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川柳的逍遥 人の世の一家言
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大階段降りる幸せ噛みしめる  安蘭けい

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これは、元・宝塚トップスター安蘭けいが、星組のトップのポジションを得て、

大劇場フィナーレの舞台で、初めて大階段を降りたときの感想です。

その安蘭けいが、この8月28,29両日、

世界遺産・薬師寺の薬師三尊像の目の前で、美声を聞かせてくれる。

(安蘭けいmeets・薬師寺三尊像「弦宴(いとのうたげ)」)

* 美声についての質問です。

Q, 「あなたの声は、大変魅力的ですが、自分で自分の声をどう思いますか?」

A, 「普段の話し声はあまり好きではありませんが、

   舞台で歌ったり台詞を言っているときの声は、

   それほどキライではないですね。 
(*'‐'*) ウフフフ♪

   よく周りの方から、『その声を与えてくれた両親に感謝しなさい』

と言われます。

一枚の絵に会いにゆく夏の午後  浜田さつき

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     薬師寺・金堂

このコンサートに先立つ会見で、安蘭けいは,

「歴史的建築物で歌えるなんて、めったにないチャンス。 光栄です。

 今年は舞台生活を始めて20年の節目の年でもあり、

 ”神様のギフトみたい”」

と、喜びを言葉に表していた。

そして、

「仏様の前で歌っていいのか不安もあったが・・・、

 如来様の優しい顔を見て、大丈夫と思った」 
 Ψ(`∀´)Ψウケケケ

と、弥勒如来像を見上げた。

モットーにきれいな言葉散りばめる  片山かずお

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        薬師寺・弥勒如来像と弥勒三尊像

* 安蘭けいへの質問が続く・・・。

Q, 「自分の前世について、考えたことがありますか?」

A, 「見ていただいたことがあります。

   そのときは、”平安時代の歌を歌う人だった”などと言われましたね」 (^w^) ぶぶぶ・・・

平安時代よりも時代は、少し遡ってしまいましたが、

この奈良の薬師寺コンサートでは、いろんな楽曲を、披露してくれるそうです。

きっと、如来像も三尊像も、安蘭けいの美しい声に、

うっとりと、聞き耳を立てられることでしょう。

皆様も、幻想的な空間で披露される特別なステージをぜひ!

ご覧になっては!?

