忍者ブログ
川柳的逍遥 人の世の一家言
[1179] [1178] [1177] [1176] [1175] [1174] [1173] [1172] [1171] [1170]
マカロニの穴に詰めおく昨日今日  前中知栄





杉田玄白が源内を「非常の人」と形容した平賀源内発明のエレキテル

長崎遊学時に、和蘭通詞の家で所蔵していた壊れたエレキテルに興味を持った
平賀源内は、江戸に持ち帰り、それを直しては壊し、約6年の歳月をかけて、
「摩擦起電機」(エレキテル)を作り出しました。源内44歳のときです。
そのエレキテルは江戸の大名屋敷などで見世物として、また病気治療を目的と
して使用していたといいます。





蔦屋重三郎ー非常の人・平賀源内





           
     源内と蔦重が最初で最後の出会いとなった『細見嗚呼御江戸』 

安永3(1774)年7月刊行の「細見嗚呼御江戸」に平賀源内は「福内鬼外」
の名で序文を寄せている。
          
『女衒、女を見るには法あり。一に目、二に鼻筋、三に口、四にはえぎわ、
 次いで肌は、歯は、となるそうで、吉原は女をそりゃ念入りに選びます。
 とはいえ、牙あるものは角なく、柳の緑には花なく、知恵のあるは醜く、
 美しいのに馬鹿あり。静かな者は張りがなく、賑やかな者はおきゃんだ。
 何かも揃った女なんて、まあ、いない。それどこか、とんでもねえのも
 いやがんだ。骨太に毛むくじゃら、猪首、獅子鼻、棚尻の虫食栗。
 ところがよ、引け四つ木戸の閉まる頃、これがみな誰かのいい人ってな。
 摩訶不思議。世間ってなあ、まぁ広い。繁盛、繁盛、嗚呼御江戸』
                      福 内 鬼 外 戯 作




さあどうぞ奥へ奥へと万華鏡  市井美春



平賀 源内は、1728年(享保13年)白石家の三男として讃岐国志度浦
(香川県市志度)に生まれた。発明の才に富み、エレキテルの復元、燃えない
布、万歩計、磁針器など、多くの発明をしたことで知られる。
が、発明者のほかに本草学者、地質学者、蘭学者、戯作者、浄瑠璃作者など、
その肩書は数知れない。
薬効のある動植物や鉱物を研究する本草学で名が売れるうれると、その奇想天
外な才能に興味を抱いた田沼意次とも、覚え目出度い仲となる。
このように国益のために務めるも、封建社会の壁に遮られ、世には迎えられず、
「乾坤の手をちぢめたる氷かな」の一句を残し、1779年(安永8年)喧嘩
がもとで人を殺め獄中でその生涯を閉じた。
52歳だった。蔦屋重三郎より22歳若く、蔦重が29歳の頃である。
平賀源内の親友の蘭学者・杉田玄白」は、異才の友人の死を惜しみ、
「非常の人、非常の事を好み、行いこれ非常、何ぞ非常に死するや」
(好みも行動も常識を超えた人だった。なぜ死に際まで非常だったのか)
と、追悼文を綴っています。




蓮根をちょんまげに葱を脇差しに  酒井かがり





 風来山人は、流行作家として話題作を量産




平賀源内は、江戸で興隆した大衆文芸の書き手としても活躍し、数多くの号を
使い分けた。雅号として鳩渓(きゅうけい)戯作者として「風来山人」「悟道
軒」「天竺浪人」「貧家銭内」(ひんかぜにない)浄瑠璃作者として「福内鬼
外」(ふくうちきがい)俳号は「李山」などである。
なぜこれだけ名を変えたのかは不明だが、彼の「変り者」伝説を裏付ける。




競馬の蹄はビビデバビデヴー  蟹口和枝




自身をモデルにした作品紹介





          『根奈志具佐』  (風来山人作 挿絵)





