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川柳的逍遥 人の世の一家言
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コロコロ携え草ぼうぼうの駅に立つ  山口ろっぱ


 浮舟と匂宮

橘の 小島の色は 変わらじと この浮舟ぞ  ゆくえ知られぬ

橘の小島の色は変わらず、ずっと同じでいられるのでしょうが、
この浮舟のような私の身の上は、どこへ行くのか分らないのです。

「巻の51 【浮舟】」

浮舟のことが忘れられない匂宮は、中君に届いた手紙から、

浮舟がに匿われていることを直感する。

夜も遅く宇治を訪れた匂宮は、山荘の戸を叩いた。

右近は、格子を叩く音を聞きつけて「だれですか」尋ねると

咳払いが聞こえ貴人らしい気配に、薫が来たものと思いこんだ。

「はやく戸をあけておくれ」 声は薫に似せ、

低い声だから違う人とも疑わず、右近は格子をあけ放した。


「道でひどい災難にあってね、恥ずかしい姿だから、灯を暗くして」

と言われるものだから、右近はあわてて灯を遠くへやってしまった。

盆栽は松の自意識踏みにじり  杉浦多津子

匂宮はそのまま薫になりすまし、浮舟の寝室に入り契りを交わしてしまう。

浮舟は漂う匂いに男が薫でないことを悟った。

浮舟はその行為のあさましさに驚いたが、相手は声も立てさせない。

あの二条の院の秋の夕べに人が集まって来た時にも、

この人と恋を成り立たせねばならぬと、狂おしく思った人だから、

激しい愛撫の力でこの人の、意のままに任せたことは言うまでもない。

初めからこれは潜入者であると知っていたなら、

今少し抵抗の仕方もあったが、こうなれば夢であれと思う浮舟であった。

整列も右向け右も苦手です  森田律子


匂宮と浮舟宇治川を渡る

何日か経って薫が宇治にやってきた。

申し訳のなさと後ろめたさがあって浮舟は、ろくに話もしない。

長く逢えなかったことが寂しいのだろうと考えた薫は、

「貴女のために建てている邸がもう出来上がるから、すぐ京に迎えるよ」

と優しい言葉で浮舟を慰める。

2月が過ぎて、匂宮は宮中で何気なく歌をくちずさむ薫を見かける。

浮舟が心から離れない匂宮は、薫のその姿に、たまらない悔しさを感じ、

無理を押してふたたび宇治を訪れる。


雪の中を宇治にやってきた匂宮は、山荘から浮舟を連れ出し、

用意させていた小舟に乗せて宇治川を渡り、対岸の別荘に籠もる。

浮舟は抵抗するすべもなく、過激で手慣れた匂宮の情愛を受け止め、

そのまま燃えるような2日間を過した。

野暮なこといいっこなしの膝と膝  田口和代

匂宮の深い情にほだされた浮舟は、薫への罪悪感があるものの

匂宮に惹かれはじめていく。

とはいえ、何日も逗留しているわけにもいかない、

匂宮は翌日、
浮舟に「必ず迎えにくる」と約束して京に帰っていく。

そうとは知らない薫は、浮舟を京に迎える準備に忙しい。

浮舟の母である中将の君も大いに喜んだ。

それらを目の当たりにして浮舟の心は、薫と匂宮の間で揺れ動く。

飛んでいる一線越えたあたりから  通 一遍

京に帰った匂宮は、薫の建てる浮舟の家が4月頃の完成すると知る。

そこで負けじと、匂宮は3月末に入居できる邸を手配する。

薫も匂宮もそうした進捗状況を、愛の言葉を添えて浮舟に知らせる。

浮舟は2人の狭間で、思い悩むばかり。

けなげに世話をしてくれる薫。

こころの赴くままの情熱的な匂宮。

浮舟は、今はもう自分が生きているのが悪いと、思うようになっている。

針の穴心の穴と計りかね  河村啓子

浮舟の心中も匂宮のことなども露知らず、薫は浮舟を迎えることに必死。

今では、中将の君からも信頼され、宇治でも引越しの準備がすすむ。

そんな薫が、ふとしたことから浮舟と匂宮の関係を知ることになる。

