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川柳的逍遥 人の世の一家言
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れんげ菜の花この世の旅もあと少し  時実新子

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  保元物語絵図

「清盛VS信西」

まさか叔父・忠正に死罪が言い渡されるとは、

清盛は予想すらしていなかった。

「・・・い・・・、いかなることにござりますか」

「帝に背き奉ったは大罪。命をもって償うほかはない」

「わが叔父が上皇側に与したは、

  帝への背信からではないと申したはず!」


「武士の本分は帝への忠誠。

  それを忘れたはれっきとした罪ぞ!よう考えよ。

 世の乱れが行きつく所まで行きついたがこたびの反乱。

 生ぬるい処分をすれば世の中の乱れは収まらぬ」


聞こえない耳の笑えない耳朶  黒田忠昭

清盛は、なんとしても処分を撤回させようとする。

「古にはあった。死罪が廃されたは、

  世がそれを要さなんだため。

 それに値する罪を犯す者あらば執り行うが道というもの」


「・・・だからと言うて、身内を斬れとは非情に過ぎる。

  もとは王家、摂関家の争いに巻き込まれ、

  命賭けで戦うた武士が、なにゆえこのうえ、

 さような苦しみを背負わなければならぬ!」


声にして強い呪いに変えなさい  広沢 流

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必死に食らいつく清盛に、信西は冷笑を浮かべた。

「なにゆえじゃと?

 それはそなたちが武士であるゆえじゃ。

 世の乱れを正すため、武士が命賭けで戦うは道理、

 逆ろうた者を斬るも道理」


「いつまで武士を犬扱いするおつもりか!」

声帯を地割カオスが漏れだした  墨崎洋介

「これがあの信西か」

と、清盛は裏切られた思いがする。

亡き忠盛を三位に昇任させようとしない朝廷に失望し、

「道理」が通じぬ世を嘆いて、出家したのではなかったか。

「従わぬなら官位を剥奪するのみ。

  先だって与えた播磨守の職は無論のこと、

 土地財産もみな没収じゃ・・・!!」


「卑怯ぞ・・・!!」

腕力で信西をねじ伏せるのは容易だが、

清盛は一門のためにと懸命にこらえた。

「こたびの沙汰は、帝の御名にて下されたもの。

 私を卑怯と罵るは、帝を罵るに同じと心得よ。

 二度と申してみよ、

 平氏一族郎党、女、子供たちに至るまでみな死罪ぞ」


信西の恫喝は、鋭利な刃物のようだった。

すり寄って蹴っとばされたことがある  安土理恵

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[保元物語よりー忠正誅殺の事]

平忠正は、浄土の谷というところで出家して、

深く隠れていた。

が、為義入道「降参してしまった」

と噂に聞き、子どもたち四人を引き連れて、

ひそかに、甥の播磨守・清盛を頼って出てきた。

背泳ぎをみごとこなして山笑う  前中知栄

が、しかし、

平忠正(馬助)、嫡子・長盛、次男・忠綱、

そして、三男・正綱、四男・通正の五人を、

勅命により清盛は、六条河原にて斬首した。

忠正は、当時の別当花山院中納言・藤原忠雅と同名で、

具合が悪いからと、

忠員(ただかず)と改名した上での処刑であった。

時申刻頃(午後4時ごろ)であった。

わが死後の乗換駅の潦  大西泰世

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この忠正と言う人は、桓武天皇11代の末裔、

平貞盛から六代の孫にあたる、

讃岐守・平正盛の次男である。

そして、この平忠正と言う人は、軍を解散してから、

出家入道し身を隠していたのですが、

清盛を頼って行けば、

「そうはいっても命だけは助けないことはまさかあるまい」

と思って出頭し、降伏したのであった。

断捨離といっても五欲握りしめ  片山かずお

本当に忠正を助けようと思うならば、

それなりに何か出来たでしょうが、

本当に叔父を助けようとすれば、

このような結果にはならなかったのに、

叔父と甥の間柄が不仲であったうえ、

自分が忠正を斬れば、

義朝にもきっと、父・為義を斬らせることになるだろう。

もし、誰かが寛大にも、叔父・忠正を許そうとしても、

この理屈を楯に反対をしようと、

悪い知恵を持たれることも、恐ろしい限りだった。

ネストリウス派のどくだみの煎じ方  井上一筒

また一族を率いて、崇徳上皇方に参加した平家弘は、

味方の敗戦が決まり、総崩れとなると、

子の光弘らとともに、上皇を警護して戦場を脱出したが、

源義康に身柄を確保され、

長男・安弘、次男・頼弘、三男・光弘

そして正弘の五人とともに、大江山で処刑された。

また家弘の弟、平度弘和泉信兼が主上の命を受け、

六条河原で斬首した。

泣ききって早く日めくり明日にしよ  喜多川やとみ

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「保元物語よりー信西の事」

「今改めて死刑を行うべきではない。

 とりわけて、故上皇の御中陰である。

 それぞれご赦免なさればよろしいであろう」


と、多くの主上が、おのおの一同に意見をあわせ、

死刑反対を唱える中で信西は、

「この言上(過去の例)に随うべきではありますまい。

 多くの兇徒を諸国に分けて、遣わしましたらば、

 きっとまた兵乱のもととなるでしょう。

 そのうえ非常時の決断は、


 人君がしたいようにせよという文章もございます。

 世の中のことが尋常ではないことには、

 君主の命令によって、判断するということです。

 もし慣例に従って間違いが起きた際に、


後悔してもなんの役に立ちましょうか」

と立ちはだかったので、

謀叛に加わった者は、皆斬られた。

嵐の中で泣きたいの二乗  蟹口和枝

まことに国に「死刑」を行うと、

「かえって天下に謀叛人が絶えないと申すのに、

 多くの人を誅殺なさったことは驚くべき事だ」


 実に弘仁元年に、藤原仲成が誅されてから、

 帝王26代、年にして347年、

 絶えていた死刑を行ったのは、ひどいことだった。

カサコソと抱いた骨壷から返事  桑原伸吉

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