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川柳的逍遥 人の世の一家言
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くどくどと昔のことはええんちゃう  田口和代


  毛利敬親

三代続けて藩主が急死し、若くして藩主となった。

政治は村田清風と藩政改革に取り組み、抵抗が強まると別の人材を登用。

ちまちま・くどくどしたことは聞かず、家臣の判断を信頼、尊重し、

大方のことは、家臣の思いを受け止める寛大な藩主であったようだ。

「そうせい候」と呼ばれたのもその辺に理由がある。

『人こそこの長州の宝』 は毛利敬親の言葉。

遠心分離機に胡麻のプロファイル  中村幸彦

幕末の長州といえば、吉田松陰、高杉晋作、久坂玄瑞、

桂小五郎といった「志士」たちの名は次々と挙がるが、

藩主の名が挙げられることはほとんどない。
                     ひでなり
長州の藩主は、毛利輝元の子・秀就を初代とし、

代々の毛利家当主によって受け継がれていた。
                              たかちか
そして幕末の藩主は、13代目にあたる毛利敬親であった。

この殿様はどのような人物だったのだろう。

牛の涎からおおよそ見えること  井上一筒
                なりもと
敬親は11代藩主・毛利斉元の子として生まれるが、

17歳の頃に父が急死し、
                                 なりひろ
その跡を継いで12代藩主となった婿養子の毛利斉広も、

幕府への手続きが済んでから、わずか20日足らずで亡くなった。
                             なりひろ
実はこの年、10代目の藩主を務めた毛利斉煕も急死したばかり。

奇妙なことに長州藩は同年に、3人の藩主を亡くしているのだ。

花柄の柩が予約してあった  米山明日歌


    村田清風

そのため急遽、敬親は第13代藩主に就任することになった。

若干19歳の時である。

当時、長州が財政難に苦しんでいると聞いた敬親は、

木綿の質素な服装で江戸から長州入りし、

国民に好感をもたれたという。

また、長州に赴任した後、「百姓というのはどんなものか」と、

庶民の目線にたって、

自ら田植えや稲刈りを行なったこともあったようである。

そして若い敬親にとって幸いだったのは、

9代目から毛利に仕える村田清風のような有能な家臣がいたこと。

清風は、「質素倹約と貨幣流通の改正」を敬親に提案し、

これを成功させて藩の財政を立て直した。

村田の死後、ともに藩政の改革を担った坪井九右衛門を登用し、

政務を執らせた。

浮いてさえいれば何とかなるクラゲ  原 洋志


 御前講義・松陰絵伝

敬親が藩主となって3年後の天保11年、ひとりの少年が萩城を訪れた。

その少年の名は吉田寅次郎

11歳にして「山鹿流兵学」を指導する、

教授見習いとなっていたため、特別に城に招かれたのである。

寅次郎の堂々とした講義を聞いて、

敬親はいたく感心し、秀才ぶりを称賛。

自分よりも11歳も若い寅次郎の門下となることを決め、

毎年城にきて講義するよう頼んだ。

「儒者の講義はありきたりの言葉ばかりが多く、

   眠気を催すが松陰の話は自然に膝を乗り出すようになる」

と褒めたとする逸話が伝わる。

止まったらすぐ追いついてくる眠気  一階八斗醁    



後に松陰が投獄され、藩政を批判する文を送ってきたときも、

「寅次郎の心を慰めてやらねばならぬ。

   思うことをすべて書かせ、余に見せるように。

   採択するのは余じゃ。

    誰にも迷惑はかけはせぬ」

と言うほど、彼を買っていたのである。

その後、長州藩は幕末動乱の中へ飛び込んで行くが、

敬親は若い者を登用して積極的に用いた。

これは罠かしら信号青ばかり  丸山芳夫

彼の政治姿勢としては、家臣の意見に対して、

異議を唱えなかったことが有名である。

「うん、そうせい」と返答していたため、

「そうせい候」と呼ばれたほどであった。

このように寛大な藩主だからこそ、

長州は身分の隔てなく、有能な志士に活躍の場が与えられ、

明治維新への原動力と成り得たとも考えられる。

短命な藩主も多かった長州藩にあって、

敬親は歴代二位の32年にわたって藩主を務めた。
                 もとのり
明治2年になって子の毛利元徳に家督を譲り隠居。

明治維新を見届けた後、2年後に53歳で世を去る。

大根の太さと比べられている  日下部徳子

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