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川柳的逍遥 人の世の一家言
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言うにいわれぬものまで飲み込んだ喉だ 竹内ゆみこ


  月 照

二つなき 道にこの身を 捨て小船 波立てばとて 風吹けばとて

或いはこれが、西郷の辞世になっていたかも知れない句である。

「西郷どん」 月照と重助

文化10年(1813年)月照は大坂の町医者・玉井宗江の長男として生まれ、

13歳のとき出家し京都清水寺・成就院の蔵海に学び、

23歳で師席を
ついで清水寺の住職となった。

憂国の志篤く、諸藩の志士と交わり、ペリー来航後
世情が騒がしくなると、

安政元年(1854)寺を弟の信海に譲り、梅田雲浜、
頼三樹三郎らと

尊王攘夷の運動に奔走しはじめる。
                          ただひろ
西郷隆盛とは、篤姫の養女手続きの付き添いとして
近衛忠煕邸に出入り

している時に知り
合い、親しく付き合う仲になる。

あなたへの思い三角相似形  和田洋子

暫くして安政5年7月、薩摩藩主・島津斉彬は急な発病から急死する。

その死は、当時流行っていたコレラによるものとされているが、

斉彬の嫡子
もすでに既に死去したことなどを合わせて、毒殺の説もある。

死因についてはともかくとして、斉彬の死は西郷にとっては、

非常に大きな
出来事であった。

自分を高く評価し、強い信頼関係で結ばれていた主君
の死に西郷は号泣し、

一度は殉死しようとしたほどである。


この殉死を止まらせ、斉彬の遺志を継ぐことを決意させたのが月照である。

切腹は紙の刀でさせてやれ  井上一筒

その後、月照は西郷らと京都で、井伊直弼への反抗運動を行っていたが、

世に言う安政の大獄で、懇意の仲間の梅田雲浜、頼三樹三郎
らが捕らわれ、

幕府の追求がいよいよ激しくなったこともあり、京都を
脱出を決める。

西郷と大阪から海路九州に逃れ、平野国臣らと辛うじて鹿児島に入
った。

が、しかし幕府の追及が止むことはなかった。

そして厄介者の月照を連れて
薩摩に戻った西郷に対し、

藩は受け入れを拒否した。


ここだけは譲れませんの糸きり歯  前中知栄


月照・西郷入水の図

拒否した上に西郷に藩が下した指令は、「日向国送りにせよ」だった。

それは日向に着く直前で「斬り捨てよ」という死刑宣告なのである。

まもなく船で日向に向う途中、近衛忠煕と月照を守る約束をした西郷は、

前途を悲観し月照と同意のうえ、竜ヶ沖で相抱きあい投身をした。

この直前に西郷が詠んだ歌が巻頭の句である。

”二つなき 道にこの身を 捨て小船 波立てばとて 風吹けばとて”

二人はすぐに救助されたものの月照は死亡し、西郷は蘇生した。

安政5年11月16日の海は、きんきんに冷えていた。月照享年46歳。

検死などせずとも僕は涸れている  中野六助


   忠僕茶屋

歴史を知り、忠僕茶屋を訪ねるのも一興。わらび餅が旨いと評判です。

いつ訪れても観光客で 賑わう京都・清水寺に・・・。

清水坂を上って境内に進み音羽の滝 へ通じる参道をいくと、

「忠僕茶屋」と
いう茶店がある。 この店を始めたのは、大槻重助である。

重助は清水寺の勤王僧・月照に仕え,月照が安政の大獄で薩摩へ避難した

時も同行した。安政5年に月照が西郷とともに薩摩潟に投身し亡くなった


あとは、捕らえられて半年ほど獄中生活を送り、 解放されてから一時期、

古里の高津に帰ったが、 月照を慕う気持ちは拭い去れず、
京都に戻り

妻を娶ると、 同寺境内にあった茶屋 「笹屋」 を買い取る。


 それを西郷らの援助を受けて改装し、同寺から茶屋の営業を許されると、

屋号を 「忠僕茶屋」 と改めた。


現在は重助から数えて4代目が暖簾と先代の遺志を継いで営業している。

たかがルーツされどルーツと木瓜の花  杉浦多津子


寺門前に建つ重助の墓碑

「付録」

重助は精進料理を作るのが得意だったことが伝えられている。

重助オリジナルで豆腐に熟した柿の実を添え、 塩を加えたものである。

(この料理のことは西京新聞の記者の本「忠僕重助傳」の中に出てくる)

安政5年の逃走劇の時、 京都から九州に入った月照に対して重助が材料

を調達してこの豆腐料理をふるまったところ、 心身共に疲れ切っていた

月照
を大そう喜ばせという。


 清水寺には重助の墓も建立されている。 場所は 「清水の舞台」 の南に

位置する 「子安の塔」 横の道を下った所にある墓地。

この碑は、重助を顕彰するために薩摩藩の有志により建てられた。

泡ひとつ消してめし屋の灯をくぐる  桑原伸吉

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