『根奈志具佐』 
作品は、人気絶頂だった歌舞伎俳優が舟遊び中に水死した事故を脚色した
フィクションで、若侍に化けた河童と女形が恋に落ちて心中しようとする
のを、くだんの歌舞伎俳優が止めに入ったあげく水死してしまというもの。
なお河童が、若侍に化けて女形を誘惑したのは、閻魔大王がこの女形に一
目惚れして、地獄に連れてくるように命じたからという。
平賀源内は、男色のもつれによる悲喜劇を創作し、そのなかで閻魔大王に
なぞらえて為政者の堕落を風刺した訳ですが、作品名の読みを「根無し草」
と同じにして、「根も葉もない話」とほのめかしているのです。
その物語りの内容はー後半にて。




ぬるま湯が僕にぴったり合っている  青木十九郎






             『風流志道軒伝』  (天竺浪人作 挿絵)
足長族と手長族が窃盗を働いている。
実在の人気講釈師「深井志道軒」をモデルにした架空の諸国漫遊記。



『風流志道軒伝』は、当時江戸で大人気だった講釈師、深井志道軒の伝記です
──が、中身はすべてフィクション(デタラメ)です。
活躍中の人気講釈師の生涯をかってにでっち上げるという荒技を使った本です
が、このデタラメさが江戸っ子に大ウケして大ヒット。
『主人公の旅先は、巨人国や小人国、足長族と手長族が住む国、女性ばかりの
女護島、実在しない国々。」行く先々での異文化体験を、軽妙な文体で綴る、
また、藪医者が横行する愚医国、融通の利かない堅物が牛耳るぶざ国(ぶざは
武士の蔑称)といった国も登場させ、SF小説のような作風で、当時の実社会
を皮肉った。




注文通りにできてすっきりしない嘘  松下放天










「平賀源内と蔦屋重三郎」
蔦屋重三郎は、平賀源内より22歳年下の1750年生まれ。
蔦重が平賀源内に初めて接触したのは1774年、彼はまだ出版事業に乗り
出しておらず、江戸は吉原で書店を開業したばかりの頃。
この年蔦重は、吉原遊郭のガイドブックである「吉原細見」の「改め」と
呼ばれた業者の編集者だった。
吉原細見は、妓楼の所在地や遊女の名、揚代などを掲載する情報誌だから
どの版元の細見もみな同じようなもの。そこで、何か違った試みのものは
ないかと考えた蔦重は、時に話題を提供する有名人の平賀源内に吉原細見
の序文を依頼して、付加価値を高めようとしたのが二人のなりそめだった。




スクワット流れを変えに行くために  大石一粋







平賀源内蔦重の依頼に応えて「福内鬼外」の筆名で寄せた吉原細見
序文は、女衒と呼ばれた、女性を遊郭に仲介する業者が、女性のどこを
重視するかで始まっている。
「一に目、二に鼻すじ、三に口、四に生え際、肌は脂の塊のように白く
めらかで、歯は瓜の種のように形良く」と、そういう女性は人気の遊女
になる」と、筆を走らせたのである。
これには江戸の庶民も驚いた。
なぜなら平賀源内は、男色家として知られており、女性や遊郭に興味が
ないと思われていたからで。世間の意表を突いて、耳目を集めるという
蔦重の狙いであった。
ただ、平賀源内と蔦重が組んだ仕事は、これ以外に確認はできない。
なぜならこの5年後、先に述べた通り、平賀源内は死んでしまったから。





さよならはパジャマのままでいいですか  くんじろう






         
     花ノ井(小芝風花)に見惚れる蔦重(横浜流星)と源内(安田顕)




大河ドラマ「べらぼう」2話に出てきた菊之丞→瀬川→花ノ井
花の井は「源内さんにとっての瀬川は菊之丞のこと。かりそめの姿でもいい
から役者の瀬川と再会したいのだ」と見抜き、自ら男装をして、
「わっちでよければ『瀬川』とお呼びください」と源内に訴えます。
源内は、花の井の舞い姿に、菊之丞との思い出の日々を重ね合わせます。
その記憶を反芻しながら、源内が吉原の街を彷徨い歩くのです。





