部屋の前で、殿上人と呼ばれる高級官人たち
が通ることもあった。「枕草子」にも、細殿と呼ばれる女房の部屋の前
を通る男性たちと、女房たちの恋の駆け引きの様子が描かれている。
女房たちの生活は、実に開放的だった。




発芽してみようあなたに会うために   栃尾奏子





     羊の刻  (2:00 p . m)
女房たちの中には教養溢れる者も多く、主人に和歌や漢詩を講義したり、
歌を詠み合ったりしていた。「枕草子」にも、和歌や漢詩が登場する場
面が多く、宮廷の女房たちの間に、和歌や漢詩が浸透していた様子がう
かがえる。






            野々宮蒔絵硯箱  (サントリー美術館)
蓋の裏側には黒木の鳥居・小柴垣が描かれ光源氏が六条御息女を
野々宮に訪ねた場面が表現されている。





     申の刻  (4:00  p . m)
硯は女房の必需品であった。
女房・和泉式部が昼間あった殿上人からの手紙の返信を認めている。





   酉の刻  (6:00 p . m)
女房たちの恋愛は手紙から。
この女房には昼間あった殿上人から手紙が届いた。
手紙には歌などが書かれており、送り主のセンスが問われる。
ダサい歌などが書かれていたりすれば、たちまち女房たちの噂話の格好
のネタとなってしまう。




ペラペラの嘘を束ねた置手紙   高野末次





     戌の刻  (8:00 p . m)
歌と並んで楽器の演奏も、女房の必須アイテムだった。
管絃に優れているのは教養ある女性の証明。
楽器は暗くなってから演奏されることが多かった。
当時の楽器は、琴、筝、琵琶、横笛など。





モーツァルトを流し血糖値を下げる  門脇かずお





    亥の刻 (10:00 p . m)
枕草子  『無名といふ琵琶の御琴を…』を清少納言の文章で…。





    子の刻  (12:00 p . m)
女房のところへ昼間あった殿上人がやって来た。
当時の結婚は通い婚。
男性が三夜続けて通ってきたら、結婚の成立となり、披露が行われる。
一夫多妻制で、夫は複数の女性の元へ通ったが、結婚前は女性も複数の
男性を通わせていたようである。





    丑の刻  (2:00a. m)
やってきた男性と女房は二人仲よく床に入った。
当時の枕は、木製や石製、陶製など、さまざまな材質でつくられており、
形状もまたさまざま。
意中の男性を迎えるために、枕に優雅な蒔絵を施したり、香をくゆらせ
る女房もいた。




弁財天色香ほんのり座をまとめ  花篤洋二





     寅の刻  (4:00a. m)
「枕草子」 『暁に、女のもとから帰る男』を清少納言の文章で…。





    卯の刻  (6:00 a. m)
女房のところへやって来た男性は、まだあたりが暗いうちに帰る。
男性が自宅に戻ってから、女性に送る手紙を「後朝(きぬぎぬ)の文」
といい、女性のところから帰った後、これを送るのが早ければ早いほど、
情熱や誠意がある証とされていた。
ほとんど同じ日々を繰り返し、このように、女房の一日はおわります。




良い妻であっただろうか柿を剥く  工藤千代子





     「扇面古写経」小堀鞆音・寺崎広業 (東京国立博物館蔵)
烏帽子姿のまま臥す男は添寝する女の髪を愛撫している。



「枕草子」  『暁に、女のもとから帰る男』




------ゆうべ枕もとに置いた扇やふところ紙を探すとて、暗いものだから、
手さぐりで、そのへん一帯を叩いたり、「おかしいな、へんだぞ」など
とひとり言を言って、ばたばたとしている。
やっと探し出して、ざわざわとふところに入れ、扇をひろげて、ばたば
たと使いながら、「じゃ帰るよ」などというのなど…、まあどうだろう、
にくらしい、なんてなみ一通りのものじゃない。
可愛げがないのにも、ほどがあるというものだ。