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 熱唱する安蘭けい

弦楽のシャワーに心洗われる  宮前秀子

一方、龍馬伝・近藤長次郎は、

「サムライとして生きる」 夢を追いかけながら、

一歩一歩大階段を登りかけていたのですが、途中の踊り場で、

足を踏み外してしまうことになります。

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「童門冬二が語る近藤長次郎」

長次郎は、東洋系の人物か近藤長次郎は”まんじゅう屋長次郎”とよばれました。

生家が和菓子屋だったからです。

こどもの時から、学問が好きだったそうです。

その師弟関係をしらべて見て、改めてビックリしたことがあります。

長次郎が学んだ師は、

河田小龍・甲藤市三郎・岩崎弥太郎・安積艮斎・勝海舟などです。

この流れをみていると、いくつか考えさせられることがあります。

部屋にある親方衆の徳俵  ふじのひろし

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それは、

河田小龍と甲藤市三郎は、ともに吉田東洋を敬愛し、

その影響を強く受けていたこと。 

岩崎弥太郎は、もともとすぐれた漢学者・漢詩人であって、

生地井ノ口村では、地域振興につくした指導者であったこと。 

その岩崎は、東洋の甥である後藤象二郎を通じて、

東洋に愛され、その指導を受けていたこと。 

長次郎が、江戸で学んだ安積艮斎は、

かつて岩崎の師であり、岩崎の紹介によって長次郎が入門出来たこと 

岩崎は、高知郊外で学塾をひらいており、

長次郎が入門したころは、池内蔵太が門人として在籍していたこと。

羽ばたくつもり一本の樹に登る  高島啓子

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なにが言いたいか、といえば、

近藤長次郎といえばすぐ、「龍馬ピッタリの人間」 と考えられがちです。

おそらく長次郎が、龍馬と出会ったのは、河田小龍のところでしょう。

しかしそれまで長次郎が、辿ってきた過去を考えると、

彼は、「龍馬系」の人物と考えるよりは、

むしろ、「吉田東洋系の人物」 と考えた方がいいのではないか、と思えます。

そしてこのことが、

彼が切腹する破目におちいった「独断密航事件」 に対する、

長次郎の考えに、つながるような気がします。

花道は別れことばの長さほど  森中惠美子

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つまり亀山社中に身をおいても、

長次郎は、「自己の独立性と主体性」を確保し、

そのことがさらに「人間的自由」を呼びおこして、

イギリスへの留学を思い立たせるのです。

はっきり言えば、

「そういう自由を認め合うのが、亀山社中の理念ではないのか?」

と、考えたかもしれません。

のちに海援隊に発展する亀山社中は、長次郎にとって、

”自由人(脱藩者)の集団”  ”たがいの能力を尊重しあう集団”  

だと考えていた、かもしれません。

くしかつの串に呼ばれて出て行った  井上一筒

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『龍馬伝』・第34回-「侍、長次郎」 あらすじ

ユニオン号を下関に運んだ龍馬(福山雅治)たちだったが、

船の運航は、亀山社中が行い、

「社中や薩摩藩が、自由に使える」 という約束を、

近藤長次郎(大泉洋)井上聞多(加藤虎ノ介)が、していたことが問題になる。

龍馬は、「薩長を結びつけることを優先しよう」 と、

船の管理は、長州がすることで話をまとめる。

長次郎は、社中の生活費用を、現実にやりくりしてきたので、

社中が動かせる船を、持ちたいと思ってしたことだった。

すぐ下にマグマあるのに未来論  岡田陽一

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失意の長次郎は、長崎に戻るが、

社中のメンバーに、私欲に走ったと責められる。
 
長次郎は、グラバー(ティム)からイギリスへの密航、留学を勧められ、

「社中での居場所がない」 と思った長次郎は密航を決心。

しかしその晩、海が荒れ船は出港できなかった。

密航の情報が奉行所に入り、社中に調べが入る。
 
軽石でこすって落とす今日の罪  種田淑子

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龍馬は、再び薩摩と向かい合う気になった桂小五郎(谷原章介)とともに、

西郷の待つ京へ向かおうとする。

そんな龍馬に高杉晋作(伊勢谷友介)は、ピストルを贈る。

長次郎が密航を企て、奉行所に追われている、という手紙を受け取った龍馬は、

桂を先に京へ向かわせ、長崎へ。

しかし追い詰められた長次郎は・・・。

沈黙を買いに行く万札のシワ  山口ろっぱ

拍手[7回]

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我が人生一ミリたりと悔いはなし  水夏希

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18年間慣れ親しんだ宝塚大劇場から「サヨナラ」する、

宝塚雪組トップスター・水夏希が、千秋楽を迎えた大劇場・最後の大階段を、

”男役の正装”黒のタキシードで降り立ち、

「情熱のすべてを傾け、命を削って舞台を務めてきました。

 1ミリたりとも悔いはありません」

とあいさつをした。

襟芯を明日に向けて立てている  田井中藤重

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 亀山社中のユニホーム姿

「亀山社中の初仕事」

恩師の勝海舟から、「カンパニー」という言葉を聞き覚えていた龍馬は、

長崎の亀山を本拠に活動するカンパニーを作り、

『亀山社中』と名付けた。

亀山は、もともと”亀山焼き”という焼き物を製造していた町で、

それを作る人や、仕入れに来る人たちで賑わっていた。

亀山周辺には、民家が寄り集まり、

亀山社中が本拠を置くには、優れた環境にあった。

B面に賭ける男の靴の底  菱木淳一

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      亀山焼窯跡

新撰組や土佐勤皇党、奇兵隊など、

時代を反映した軍事組織が多い中で、

龍馬は、”商取引を主な目的とする”画期的な亀山社中を、

長崎・亀山で結成し、

要請があれば、軍事行動にも参加するという、

フレキシブルな組織として、動き始めたのである。

エンデバーから太平洋に糸垂らす  杉山ひさゆき

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亀山社中記念館(ここで初仕事を待った)

