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川柳的逍遥 人の世の一家言
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褒められてスパンコールになりました 美馬りゅうこ


  『日本百美人』

「文芸倶楽部』(明冶41年)上下2枚の大判に50名ずつ掲載。
読者投票で9万票を獲得し一等となった萬龍など、
美人芸妓が名を列ねている。


「明治の美人コンテストー②」

当時の社会状況を端的に表すエピソードがある。

学習院中等部に在学中であった末弘ヒロ子を、

美人コンテストに
推挙したのは、姉の夫、義兄にあたる人で、

可愛い妹を自慢するつもりで、本人にも家族にも無断で送ったのだった。

後になってそれを知ったヒロ子が、

「もし選に入ったりしたら学校で叱られます。どうか取り戻して下さい」

と泣いて抗議するも、運良くか、運悪くか、1等に当たってしまった。

学校でも、世間でも評判になるのは当然のなりゆき。

それに噛み付いたのが、当学院院長の乃木希典であった。

二等辺三角形の斜辺にて迷う  清水すみれ


 『日本美人帖』中の各地の一次審査通過者。

芸妓のような「くろうと」感はなく、
着るもの等に工夫をこらしオシャレする一般参加者たち。

「女子部にありては、軽佻浮薄の弊を戒むるに努め居れるが、

   先頃某新聞社が美人写真募集せしみぎり、

   2年末広ヒロ子が、1等と発表せられしに至れり。

   良妻賢母を育てる教育方針のなかで、

   自分の容姿を誇示することは、
生徒としてあるまじき行為」

 「良家の子女が自分の容姿美をひけらかすとは何事だ

   他の生徒の取締上停学、又は諭旨退学に処す」

本人は優勝したことに困惑して、

「写真は一等かもしれないが、自分は一等でない」

と、一等の報告に出向いた記者に話したが、

学校側の一方的な見解によって、
結局は退学処分となった。

(教育現場の最重要課題である良妻賢母を育てることに反する行為
 として受けとめる層が、厳然として存在したのである。)

接木して踏み絵をひとつしのばせる 上田 仁


   森 律子

一次審査通過者となった律子は帝劇女優養成所を主席で卒業し、
帝劇女優第一号として活躍した。

入賞者のなかには、これを契機に社会へ飛び立つ女子も存在した。

前国会議員令嬢の森律子は、帝劇女優一号として活躍し、

雑誌の化粧品広告にも、多数登場している。

しかし、当時の女優の社会的地位は極めて低く、

女学校の交友会から脱会させられた。

弟の一校祭にでかけると、

「女優風情に神聖な校庭を汚された」
塩をまかれた。

ミスコン出身出身令嬢の女優は、相当に目立つ存在だったであろう。

目立つ姉のことも影響してか、弟は数年後に自殺したという。

シーソーも @マークも雨ざらし  森田律子

   
   
 左、『婦人世界』(大正2年)に掲載、白粉広告の森律子と

『婦人世界』(明治41年)掲載の乳白化粧水レート広告の土屋ノブ子。

律子は舞台に立とうとした動機について、

「婦人が男に余りに頼りすぎているような感じがするし、

   依頼心の増長等につながり、身体の弱くなる素だ」

と話している。

ほか、三等の土屋ノブ子など、

化粧品のイメージキャラクターとして登場する令嬢もいた。

二次審査通過者214名の写真集『日本美人帳』をめくってゆくと、

日本髪に和服、女学生姿、洋風の髪に着物、最先端のアールヌーヴォ―

スタイルの洋装に洋風の髪の令嬢たちが、

おしゃれに工夫を凝らしている。


表情の硬さは否めないが、明冶美人の凛とした姿がそこにある。

鏡には映らない顔模索する  都司 豊


  「日本美人帳」(一般応募者)

一冊の写真帳は、深窓の令嬢が歩みだした小さな一歩が、

大きな未来へつながることを語っている ようだ。

令嬢写真競争の噂は全国に広まったのであろう。

時期を同じくして「文芸倶楽部」が、

明冶41年新年号付録に、
『日本百美人』を発行した。

全国から集まった芸妓三千枚の写真から百枚に絞り込み、

読者投票で20名の美人芸妓を選ぶという趣向であった。

許すってちょっと広めの歩幅だね  山本昌乃


高島屋呉服店用 クラブ化粧品広告の芸妓たち

ここでは9万票を獲得し、明治を代表する美人芸妓、

赤坂の萬龍が一等となった。

また明冶44年、「日曜画報」も『新全国百美人』の選抜を行なった。

こうして美人芸妓は、全国的に知られる存在となっていった。

ちょうどそのころ、芸妓の写真絵葉書もブームとなり、

人気タレントのプロマイドのように全国に流布していった。

やはりこちらでも筆頭は、萬龍であった。   <津田紀代>

(萬龍の写真は12月2日の明治のファッションにて掲載)

蓋は勝手に開きます念のため  森田律子

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