妄想を煮込み続ける金曜日  平井美智子




『根奈志具佐』






            根奈志具佐  (風来山人作 挿絵)
地獄に来た僧侶。





「あらすじ」
物語は、菊之丞と関係を持っていた若い僧侶があの世にやってきたことで始ま
ります。
僧は菊之丞という男娼に入れあげるあまり首が回らなくなり、師匠の金を盗む
罪を犯し、生臭坊主として閻魔大王の元にやってくるのです。
「この者の罪は何か?」と、大王が訊ると、人の善悪を記録する倶生神
そそくさと現れて、調子よく罪をならべはじめた。
「ハイハイ、この坊主は大日本国、江戸の修行僧です。これが芝居と男色の街
の女形・瀬川菊之丞という男娼の色に染められちゃって、まあ、師匠の財産に
手をつけるわ、寺宝の錦の戸帳を道具市にひるがえすわ、行基の作の阿弥陀如
来は質屋の蔵へと、若衆の恋のしくじり、悪事がばれ、座敷牢に押し込められ
てしまえば愛しい人にも逢えず、これを苦にしてあの世(シャバ)を去って、
めでたく地獄へやって参りました次第です」
しかし、死んでも忘れられぬは菊之丞の面影、肌身離さず腰につけたのは当代
きっての絵師・鳥居清信が画いた菊之丞の絵姿が僧の懐にあった。





門広く開けて待ってる地獄門  森 茂俊





「イヤイヤ」大王が不機嫌そうに答える。
「こいつの罪は軽いようにみえて、軽くない!シャバでは男色というものがあ
るらしいが、オレにはこれがさっぱりわからん。男女の道は、陰陽にもとづく
自然なことだが、男と男が交わるなんてことはありえん!
大王の怒りにみな委縮していたが、そのうち十王のひとり転輪王がおずおずと
進み出て「大王のご命令に逆らうのは、恐れ多きことですが、思ってることを
言わないと腹がふくれてしんどいので、ちょっと言わせてもらいやす。
大王は、男娼がお嫌いなので、酒好きに甘い餅を勧めるようなものですが、
菊之丞の評判、その艶美さは、この地獄にまで聞こえてきます。
坊主がこの世の思い出にと、抱いてきた絵姿を私も一目見たくてたまりません。
どうかこの願い、かなえさせてくだせい、ぜひ!ぜひ!」
目を血走らせて迫ってくる転輪王に、大王も少しひるんだ。




網の目を抜けた噂に追われている  前田芙巳代




「蓼たで食う虫も好き好きとは、おまえのことだ。そこまで願うなら、絵姿を
見るのは勝手にしろ。だが、オレは見ないぞ。男娼など見たくもないから、
オレは目をつぶる。さあ、目を閉じてる間にサッサと絵を開け」
大王がギュッと目をつぶると、転輪王は、急いで絵姿を柱にかけた。
” 清きこと春柳の初月を含むがごとく  艶えんなること桃花の暁烟(朝もや)を
帯びるに似たり "
皆がゾロゾロ集まって来て、絵をのぞきこんだが、その姿の艶あでやかさ------
なんとも言葉にもならず、誰もが「はっ」と息をのんで魅入るばかり。
聞きしにまさる菊之丞の姿、天下無双の美しさかな──と、十王をはじめ見る
目は、目ん玉光らせ、かぐ鼻は鼻の穴ふくらませ、牛頭(ごず)馬頭(めず)
などは、額の角をいきり立たせて興奮し、そこら中から、感嘆の声が鳴りやま
ない。




奈落でもほのかににおうサロンパス  木口雅裕





周りのどよめきに、さすがの大王もガマンできなくなったのか、こっそり薄目
を開けてのぞいている──と、たちまち目がまん丸になって、その艶やかさから
目が離せない! さっきまでバカにしていたことも忘れ、魂の抜けがらのように
呆然と見惚れて、思わず身を乗り出した大王の目もウツロだ。
「皆の前で面目ないが…オレは、この絵姿の可愛らしさに胸がキュンとなった。
昔から、美人と聞こえが高いものは、大勢いたが、そんなものとは比べものに
ならん。
西施の目もと、小町の眉、楊貴妃の唇、かぐや姫の鼻、飛燕の腰つき、衣通姫
の着こなし------すべて引っくるめたこの姿、花にも月にも菩薩にさえ、かなう
ものはない。
まして、 唐土でも日本でも、こんな美しいものが二度と生まれてくるとは思え
んから、オレは冥府の王位など捨てて、これからシャバに行ってこの若衆と枕
を共にする」