しかし、待てども客は来ない。

社中の面々は、

とりあえず「塩でも売らんかな」と、その準備に取り掛かった。

「初仕事」に備えて社内会議を開き、

社員の中から、”ユニフォーム”も必要だとの意見があり、

龍馬は、白地の袴をあつらえて、社中の制服とする。

社旗もいるというので、”布切れに朱で三本線を入れ、社旗とした”。

人材も元・海軍操練所のエキスパートで固めている。

蒸気汽船の操作、経理、語学、法規の熟知など、

社中としての準備は整った。

お揃いを着ると妬心が目をさまし  志水剣人 

ところで袴といえば、黒灰色か藍色が主流である。

白地に身をまとった男たちが、

長崎の町中をぞろぞろと練り歩く姿は、

一種奇異であったが、これが目立ち宣伝活動に役立った。

「社中の白袴」と呼ばれて、

あっという間に、長崎名物までになり、

このあたりから、ボツボツ仕事が入り始める。

歯を磨きながらみつけた妥協点  荻原鹿声

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    これは海援隊旗

当初、総勢7人の組織であった。

社中の設立資金は、薩摩に顔の利く龍馬の一声で決定した。

小規模ながら「カンパニー」の形は整った。

”果報は寝て待て”とばかり、皆が社中の本陣で、ごろ寝していると、

遠くから騎馬隊の近づく気配がした。

日に一度こむらがえりを確かめる  山本トラ夫

「もしや賊では」と、

龍馬ら7人は刀の柄に手をやり、立ち上がったが、

馬上の人の陣笠には、丸十字くつわ紋が見える。

長崎の薩摩藩邸からの伝令で、4人の薩摩藩士が駆けつけたのであった。

その一人、家老の小松帯刀によれば、

「薩摩藩は、蒸気船を手にいれもうした。

 長崎から鹿児島までの回航を、よろしゅうお頼みもうす。

 こい蒸気船引くには、薩摩の細腕ではこたえもす。

 ちーっと引いてきてやんせ」

と言う。

カーブを曲がりきったら四次元が見える  本田洋子

「おやすい御用じゃ。やってみんしょ」

となり、本格的な仕事を始めることとなった。

7人は、神戸の海軍操練所で、航海術を磨いてきたプロ集団である。

お手の物であったが、回航料を聞いて驚いた。

6万両支払うというのである。

この程度なら、500両が相場というもの。

ケタ外れの金額であるが、

龍馬は、「社中へのテコ入れである」と直感した。

こうして亀山社中は、一気に組織の体力をつけていく。

コツひとつ摑んだ独楽がよく回る  竹森雀舎

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水夏希と愛原実花のラストステージ

トップの文につづく挨拶で、水夏希は、以前から決めていた通り、

涙もなく、

「下級生のころは広くて怖かった大劇場が、今日は狭く感じました。

 いろいろわがままも聞いてもらったし、やりたい事もすべてやらせてもらいました。

 おかげさまで、本当にたくさんの夢をかなえることができました」

と一点の曇りもない笑顔を浮かべながら言葉をつづけた。

そして、水夏希と同時に退団する故・つかこうへい氏の愛娘・愛原実花は、

「自分の信ずる道を、まっすぐに歩くことの大切さを宝塚から、教えていただきました。

 水さんの相手役でいられたこと、本当に幸せに思っています」

いまにも溢れそうな涙をおさえ、別れのあいさつ。

そこには、ひとつの仕事をやり終えた、達成感を感じさせた。

一抜けてすっかり溶けた肩の芯  岡田陽一

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大浦慶も加わり、グラバー、龍馬商談

『龍馬伝』・第33回-「亀山社中の大仕事」 あらすじ

「長州の船と武器を、薩摩の名義で購入する」

という龍馬(福山雅治)の策に、

桂小五郎(谷原章介)高杉晋作(伊勢谷友介)は、乗ることにする。

長崎に戻った龍馬は、

”亀山社中の初仕事”として意気込み、

グラバー(ティム)に、長州のための取引だと隠して、

薩摩の船購入の話をもちかけるが、

交渉の場に薩摩の者がいないことにグラバーは、疑念を抱き断る。

ゲジゲジがゴルフシューズを買いにきた 井上一筒

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 グラバー邸・客間(接待の間)

