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川柳的逍遥 人の世の一家言
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蛇穴に恋歌ひとつ忍ばせる  奥山晴生


54帖みおつくし

みおつくし 恋ふるしるしに ここまでも めぐり逢ひける えには深しな

身を尽くして愛し合った甲斐がありましたね。
ここにきて、巡り合えるなんてあなたとの縁は深いことなのでしょう。

「巻の14 【澪標】」

二年半の流浪生活を終え、晴れて都に戻った光源氏も早28歳。

20歳になっていた紫の上は、すっかり大人びていて、

少し痩せたが、今まで以上に美しくなっていた。

朱雀帝の患っていた眼も桐壷院の遺言を守った安心感からか快方に向かい、

源氏が都に戻ったということで、世の中はだいぶ明るくなっていく。

まもなく、源氏は権大納言に昇進し、親友の頭中将も権中納言になる。

葵の上の父も源氏の勧めで復職、摂政太政大臣として政治の要職につく。

そして、藤壺と源氏の間に出来てしまった東宮も、当時としては、

もう大人と認められる11歳になり、元服の儀式を迎える。

源氏の流離のとき不遇をかこっていた人たちも、もとの位に復帰した。

念ずれば叶うと聞いていましたが  安土理恵

そして、もう自分の時代でないと感じた朱雀帝は、譲位を決意する。

次の帝は東宮である。

元服をしたとはいえ、まだ幼い東宮は源氏を後見として、帝位を継ぐ。

冷泉帝の即位である。

譲位した朱雀帝は、朱雀院として表舞台から身を引き、

朧月夜などとともに静かな生活を楽しむようになる。

また藤壺はすでに出家した身なので、皇太后という地位にはつけないが、

冷泉帝の母親なので身分は高く、宮廷内への出入りは自由である。

普段着でいいの言葉も生き方も  清水すみれ

そんな華やかな状況の中で源氏が気にかけていたのは、明石の君である。

今は愛しい正妻・紫の上が近くにいるのだが、

どんな女性も捨てられない厄介な性格は変わらない。

紫の上を気にしながらも、源氏が明石の君に使者を送ってみると、

女の子の誕生したという、吉報が帰ってきた。

お産は軽く、母子ともに健康。

源氏は明石の君を、都に迎え出産させなかったことを悔やむくらいだった。

女の子と並べて書けば好きやねん  くんじろう

源氏は、かって占い師が言った言葉を思い出していた。

「子どもは3人。一人は帝、一人は后、一人は政界の頂点の地位に立つ」

すでに藤壷との子である冷泉帝は帝に。

そして、亡き葵の上との間にできた夕霧は、まだ幼いけれど男子。

さらに明石の君に女の子。

占い通りのお膳立てができてきているのである。

源氏は生まれた子を大切にしなければと考え、

自ら乳母を捜して明石に送ったり、

豪勢な贈り物をしたりと細かく気の配るのであった。

だが面白くないのが紫の上、源氏は嫉妬する彼女をなだめるが、

なかなか機嫌は治らない。そんな妻がまた、源氏には可愛いのである。

場合によっては沸騰いたします  高島啓子


住吉参詣する源氏の行列

その年の秋、源氏は住吉神社にお参りに行く。

今や、時の人となっている源氏だから、このお参りも一般人とは違い、

壮大な行列で、大勢のお供がついている。

偶然、明石の君も同じ日に住吉神社にお参りにきていた。

明石の君は舟での参拝だった。

源氏が来るのを知らなかった明石の君は、あまりの賑わいにびっくり、

身分の違いを思い知らされるのだった。

源氏の威勢に気圧された明石の君は、その日の参拝を諦め舟に戻る。

あとでそのことを知った源氏は、明石の君が近くに居合わせたなんて…

きっと二人の縁が深い証拠ですと、なぐさめの手紙を送るのだった。

誰かいるかもしれないのです おーい  竹内ゆみこ

同じ頃、帝が代わったのに合わせ、

斎宮も代わり前斎宮とその母・六条御息所が帰京してくる。

しかし都に着きしばらくすると、六条御息所は重い病気にかかり出家する。

源氏はそれを不憫に思い、見舞いに訪れる。

六条御息所はすっかり衰弱した様子で源氏に

「身寄りがなくなってしまう娘の面倒を見てやってください。

 でも決して恋愛の対象になさらないで…」

という遺言めいた言葉を残し、数日後、息を引き取る。

先の斎宮は父もいないし、母まで死んだら頼るものがない。

後見を頼むとしたら、源氏しかいないのだ。

自分が死んだら源氏が手をだすくらい、六条御息所にはお見通しなのだ。
                             みおつくし
越えてはならないものに、杭を打つ、いわゆる澪標である。

先手を打った形の遺言は、六条御息所の源氏に対する復讐でもあった。

引き返す風に想いを託します  合田瑠美子


御息所を見舞う源氏

源氏は悲しみを堪え、彼女の遺言通り前斎宮の娘の後見を果たそうと考え、

しばらくしたら、「冷泉帝に入内させるのがいいか」と、思い巡らせる。

しかし、この娘に思いを寄せる人がいた。

朱雀院である。

困った源氏は、藤壺に相談する。

藤壺は、「知らぬふりして、入内させるのがいい」

と冷酷な助言をするのだった。

うっすらと耳朶抱えている痛み  嶋沢喜八郎

※注釈 (梅壷について)
斎宮の役目を終え、伊勢から都に戻り、まもなく母の六条御息所を亡くす。
源氏と藤壺の画策で、後に冷泉帝の後宮として入内し、梅壷と呼ばれ、
さらに中宮となって秋好中宮〔あきこのむちゅうぐう〕と呼ばれるようになる。
源氏も恋愛の対象としたいほど美しい人だったが、
六条御息所との約束がありさすがの源氏も、手を出さなかった。

【辞典】(女の子はうれしい)
古代の日本社会では、娘が婿を迎え、家を継ぐ形態が普通だった。
男の子は外に出て行ったしまうが、女の子はずっと家に残っていてくれる。
普通の親であれば、そんな女の子の誕生はうれしいもの。
まして源氏には、冷泉帝と夕霧という男の子がいる。
女の子の誕生は、何より待ち望んでいたことなのだ。

女の子の誕生を喜ぶ源氏は、自分で乳母を探して明石に派遣し、
数々の贈り物も手配するなど、とても活動的に動き回った。
「自分が都落ちして須磨や明石に行ったのも、
   この子を授かるためだったのだ」 
と考えたからだ。
そんな源氏の配慮を受け、喜んだのは明石の一族。

源氏が都に帰り、明石の一族は「捨てられてしまう」と危惧していたことが、
ウソのようだと泣きながら、感謝するのだった。 女の子でよかった。

エレキバン偶数日には左肩  雨森茂樹

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