満月のプリンはとても姦しい  山本昌乃





「けしからん!」大王がのぼせてフラフラ出て行こうとすると、 邪淫の罪を裁
く宗帝王が立ちはだかって、しかめっ面で怒鳴りつけた。
「色に溺れて、冥府の王位を捨て、シャバで男と交わるなど言語道断!そんな
ことでは地獄、極楽の政を執り行うものもなくなり、善悪を正すこともできん。
三千世界の民は何をもって教えを乞うのか!」
宗帝王が顔を真っ赤にして迫ると、後ろから平等王が、いそいそと現れた。
「まあ、まあ、宗帝王さんのおっしゃることは、ごもっとも──まさに、木曽の
忠太が、義仲をいさめて腹を切ったような立派なご意見──ですが、大王さまは
意固地なお方、いったん口にしたことはテコでも曲げねぇときた。
どうせ何を言ったって、馬の耳に念仏、牛の角のハチときて聞きゃしません。
男女の怪しげな魅力に取りつかれて、王位を捨てるたぁ-、俗世の息子衆のやる
こってす。地獄、極楽の主たる大王さまのやるこっちゃありません。
どうでやす、そんなに菊之丞がお望みなら、俗世に誰ぞ使いをやって、菊之丞
めをとっ捕まえて来るほうが手っ取り早くすみやすよ」
平等王の思わぬ提案に「そうだ、それがいい!」と、みなが賛同した。
この案には大王も納得し、さっそくみなで顔つきあわせて菊之丞をさらう作戦
を練りはじめた。





全会一致なぜか怪しい決まり方  水野黒兎






              根奈志具佐  (風来山人作 挿絵)
舟遊びをする菊之丞と河童




大王はなんとかして菊之丞を、傍に置きたいと思うのですが、彼の寿命はまだ
まだ先なので、自分の従えている神々を招集し会議をし、その中でも水を司る
龍神に、菊之丞を殺して連れてくるよう命じるのです。
命を受けた龍神は、竜宮城に戻り、眷属(けんぞく)を集めて、菊之丞誘拐の
計画を立てます。その中でも伊勢海老は、派手な歓楽街に出入りしており芸能
人事情にも詳しく、菊之丞が近日中に、隅田川で舟遊びする情報を掴んできま
した。
それをもとに、河童が、菊之丞をおびき寄せる実行人となります。
伊勢海老の情報の通り、菊之丞は、その日に隅田川で役者仲間たちと一緒に舟
遊びに来ていました。一同はシジミを取りに、小舟に乗り換えていましたが、
菊之丞は、俳諧の発句を思いつきそうだったので、舟にひとり留まりました。





モヤモヤに一度止まって考える  上坊幹子





そして、いい感じの発句を思いついて詠んでみると、どこからかもっといい感
じの脇句が返ってきます。その声の主を探していると、笠を深く被った24,
5歳ほどの若いが、小舟に乗ってこちらを見つめていました。
菊之丞はその侍に、少しときめいてしまいますが、あの亡くなった僧侶のこと
を思い出して戸惑うのでした。
「夏の風になりたい。君の服の中に忍び込める風に」おもむろに侍は、そう歌
を詠んだ。
菊之丞もまた、風を誘う扇を煽る手を止めて、
「私も、その骨の隙間から君を覗き見つめたいです」と返し、侍は自分の小舟
から菊之丞の舟に移って来て、ふたりは舟の上で結ばれます。
なんとその侍の正体は、龍王の密命を受けた河童でした。
河童もまた菊之丞に惚れてしまい、菊之丞を地獄へ連れていくのを躊躇い自死
しようとするのを、「それなら菊之丞もともに」と、もみ合いになります。
そこへ、くだんの歌舞伎俳優が止めに入ったあげく、水死してしまという…。
結末が待っていたのでした。




スマホが光るすぐ来いというエンマ  井上恵津子

拍手[2回]

PR


Copyright (C) 2005-2006 SAMURAI-FACTORY ALL RIGHTS RESERVED.
忍者ブログ [PR]
カウンター



1日1回、応援のクリックをお願いします♪





プロフィール
HN:
茶助
性別:
非公開