西郷吉之助(高橋克実)は、幕府を警戒して、

この取引を、龍馬たちだけで行わせたのだ。

龍馬は、正々堂々と頼もうとグラバー邸に乗り込み、

この話が、長州の払いであることを告げ、

もうけ話をかぎつけた慶(余貴美子)の口添えもあって、

グラバーは承諾する。
 
てのひらに自分の庭を持っている  佐藤幸子

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龍馬は、お元(蒼井優)が、グラバー邸で、

キリストの絵に十字をきる姿を見てしまう。

龍馬はグラバーとの商談を、長次郎(大泉洋)惣之丞(要潤)に任せる。

イギリスに留学していた長州の伊藤俊輔(尾上寛之)井上聞多(加藤虎ノ介)

グラバーの話を聞くうちに、

長次郎は自分も、

「いつかイギリスに行きたい」

と思うようになるのだった。

長次郎の活躍で、商談はまとまったが、お元に知られてしまう。

お元は龍馬に、自分がキリシタンであることを、黙っておいてもらう代わりに、

「この商談を長崎奉行に伝えない」

という取引を持ちかける。

脳天をがちゃんとそれからのご縁  増田佐代子

拍手[9回]

君の余白を微笑で埋めてやる  中井アキ

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龍馬”亀山社中”を結成した直接的な動機として、

動揺する幕藩体制下で、脱藩などして失業した者を雇用し、

彼らと、協力体制を組むことにより、

幕末に活動する志士が、経済的に自立することにあった。

そういう現実の生活問題を抱えて、社中は結成されたのである。

羽ばたけと迷う背中を押してやり  石橋直子

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「本藩(土佐藩)を脱する者、他藩を脱する者、海外の志ある者は、

社中の社員になる資格があり、任務についてもらえれば、給金が支給される」

という触れ込みだったから、

脱藩などして、

俸禄がもらえなくなった浪士などが、集まってきた。

藩の財政は、どこも大赤字だったから、

いったん脱藩などすると、永久追放もので、

「待ってました」

とばかり俸を切られた。

自立自営を貫く亀山社中の売り上げは、幕末の志士でもある隊員にとって、

唯一の行動資金であり、生活源となった。

血を流す傷ならすぐに直るはず  居谷真理子

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        島 原

ところで京では、志士を名のるものが無数乗り込んできた。

しかし、志を立てる以前に、カネがない。

京が朝廷のお膝下という、京に乗り込むそれなりの理由もあったが、

倒幕の志士へ、資金的肩入れをする商人が、数多くいたからである。

それに祇園の女将は、志士に好意的で、

もてなしたり、かくまったりと、

安逸な別世界の魅力が京にはあって、

殺伐とした世の中ではあったが、

「起きて語るは天下の政、酔うて眠るは美人の膝」

などと呑気なことを言って、”祇園界隈”を遊びまわる者が多かった。

ボージョレと肩を組んだり笑ったり  立蔵信子

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しかし龍馬は、そのような志士のあり方に、批判的で、

「商人にたかったり、ゆする志士は人語に落ちる」 

と考えていた。

そのような壮士くずれの志士が、

京で暴れ、「御用改め」 と這いまわる新撰組や京都見廻組に、

志士狩りの口実を与えた。

心臓のゴムが弛んだままである  井上一筒

志士の脱落は、京の治安をいっそう悪くしていた。

その原因に、経済的な問題があれば、

それを解決しないことには、志士として十分に活動ができない、

龍馬は脱藩した志士など、

経済的に困窮するものが寄り集まって、「利」を収める行動を起こし、

「その『利』をもって、政治的な行動に資するべきだ」 

と考えていたのである。

仲間から尊敬される塵になれ  嶋澤喜八郎

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龍馬は、次のように語っている。

「とかく一匹狼になりがちな志士の行動力には、限界があるぜよ。

 こんワシみたいに、脱藩した志士には後ろ盾がないんじゃ。

 飯も食わねばならんが、口も利かんとならん。

 たとえば、薩長の間に立って口を聞くにも、組織を後ろに置いとったほうが、

 ”話をまとめやすい”と思うところがあってのう。

 ワシみたいな浪士には、社中みたいな組織が、いると思うたぜよ。

 志を抱くのは立派だが、現実に志だけでは、生きていけんでのう。

 志士といえども、そういう現実の問題を避けて通るんは、

 チクと難しいちゅうもんぜよ。

 同じ志を持ったモンたちが、寄り集まり、

 資金的にも、独立できるようになれば、

 もっと、大きな仕事ができる、とワシは考えた。

 『西洋には、カンパニーちゅう共同体があって、利を稼ぎ、利の分配がなされとる』

 と勝先生は言っておった。

 亀山社中は現実をみながら、

 そういう理想を描いて動き出したカンパニーなんじゃ」 

と。

軽快なフットワークにある自身  植野保宏

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幕末社会におかれた、脱藩志士たる自分の位置づけを、見つめ直したとき、

