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川柳的逍遥 人の世の一家言
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源氏物語片目つむって読む  雨森茂樹


   御 所

弘徽殿(こうきでん)とは、平安御所の後宮の七殿五舎のうちの一つ。

清涼殿に近く、後宮で最も格の高い殿舎であり、皇后・中宮・女御などが
居住し、転じて、弘徽殿を賜った后妃の称としても使われる。
女御の場合は「弘徽殿女御」とも呼ぶ。

限りとて 別るる道の 悲しきに いかまほしきは 命なりけり

「巻の1 桐壺更衣」

時は平安時代、舞台は王朝貴族たちが暮す京都の御所。

物語は光源氏が生まれる前、父と母の恋物語から始まる。

光源氏の父・桐壺帝は後宮に多くの女御を抱えていた。

逆に女御してみれば、競争相手が多いので、帝から選ばれるのは大変。

帝の子どもを宿せば、次期国王の母親になれるかもしれないのだ。

そんな時代、桐壺帝は奥ゆかしい桐壺更衣という美女を一心に愛し、

他の女御には目もくれず、ついに愛の結晶となる皇子が誕生する。

この子が光源氏である。

退屈してます耳うちまってます  美馬りゅうこ


「光源氏ー誕生」
さき                                                                                             をのこみこ
前の世にも御契りや深かりけむ、世になく淸らなる玉の男御子生れ給ひぬ。

いつしかと心もとながらせ給ひて、急ぎ參らせて御覽ずるに、珍らかなる、

兒の御かたちなり。  …中略…
      こまうど                   そうにん
その頃、高麗人のまゐれるがなかに、かしこき相人ありけるを聞召して、

宮のうちに召さむことは、宇多の御門の御誡めあれば、いみじう忍びて、

この御子を鴻臚舘につかはしたり。

御後見だちて仕うまつる右大辨の子のやうに思はせてゐて奉る。

相人驚きて、あまたたびかたぶきあやしぶ。

「國の親となりて、帝王の上なき位にのぼるべき相おはします人の、

 そなたにて見れば、亂れ憂ふることやあらむ。
おおやけ  かため   たす
 朝廷の固となりて、天の下を輔くるかたにて見れば、

 またその相たがふべし」
といふ。
            はかせ
辨もいと才かしこき博士にて、いひかはしたる事どもなむいと興ありける。
ふみ
詩など作りかはして、今日明日歸り去りなむとするに、かくありがたき人

たいめんしたるよろこび、却りては悲しかるべき心ばへを、

面白く作りたるに、
御子もいとあはれなる句を作り給へるを、

限りなうめで奉りて、
いみじき贈物どもを捧げ奉る。

朝廷よりも多く物賜はす。


おのづから事ひろごりて、漏らさせ給はねど、春宮のおほぢおとどなンど、

いかなる事にかとおぼし疑ひてなむありける。御門かしこき御心に、
やまとそう
倭相をおほせて、おぼし寄りにける筋なれば、今までこの君を親王にも

なさせ給はざりけるを、相人は誠にかしこかりけりとおぼし合せて、
むぼんしんのう
無品親王のぐわいせきのよせなきにてはただよはさじ、わが御世もいと
うど
定めなきを、ただ人にて朝廷の御後見をするなむ行先も頼もしげなる事と

おぼし定めて、いよいよ道々の才をならはさせ給ふ。

きはことに賢くて、ただ人にはいとあたらしけれど、

親王となり給ひなば、
世の疑ひ負ひぬべくものし給へば、

宿曜のかしこき道の人にかんがへ
させ給ふにも、

同じさまに申せば、源氏になし奉るべくおぼしおきてたり。


母の紬 鏡の中は母の顔  笠原道子

【辞典】
皇族は名字がないのが普通で、姓を与えられることは、
臣下として天皇に仕えなさいという意味になる。
源氏の名のきっかけは、「帝になる相もあるが、そうなると国は乱れる。
政治を補佐する人になれば、運命は変わるだろう」の占いからだった。