薫の手紙を送る使者が、別の恋文の使者と行き合い、

後をつけてみると匂宮の使者だったというのだ。

そういえば思い当たる節がいくつもある。

しばらくぶりに逢ったときの浮舟の様子がおかしかったのも、

そのためだと思われてくるのだった。

親友が僕の彼女を横取りに  樋口百合子

薫は、匂宮の非道さを恨んだ。

しかし、東宮候補である人物と表立って争うことはできない。

薫は、嫌みを込めた手紙を浮舟に送り、山荘の警備の杜撰さを叱った。

当然、警備は強化される。

山荘を囲む大勢の警備、薫から不実を攻め立てられる手紙、

浮舟は、この上は自分が死ぬしかないと入水を決意する。

冬の絵にストンと落ちて終わる恋  上田 仁

浮舟は匂宮から来た、3月末には京に迎えられるという手紙にも、

返事を書いていない。

たまらなくなった匂宮は、また宇治へやってくる。

しかし今度は山荘の周りに大勢の警備がいて、易々とは近寄れない。

匂宮は離れた場所で待機し、供人に様子を見てくるよう促す。

供人が連れ戻ってきた浮舟の侍従は、

「今日は無理です。どうかお帰りください」と泣きながら事情を説明する。

仕方なく匂宮は引き揚げた。

侍従は匂宮が泣く泣く帰っていったことを浮舟や右近に話す。

夕焼けも入る鞄を携える  合田留美子


仲睦まじい浮舟と匂宮

匂宮を断わり帰してからも浮舟の煩悶はつづいた。

匂宮の描いた絵を出して眺めているうちに、その時の手つき、

美しい顔が
まだ近い所にあるように見えてくる。

そんなにも心から離れない方だから、

最後にひと言の話しもできなかった
昨夜のことは、悲しくてならない。

初めから同じように「永久に愛して変わらない」と言ってくれた薫も、

自分が死んだ後、どんなに歎くことだろう、

その人への恋を忘れた心変わり
で死んだのだと言う人もあろうと、

想像するのも恥ずかしいことだったが、


軽薄な心で匂宮に奔った、と薫に思われるよりは、まだそのほうがいい。

節くれ立つ手は命の匂いする  池田貴佐夫 

母も恋しかった。

平生は思い出すことも、逢うこともない異父の弟や妹も恋しかった。

二条の院の女王を思い出してみても、恋しい。

またその他にも、もう一度逢いたいと思われる人たちがいっぱいいる。

夜に人に見られずに家を出て行くのは、どこをどうして行けばいいか

などという考えばかりが奔って、なかなか眠りつけない。

朝になれば川の方を眺めながら「羊の歩み」よりも早く

死期の近づいてくることが悲
しかった。

死ぬ覚悟をしている自分とも知らず、心を遣ってくれる母の愛が悲しい。

浮舟は仏へ敬意を表する型として、帯の端を肩から後ろ向きに掛け、

経を読み続けた。


親よりも先に死ぬ罪が許されたいためである。

いつも負を捜して濁る水たまり  宮井いずみ

【辞典】 匂宮から絵のプレゼント

匂宮が突然現れ、浮舟と強引に契りを交わした次の日、
匂宮は自分の置かれた
立場も顧みず、ここに残ると言い出した。
本当に手前勝手で情熱的な匂宮である。
その日は一日中、匂宮は飽きること
なく浮舟と睦みあい浮舟も女の扱いに慣れた
浮舟に惹かれていく。
さて、その時に匂宮は浮舟にちょっとした贈り物をしている。

男女が2人仲良くしてえいる姿を筆で描き、浮舟に
「寂しいときには、この絵を見て
心を慰めてくださいね」と渡し、
「いつもこうしていたいのですよ」と涙にながらに言う。

そんなことをされたら、色恋の経験が浅い浮舟の心はメロメロに。
しかもその絵はとても上手。こんなプレイボーイの資質は、祖父の光源氏
ら受け継いだもの。さらに絵の才能も光源氏から引き継いだものなのだ。

ひと通り遊びましたと鹿威し  美馬りゅうこ

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