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川柳的逍遥 人の世の一家言
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かくも美しい平仮名を

わがこひは しらぬみちにも あらなくに まとひわたれと あふ人もなし
ひとりぬる ひとにきかくにかみなつき  にわかにもふる はつしぐれかな
亭子院にかつらのきをほりてたてまつるにき
みかくれて ふけゐのうらに ありしいしは  おいのなみにぞ あらはれにける
ことのはを つきのかつらに えたなくば  なににつけてか そらにつてまし
ぬしもなき やどにきぬればをみなへし、はなをぞいまはあるじとはおもふ

「源氏物語を語る前に」
                             はくし
寛平6年(894)は、新しい日本の文化が芽吹のき始めた年である。

それは遣唐使のマスターでもあった菅原道真が、その年の語呂もよろしく、

宇多天皇に遣唐使の白紙(廃止)を進言したことにはじまる。

遣唐使も取り止めることによって、平安後期(10~12世紀)になると

遣唐使が持ち帰った異国の文化は薄れ、襖絵や文箱の絵柄にみるように、

日本独自のものへと移り変るのである。

例えば、鸚鵡など異国の鳥が消えて鶴になり、鳥が銜える花やリボンは、

松になり、松喰い鶴の文様が生まれ、唐草に使われる植物も葡萄のように、

当時の日本にないようなものは廃れ、

秋草や紅葉のように情緒的なものが
好まれ、

日本人の素質が開花し始めるのである。

 
 文筆関係でみてみると、奈良時代から日本語を表記するため、

漢字の
音訓を借りた万葉仮名が使われていたが、

平安時代中期頃になると、
新たに生まれた日本独自の文字として、

カタカナや平仮名など、仮名文字が広く使われるようになる。

 こうして男性の持ち物のように使われていた堅苦しい漢字(漢文)も、

日本独自の仮名文字が一般化することにより、漢字より簡易であることから、

女性も用いるようになり、「通い婚」という当時の慣習とも重なって、

夫を待つ間などに日記や物語を書く女性が現れ始めるのである。



宮中では、時の権力者・藤原道長が、有能な女性を選抜し、

天皇に取り入るための子女の教育係として「女房」を近侍させ、

そして藤原氏に諂う中級貴族たちもまた、

藤原氏に取り入るべく子女の教育に努力を惜しまなかった。

 宮中の東宮という所は、江戸時代で言う大奥みたいなところで、

天皇が訪ねてこなければ、后も女房も時間をもてあますばかり。

こうしたあり余る時間を、知識が豊富な女房たちは、

何か話をとねだる后に、
創作でお伽噺を聞かせながら、

残る時間は、日記や随筆など、執筆活動にあてるようになる。


こうして、そこで生まれた作品が、宮廷や貴族の中で評判を呼んでいく。



ここに藤原道綱母『蜻蛉日記』を皮切りに、女性による日記文学が登場。

一条天皇の后に教養をつけるため形成されたサロンの「女房」の中から、

貴族の日常を鮮やかに描いた、紫式部『源氏物語』が誕生するのである。

紫式部は学者であった父の影響で、幼い頃から漢詩文が読める才女で、

執筆した源氏物語の評判が、時の権力者・藤原道長の耳に入り、

その娘で一条天皇の女御となる藤原彰子の筆頭女房として仕える事となる。

彰子が一条天皇の女御になる前には、一条天皇には、中宮の定子がいたが、

(史上初の一帝ニ后)、その定子の筆頭女房だったのが「枕草子」と綴った

清少納言である。

 いわゆる今風に言えば、清少納言は紫式部の先輩、または上司にあたり、

そしてライバルである。

ここに定子彰子イコール 清少納言紫式部の確執の絵図が生まれる。

意地悪で自尊心の強い紫式部は、清少納言を同列に見ることを許さず、

次のように悪口を『紫日記』に記している。

「清少納言こそ、 したり顔にいみじうはべりける人  さばかりさかしだち
真名書き散らして はべるほども よく見れば  まだいと足らぬこと多かり」

(得意げに真名(漢字)を書き散らしているが、
             よく見ると間違いも多いし大した事はない)

同時代の歌人仲間は、紫式部の人となりを次のように語っている。

和泉式部「素行は良くないが、歌は素晴らしい」

赤染衛門「家柄は良くないが、歌は素晴らしい」

 源氏物語には、「空蝉の巻」は紫式部自身のことといわれるように、

巻中には、清少納言や和泉式部や赤染衛門、藤原道長も出てくるから、

どれが彼らのことかを探りながら、読み進むと益々この小説が面白くなる。

世界でも読まれる源氏物語は、約1千年も前の11世紀初頭(1008成立)

紫式部によって執筆され、光源氏という世にもまれな王朝貴族の波乱に

富んだ人生を描いた長編小説である。

ここには、いつの時代も変わらぬ恋愛感情や親子の絆、さらには憎しみや

争い、悲しい運命など、今も新鮮な感動を与えてくれる沢山のエッセンスが

含まれている、と大体、ここまでのことが源氏物語クイズなどにも出るから、

知る人も多いが、中味のことを知る人は少ない。

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