フェークスピアとはよくいう恋の指南役  通利一遍



そうかと思うと、烏帽子の紐を固くむすんで、ちゃんと身づくろいして
出る男。どうせ夜もあけぬうち、女のもとから出てゆくのに、着くずれ
ていたって、どうして人が咎めようか。
暁の男女のわかれの有様こそ、やはり風流なものであってほしいものだ。




裏庭に投げ捨てられた耳ひとつ  合田瑠美子




しぶしぶと起き上りがてにする男、女はいそがせ、「夜があけすぎたわ、
みっともないじゃないの」と言い、男はためいきついているさま。
こういのこそ、飽かれぬわかれ、という趣きがあるのだろうと思う。
指貫なども坐ったまま、はきもあえず、まず女のもとに寄って、ゆうべ
一晩話したことの名残りを女の耳にささやく。
なんとなく物うげに、帯などをむすんだりしている。
格子を押し上げ、妻戸のある所は、そこまで女とともにいって、「べつ
べつになる昼の間は、不安なものだね」、などと言いながらそっと出て
いく男のうしろ姿を女はながめ、互いに情趣ふかく、名残り多きわかれ
だろう。





疲れはてているボタンの穴くらい  酒井かがり



こんなのに比べると、きっぱりとはね起きて、ばたばたと身支度し、指
貫の腰をぐっと強く結び、直衣、狩衣、などの袖をまくりあげ、いろん
なものをふところに収め、帯をぎゅっと締めたりしている。
まあそのみれんげもない態度の、なんと憎らしいこと。




ワタクシのここが急所と書いてある  きゅういち






     琵琶を中にして語り合う、中宮定子と一条天皇





枕草子   『無名といふ琵琶の御琴を』




「これが名よ、いかにとか」と聞こえさするに、「ただいとはかなく、
名もなし」と、のたまはせたるは、なほいとめでたしとこそおぼえしか。
 無名という名前がついた琵琶の御琴を、が持って、中宮のお部屋に
いらっしゃった時、女房たちが、それを見てかき鳴らしたりもする、と
いいたいところだが、琴を弾くわけではなく、弦などを手でまさぐって
遊んで、「この琴の名前は、何といったでしょうか」と聞くと、中宮は
「ただもうつまらない物だから、名前もないのよ」と、お答えになられ
たのは、やはりとても素晴らしいと思われた。




淋しい耳は淋しい声を聞き分ける  平井美智子





淑景舎(しげいしゃ)の方などがいらっしゃって、中宮と雑談をされた
ついでに、「私のところにとても素敵な笙の笛があるのです。亡くなっ
た父上が下さったものなのです」と、おっしゃるので、僧都の君「そ
れを隆円に下さいませんか。私のところに素晴らしい琴がございます。
それと交換してください」と、申し上げたが、淑景舎の方は、全くお聞
きにならないで、違うことを話しているので、隆円は、何とか答えさせ
ようと何回もお聞きになるのだが、それでも返事をしないので、中宮様
「いなかへじ(交換はしたくありません)と、お思いになっておられ
るので」と、代わりにおっしゃってあげた時のご様子は、とても才気に
溢れていてこの上なく素晴らしいものであった。
(僧都の君・隆円は、藤原道隆の4男、定子の実弟。また、景舎の君・
原子の兄にあたる)





一すじの髪が水際に浮かぶ  笠嶋恵美子




この「御笛」の名前を、僧都(隆円)もお知りにならなかったので、
ただ恨めしくお思いになっていたようだ。
これは、職の御曹司がいらっしゃった時に起こった事である。
帝の手元には、「いなかへじ」という名前の御笛があったのである。
がお持ちになっているものには、御琴にも御笛にも、みんな珍しい
名前が付いている。
玄上(げんじょう)牧馬(ぼくば)井手、渭橋(いきょう)無名、など
の名前である。
また、「和琴」(わごん)なども、朽目(くちめ)塩釜、二貫(にかん)
などの名前が付いている。水龍(すいりゅう)、小水龍、宇多の法師、
釘打(くぎうち)、葉二(はふたつ)など、他にも色々な名前を聞いた
けれど、忘れてしまった。




冗談のように記憶が飛んでゆく  亀井 明

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