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川柳的逍遥 人の世の一家言
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ステゴザウルスの背にキューピットの矢 酒井かがり


中君に久々に会えた匂宮

宿りきと 思い出でずは このもとの 旅寝もいかに さびしからまし

昔はここを宿にして泊まっていた。そんなことを思い出さなかったら
この木の下の旅寝も、どんなに寂しいことでしょうね。

「巻の49 【宿木】」

今上帝には、明石中宮のほかに静かな寵愛を受ける女御がいた。

その女御は姫をひとり産み、その姫が裳着を迎える年頃になって、

死んでしまう。


今上帝は残されたこの姫(二宮)の将来を心配し、婿を探す。

その候補にあがったのが

臣下の薫が皇女の夫に・・・世間的には非常な名誉なことである。

今上帝は、朱雀院女三宮光源氏に嫁がせた例を出し、

皇女は結婚しないという通例も問題ないと、薫にそれとない要請をする。

上澄みはポーカーフェイス心得る  美馬りゅうこ

帝の「それとない要請」とは、つまり命令みたいなものである。

薫は大君や中君への恋心があるものの、止むを得ず婚約を受け入れる。

この話を聞いた夕霧は焦った。

薫には、一度は断わられたものの、真摯に向き合い、正式に依頼すれば、

娘の六の君をもらってくれると考えていたからである。

でもこうなっては仕方ないと、当初の狙い通り匂宮に的を切り替え、

明石中宮へ薫のことで抗議し、匂宮を説得してくれるよう頼みこむ。

これに匂宮は抵抗できず、こちらも結婚を承諾してしまう。

匂宮も今は、中君と幸せに暮らしているのに・・・。

満月が歪んで見える肩の凝り  合田留美子


匂宮・六の宮結婚の夜

乗り気のないまま、結婚の日を迎えた匂宮だが、

夕霧と六の君の待つ
六条院になかなか行かないでいた。

愛しい中君に真相を言えず、ぐずぐずしていたのである。

たまりかねた夕霧が使いを出して、やっと顔を出す有様。

ところが実際に六の君を目の前にして匂宮は、その美しさに驚いた。

浮気性の匂宮は、二条院にあまり帰らなくなってしまう。

上弦の月か下弦の唇か  くんじろう

ひとり残され寂しい思いの中君は、亡き父の遺言に背いて宇治を後にした

軽率さを悔やむが、すでにお腹の中には匂宮の子を宿していた。

つわりによる悪さも加わり、気分は滅入るばかり。

やがて、宇治に帰りたいと里心が膨らみ、ついには薫を呼び出して、

宇治へ連れて行って欲しいと言い出すのである。

薫は今でも、亡き大君に似た中君に恋心を抱いている。

匂宮の許しがないと無理だと言いつつ、御簾をくぐり中君に迫る。

言葉を尽くし口説く薫に、中君は泣いて抵抗すると薫はあきらめた。

薫は、中君が懐妊のため腹帯しているのを悟り、無理に迫れなかったのだ。

冬空に首つっこんで手のやり場  森田律子

薫が帰ったあと、久々に匂宮が二条院に戻ってきた。

そこで匂宮は、中君に薫の匂いを嗅ぎとり、

「不義をはたらいたのか」
と問い詰める。

中君は匂宮の形相の恐ろしさに泣くばかり。

やっとのことで「移り香くらいで、私を嫌いになるのですか」と言い、

泣きじゃくる中君に、匂宮は疑惑はあっても彼女への愛しさは変わらない。

それから匂宮は中君を奪われてはならぬと、二条院から出ないようにした。

しかし薫の住む邸は二条院のすぐ近く、匂宮のちょっとした外出もすぐ分る。

そこで薫は、隙を縫ってはまた、中君のところへのこのこ出かける。

白い息すべては胸に秘めておく  桑原すゞ代

しかし今度は中君が用心をして、女房を傍に控えさせていた。

どうしても中君が諦めきれない薫は、中君が振り向くような話題を振る。

「八の宮と大君を弔うため、山寺に御堂を造営する計画がある」

と、
言うのである。

そんな薫の熱心さにほだされた中君は、

「大君によく似た人が宇治にいますよ」

と、
自分からも薫が興味持ちそうな話題を振る。

大君にも中君にとっても、異母妹になる浮舟のことである。

薫は、気を逸らそうとしているだけだと、気にも留めずにその日は帰った。

アドリブが右斜め前からピョコン  雨森茂樹

9月になり、薫は久しぶりに宇治を訪れた。

八の宮と大君を弔うために、山寺に造営中の御堂を視察するためである。

そして今は尼となったと会い、大君の思い出話しをしているついでに、

中君が言っていた「大君にそっくりな人」のことを薫は言い出してみた。

弁は、人から聞いた話しだと前置きし、

それは八の宮が山荘へくる以前、20年前のころ奥様が亡くなり、

弁とも血縁のある人で、奥様の姪に当たる人の世話を受け、

なりゆきで愛人にした女性が、産んだ子だという。

そして今は、常陸介の継子となっている事実を知る。

玉葱を輪切りにしたいこんな夜  木口雅裕


 中君男児を生む

翌年2月には、中君が無事男児を出産、続いて薫も女二の宮と結婚したが、

薫の頭の中を占めているのは、宇治の御堂のことだった。

宇治詣での帰りに宇治に寄った薫は、偶然にも浮舟の姿を垣間見る。

若い女房が一人車からおりて主人のために簾を掲げていた。

恥ずかしそうにおりて来る人を見ると、全体のほっそりとした姿は

薫に昔の人を思い出させるものであろうと思われた。


扇をいっぱいに拡げて隠していて、はっきりと顔は見られない。

そのため薫は、期待とともに
胸騒ぎを覚えるのだった。

会った瞬間ビビビッと来ました  川畑まゆみ

【辞典】 新たなヒロイン

この巻の終盤、薫がちらりと覗き見た新しいヒロインが登場する。
まだこの巻では名前は示されていないが、重要な人物なので少し紹介。
薫が聞いた弁の話によると、この女性「浮舟」は八の宮の娘だという。
歳は20歳前後、大君や中君の異母の妹にあたる。
そもそもは八の宮が
妻を亡くしてまもない頃の話で、まだ俗聖などとも
呼ばれる前のことである。

八の宮は仕えていた中将の君という女房に手をつけ、孕ませてしまう。
しかし、八の宮は煩わしいことを嫌い、その中将の君を見捨ててしまう。
これに懲りて八の宮は、仏道にいそしむ俗聖になっていったのである。
 一方、見捨てられた中将の君は、別の夫を見つけ、その赴任地で一緒
に暮らすようになる。夫は(常陸守)である。
今回、浮舟が宇治の山荘に来たのは、初瀬へのお参りの帰りであった。
中将の君と弁とは血縁関係もあり、ときどき山荘を利用していたのだ。

指あてて唇を読む風を読む  嶋沢喜八郎

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