龍馬の頭には、

師・勝海舟から聞き覚えた「カンパニー」の構想が浮かんだ。

「日本でも西洋の会社を」 

と決心したのである。

龍馬は、咸臨丸でアメリカに渡ってきた恩師・海舟から、

アメリカにはリンカーンという将軍がおって、人はみんな平等だと主張し、

 対立する軍隊に勝ったそうな」

と聞かされ、

「こんワシも、日本のリンカーンになろうかな」

と考えた。

この時に、龍馬の「理想の原点」が生まれたのである。

ひらめきを磨くと明日へ陽がのぼる  村上比呂秋

拍手[5回]

茶目っ気なボスでみんなに慕われる 桑田砂輝守

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     海援隊約規

〔龍馬、海援隊への道〕

”我もはや、世をすてん 鈴鹿山、またなりいずる 世にしあらねば”

≪これは、勝海舟が神戸に海軍操練所を立ち上げて2年後のこと、

幕府からの更迭に合い、操練所にかかえた坂本龍馬以下脱藩者との、

板挟みの心境を詠んだものである≫

取り残された彼ら‘元学徒‘は、

就くべき職も無く、放り出されてしまったわけで、

「それなら俺がなんとか、勝先生のためにも、日本の洗濯をしちゃる」

と、龍馬が一肌脱いで、営利を目的に動く、

「『亀山社中』を組織しよう」 と、立ち上がった。

社中を立てるにあたって、出資はとりあえず薩摩藩に仰ぎ、

社中が稼ぎ出した「利」は分配し、

社員の月収は、全員三両二分とした。 ≪当時の武士の平均月収≫

かしら分の龍馬も、同額である。

五線譜にひらめくものをちりばめる  山本希久子

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   海援隊約規文面
 
いまから140年も前に、現代の総合商社に通ずる特質を、

「亀山社中」は備えて誕生した。

仲介料で儲かった亀山社中は、独立採算のメドがつき、

これを機会に後藤象二郎の薦めもあって、

『海援隊』へと名称を変えるのである。

そして、このさい社中は、後藤から一万両を融通してもらい、

順風満帆の勢いで、龍馬は約款までつくり、

「これで薩摩の紐付きにならんで済むのう」 

と、海援隊の誕生を祝った。

武士の1分にメンソレータム塗っておく 竹下くんじろう

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近藤勇が狙っているとも知らず、寝入る龍馬

龍馬は、175cmほどもある当時としては、見上げるような大男である。

大男は、剣術に秀でるものが多く、

龍馬は、北辰一刀流長刀兵法の免許皆伝を授かっていた。

しかし、長刀とは薙刀のことで、なぜ薙刀を志したのか・・・? 

