忍者ブログ
川柳的逍遥 人の世の一家言
[262] [261] [260] [259] [258] [257] [256] [255] [254] [253] [252]
まちがいなく顔だ眼がある虚ろがある  中野六助

4f7ffc9f.jpeg

     馬上の義朝

(画像をクリックすると大きくなります)

「保元物語よりー義朝の弟たちの誅殺」

左馬頭(義朝)に重ねて宣旨が下って、

「お前の弟たちを、みな捜して連れて来い。

  とくに為朝とかいう奴は、

  主上の鸞輦に、矢を放とうなどと申した不届きな奴である。

  捕らえて誅せよ」


とある。

問答無用ト短調の夕陽  酒井かがり

義朝は畏まって、ほうぼうに武士を遣わして捜されたので、

ここそこから,弟たちを捜し出した。

為朝は敵が寄せて来ると見たので、

どちらともなく失踪した。

四郎左衛門頼賢、掃部助頼仲、六郎為宗、七郎為成、

九郎為仲、
以上の五人の人たちを、都の中には、

入れてはいけない、とご命令なので、

すぐに舟岡山へ連れて行った。

五人みなで馬から下りて並んでいた。

赤い糸今更白に変わらない  森 廣子

eec6dbd4.jpeg

末期の水を与えると、

おのおの畳紙(たとうがみ)でこれを受けたその中で、

頼仲がこの水をとって、唇を拭ってから申したには、

「私は幼少から人の首を斬ったことが数多くある。

そうした罪の報いだろうか、

今日の私の身の上になるのだろう。

兄でいらっしゃるから、頼賢殿が先立って、

お供申すべきでしょうが、


戦においては君命はなく、戦場でも兄の礼なしと申すので、

死を先にする道も、強いて礼を守らないでもよいでしょうか」


散りかたを教えてくれたのは木の葉  佐藤美はる

「そのうえ(先にしたい)仔細がございます。

  日頃皇后宮の中で、言い交わしている女がある。

  昨夜も来て目通りしたい ということを申しましたが、

  叶わないことを、心を鬼にして申して返しました。

  きっとまた,今日も訪ねてくるでしょうと思われます。

  最期のありさまを見ても仕方なく、

  また不覚にも涙を流すのも本本意ではありませんので、

  先にさせていただきます」


「六道のちまたで、必ずお会いいたしましょう」

と申して、直垂の紐を解いて、首を延ばして斬られた。

花束の絶叫おくり付けられる  真田義子

その後、四人みな斬られた。

みな立派に見えた。

次の日に陣へと首実験のため持たせて差し上げた。

左衛門尉信忠がこれを実験する。

獄門にはかけられないで、

穀倉院の南にある池のほとりに捨てられた。

これは、故上皇のご中陰であったらである。

生涯は一度落花はしきりなり  大西泰世


fed78109.jpeg

「保元物語よりー孝・忠・信・義」


「死刑復活」、その中でも義朝に父を斬らせたことは、

前代未聞のことではないだろうか。

一方では、朝廷のご判断の誤りであるし、

また他方では、義朝自身の不覚である。

勅命に背くことはできないということで、

父を誅するのは、『忠』というのだろうか。

朝日にかざすサムライの行方  酒井かがり

『信』というのであろうか。

もし、『忠』だというのであれば、

忠臣を、『孝子』の門に求めるといえるのだろうか。

また、もし『信』だというのであれば、

「信を義に近くしろ」といえるのだろうか。

『義』に背いてどうして、「忠信」に随(したが)えるだろうか。

ヤツデの葉の先に解答が八つ  井上一筒

feaf9c2a.jpeg


     源為義

古い文章に

「君はいたって尊いけれども、いたって近くはない。

  母はいたって親しいけれども、いたって尊くはない。

  父だけが、尊く近しいものである」


と言う。

だから、母よりも尊く、君主よりも親しいのは、

ただ、父だけなのだ。

冬という茶鼠色の父のこと  河村啓子

どうしてこれを殺そうか。

「孝」を父にとり、「忠」を君主にとる。

もし
「忠」を主として、父を殺したらば、

「不孝」の大逆、「不義」の至りである。

だから、すべての行為の中で、

「孝行」を先にするといい、

また、三千の罪の中で、

「不孝」より大きいものはないという。

こめかみに降りしきる軽佻浮薄  山口ろっぱ

しかし、まさに大きな罪を犯した者を、

父だからといって、助けたらば、

政道を汚すことになるだろう。

天下は、彼一人の天下ではないのだから。

もし、政道を正しくして刑を行えば、

またたちまちに「孝行」の道から背くことになる。

明君は孝行でもって、天下を治めている。

「だからただ父を背負って、位を捨てて、去るのがよいのだ」

と判じた。

判決を言います第九唱います  花森こま

64e4b912.jpeg

まして、義朝の身においては、尚更である。

まことに助けようと思ったならば、

どうしてその方法がなかったろうか。

恩賞に申し替えても、

たとえ我が身を捨てても、

どうして父を救わないだろうか。

他人に命令されたのであれば、力及ばないことである。

ほんとうに「義」に背いたために、

並ぶもののない「大忠」であったけれども、

とりたてて恩賞があるわけでもなく、

結局いくばくもしないで、

その身を滅ぼしたことこそ、呆れてしまう事である。

六道の是非すべからく荒物屋  きゅういち

拍手[1回]

PR


Copyright (C) 2005-2006 SAMURAI-FACTORY ALL RIGHTS RESERVED.
忍者ブログ [PR]
カウンター



1日1回、応援のクリックをお願いします♪





プロフィール
HN:
茶助
性別:
非公開