さほど身分が高くない桐壺更衣は、当然、帝を独占された位の高い他の

女御たちが激しく嫉妬。
こうきでん
特に弘徽殿女御という後宮のボスが中心となり、数々のいじめが始まる。

『どうして、こんなにもあの人を愛してしまったのだろう。

あの人は、誰もかばってくれる人を持たず、たった一人で怯えている。

私はそれをどれほどいとほしく思ったものか。

誰もがあの人を責める。

大臣たちは、自分を唐の玄宗皇帝になぞらえて、彼が楊貴妃をあまりに

愛したために国が乱れ、安氏の乱を招いたと私を諌めようとする。

だが私は桐壺更衣さえいれば、あとは何も望まない。帝の地位も権力も。

私は一人の女を自由に愛することさえできないのか。

私は、今にも消えようとするほど、可憐な、はかないあの人を

守ってやりたかった
だけだ。だが、あの人によかれとおもってしたことが、

すべてあの人を窮地へと
追い込んでいく」

たしかに、桐壺帝の愛は尋常ではなかった。


帝はまだ若かった。

愛する人を守るために、すべてを敵に回してもいいと
思うほどに、

若かった。

逢うための橋 哀しみの連鎖  佐藤正昭



ある日、桐壺更衣が清涼殿へと向かうために廊下を歩いていると、

そこには汚物がまき散らされていた。着物の裾は長いので、

このままでは裾が
汚物まみれにとても帝の前には出られない。

こんなこともあった。


避けては通れない廊下の両端の扉の鍵を他のお妃たちに閉められ、

閉じ込められてしまったのだ。

帝はそうした桐壺更衣が不憫でならない。

そこで自分の近くに住む一人の更衣を外に移して、そこに彼女を住まわせた。

外に移された更衣は、はらわたが煮えくりかえる思いで、

ますます桐壺更衣に対する憎しみを募らせる。

桐壺更衣は実家へ戻りたいと訴えたが、帝は彼女と離れたがらず、

それを許さなかった。

そうして、しだいに桐壺更衣は衰弱していく。

ひたすらに無になりたいのです今は  竹内ゆみこ

【辞典】
清涼殿は天皇の住むところ。長い廊下を通らねば行けない。
後宮とは、皇居の奥にある天皇の奥さんたちが住むところ。
後宮の中にある女性の身分、「女御」=大臣以下の公卿の娘。
「更衣」公卿またはそれ以下の娘。
帝の第一の后である中宮」は女御の中から選ばれる。
すなわち「更衣」は、中宮になる資格がない。

そして、桐壺更衣はそうしたいじめに耐えられず、ついには死んでしまう。

桐壺帝は、形見の子を大切に育て、占い師の予言に従い、

国王候補にせず「源氏」という姓を与える。

この子は母親の美貌を受け継ぎ、輝くような美しさであったことから、

いつしか「光」という字が付けられ「光源氏」と呼ばれるようになる。

それでも最愛の人を失った桐壺帝の悲しみは深く、

公務もままならないほどの日
々を送っていた。

「死んだ後まで、人の心をかき乱す、憎らしい女だこと」

弘徽殿女御は、いまだに容赦なく悪口を言う。

帝は一の宮を見るにつけ、源氏のことを恋しく思った。

桐壺更衣が死んだ今、その忘れ形見の源氏しか残されていない。

だが源氏は母の喪中のためいったん里にかえったままだ。

何度も使者を送って宮中に帰るようにすすめたが、

祖母の北の方が手放さない。


帝は彼女から送られた遺品のかんざしを見て、胸をつかれた。

これが幻術士が玄宗皇帝に贈った「かんざし」であったならと。

たづねゆく まぼろしもがな つてにても 魂のありかを そこと知るべく

【辞典】
楊貴妃を失った玄宗皇帝から依頼を受けた幻術士が、あの世で
彼女の魂のありかを突き止め、その証拠にかんざしを持ち帰った。

どの紐を切ったら楽になれますか  清水すみれ

そこに現れたのが、亡き恋人にそっくりの「藤壷という女性。

桐壺帝はさっそく藤壺を後宮に迎え深い愛情を注いだ。

そして,光源氏も亡き母親に生き写しといわれる藤壺を慕い、

その想いはやがて恋心に……。

外は雨恋と捻挫が痛むわね  桑原すず代

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