疑問であるが、

千葉道場の塾頭を務めたわりには、さして武勇伝は伝わってこない。

平凡な顔で無難に生きている  興津幸代

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人の3倍も努力したという龍馬だが、

むしろ剣術は苦手で、千葉道場でも人柄の方が光った。

「茫洋として雄大、天衣無縫」 というのが、

龍馬の人となりを評価する、決まり文句で、

その大らかさが亀山社中にあっても、社員をひきつけ、

組織をまとめる男の魅力であり、

剣よりも人との和合、

剣術よりも商術に、大いに発揮されたようである。

京都駅の雨 龍馬の咳払い  井上一筒

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『龍馬伝」・第32回-「狙われた龍馬」 あらすじ

下関に来なかった西郷(高橋克実)を追って、

龍馬(福山雅治)中岡(上川隆也)は京の薩摩邸を訪れるが、

西郷からは面会を断られてしまう。

折りしも京では新選組による殺戮が繰り返され、

ますます物騒に・・・。

2人は人目につかないよう、別々の宿に泊まることに決める。

走過ぎる時代に浴びた水しぶき  石川憲政

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 お龍をくどく近藤勇

久しぶりに、伏見の寺田屋を訪れた龍馬。

そこには、なんと新選組の近藤勇(原田泰造)が来ていた。

お龍(真木よう子)目当ての近藤は、しばしば寺田屋を訪れては、

彼女に酒の相手をさせていたのだ。

それを聞いた龍馬は、身の危険を顧みず近藤のいる部屋へ。

自分の素性を隠すため、薩摩藩士を装いながら、

近藤を泥酔させてしまう。

近藤は、幼なじみの以蔵を襲い、

池田屋事件では亀弥太を死に追いやった憎き相手。

眠りこける近藤を前に、刀に手をかける龍馬だったが・・・、

どうにか思いとどまる。

一大事明日がどこにも見当たらぬ  岩田多佳子

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そして明け方、目を覚ました近藤は先ほどの薩摩藩士が、

以前、以蔵を逃がした龍馬であったことに気づく。

お登勢(草刈民代)は、

「龍馬はもうたった」
 と、うそを言い、

必死に龍馬をかくまおうとするが、

近藤には全く通じず、龍馬の寝込みを襲いにいく・・・。

しかし、龍馬を追って江戸から寺田屋を訪れていた、

千葉道場の当主である重太郎(渡辺いっけい)が、加勢するのを見て、

その場を去る。

重太郎は、妹・佐那の思いのために、龍馬に会いにきたのだが、

お登勢とお龍の会話から、

龍馬が、”日本を変える” という大きな仕事に邁進していること。

そして、お龍の龍馬への気持ちにも気づき、

黙って江戸へと帰っていく。

その意見虫に刺された跡がある  西田斎柳

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やがて、西郷と会うことが出来た龍馬は、

西郷が下関を通り過ぎたのは、

「幕府の隠密により偵察されていたからだ」
 と知る。、

いっそう険悪な関係になってしまった”薩摩と長州”を、再び結びつけるため、

龍馬は、思いもかけない策を、西郷に提案する。

それは幕府の目が光っていて武器を、購入できない長州のために、

薩摩藩の名義で、武器を購入するという奇策だった。

ベジタリアンと知りすき焼きに誘う  中村幸彦

拍手[6回]

時計の音する時計のない部屋で  岩田多佳子

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        ユニオン号

神戸操練所の元学徒は、天下の勝海舟に学んだだけあって、

それぞれが実践的な知識と技術を身につけ、

とりわけ航海術はお手のものであった。

龍馬が蒸気船を「俺の足」に、日本を走り回れた理由である。

亀山社中は『ユニオン号』という、蒸気船を買い入れるが、

これによって、龍馬および亀山社中の行動半径は、著しく拡大した。

「情報の先取りは、時代の先取りじゃきに、チーッとばかし金はかかったが、

 新式の蒸気船を買うことにしたぜよ。

 なにせ日本全国、はよう着くのがええ。

 海には面倒な関所もないしのう」

と、いうわけであった。

滝どどど君は力をつけました  山本義子

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    亀山社中

風雲急を告げる幕末である。

陸路の三分一で、目的地に着ける蒸気船の運用は、

勝負に差をつけ、情報の先取りに欠かせない手段となった。

≪組織に”先端機器”を導入し、その試みは成功したのである。

 そういう好条件も重なって、亀山社中は幕末には稀な会社組織として固まっていく≫

亀山社中の取り扱う物品は、武器、洋服から米まで、その品目は多岐にわたった。

しかし、時勢が時勢だけに、社中の取り扱い商品は洋式武器が主体で、

アメリカ南北戦争が終わったために、

不要となった銃器が、グラバー商会によって長崎に運び込まれ、

社中がそれを仲介し、顧客に引き渡す窓口になった。

社中の「利」は武器を仲介するマージンで稼ぎ出した。

顧客は長州である。

縦糸が進行形で戦好き  山口ろっぱ

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      高杉晋作

龍馬は、長州が幕府の第二次征長戦に備えて、

大量の新式銃を欲しがっているのを情報として、つかんでいた。

第一次征長戦では、長州藩が大敗して幕府に頭を下げた。

しかし、高杉晋作は、

「幕府に媚びた長州藩の態度は間違っている」 と大いに怒り、

みずから奇兵隊を率いて、幕府に決戦を挑もうとしていたのだ。

「この怒りは本物だ」 と悟った龍馬は、

どうにかしてアメリカ直輸入の武器購入を仲介しようとした。

ところが、幕府管轄が及ぶ長崎で、

長州者が堂々と、武器を買い付けるわけにはいかない。

手も足も借りて見事に今日が過ぎ  高橋はるか

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     坂本龍馬

龍馬は貪欲なまでに、これまで築いてきた人脈と、社中の機動力を利用した。

社中の大株主は、薩摩藩である。

そこで龍馬が考えついた案は、西郷隆盛に話をつけ、

薩摩藩名義で武器を購入させて、長州に引き渡すというものであった。

しかし、薩摩藩と長州藩は、”犬猿の仲”、

禁門の変では、久坂玄瑞ら長州を代表する志士が多数、

薩摩藩と結託した幕府軍に斬られた。

「薩摩は賊」と、敵愾心を露にしている長州と薩摩を、

結びあわせようとする龍馬の奇策には、西郷がもっと驚いた。

包丁を三日三晩も研いでいる  谷垣郁郎

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       桂小五郎

龍馬は一方で、

感情の高ぶっている高杉との接触は控えて、

長州藩の桂小五郎を口説き、馬関で、西郷と会談させる手筈を整えた。

ところが西郷は、長州を恐れてか、姿を現さなかったのである。

西郷の言い訳は、

「大久保どん(利通)からすぐ上洛せよと言われもうした」 

であった。

タヌキ寝かどうかボールペンでつつく  井上一筒

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長州はカンカンに怒り、西郷の心はつかめない。

絵空事に終わる”薩長同盟”と、思わざるを得ない状況にあって、

龍馬の胸中には、次の秘策が浮上していた。

「利」の効用に、目を付けたのである。

「利」の効用を使うはといっても、目的にかなう有効な手段とはならない。

長州藩は武器を欲しがっているが、

では、

薩摩藩は何が欲しいのか?

龍馬は、そこを亀山社中の情報収集力を使って、探ったのである。

一杯の水戦略を立て直す  中上千代子

その結果龍馬は、薩摩藩が「米」を欲しがっている事実をつかんだ。

藩は他藩に、自藩の食品を回すことはなかった。

軍事的なバランスが崩れるからである。

しかし、「そこはなんとか、俺が」 と、

掛け合うのが、龍馬の根性である。

龍馬の目の付け所は、的確であった。

長州が薩摩名義を借りて、武器を購入してもらう代わりに、

長州は薩摩に、自藩の米を贈ることで、めでたく話がまとまったのである。

背面跳びようやく空と向きあえる  兵頭全郎

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伊藤俊輔と井上聞多は、長州の代表として長崎に赴き、

亀山社中立会いのもとに、

薩摩名義でグラバーから、7700挺の洋式武器を買い入れてくる。

むろん表向きは、薩摩藩が武器を購入したことになり、

薩摩藩と手を組んできた幕府は、

当然のごとく、薩摩藩の軍備増強と思い込んでいた。

しかし思い違いとはこのことで、

7700挺もの南北戦争払い下げの新鋭武器は、

亀山社中の蒸気船で海路、長州馬関へ運ばれ、奇兵隊に横流しされた。

≪奇兵隊は迫る幕府戦に自信をつけ、薩摩は大量の米を贈られて喜び、

 亀山社中は仲介料で大儲けした≫

我が底をさ迷う虫をいとおしむ  松井美津子

武器の売買となれば、

幕府への気遣いから、売りを遠慮する外国商人の多い中で、

グラバーには、先見の明があった。

長州へ支払い条件を立て、

「米か絹でよい。そのなかに小判が交じっておればなお良い」

とした。

奇兵隊への支援を、約束したのである。

そのグラバーへ話をもっていった龍馬もまた、先見の明があった。

当時、善悪いろいろな商社がひしめきあい、

グラバー商会だけが、通商の窓口ではなかったからである。

龍馬のビジネスを通じて、薩摩と長州とのわだかまりは、溶けていく。

五円玉の穴満天の星が湧く  竹下くんじろう
 

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