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川柳的逍遥 人の世の一家言
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”あ”ですか いえ”ん”でございます  山口ろっぱ



撫子の どこなつかしき 色を見ば もとの垣根を 人やたづねむ

撫子のように美しいあなた。母である常夏の人を思い浮かべてしまいます。
あなたを見たら、内大臣はきっとお母さんのことを聞いてくることだろう。

「巻の26 【常夏】」

暑い夏。六条院の東の釣殿で、夕霧を相手に涼をとっていた光源氏を、

内大臣の息子たちが訪れる。

源氏は夕霧と雲居雁との一件が面白くない……そこで源氏は

「内大臣が行方知れずだった娘をみつけ、引き取ったという噂は本当?」

と内大臣の息子たちに問いかける。

息子たちは答え憎そうにしながら、それは本当の話で、

内大臣の夢占いに、「実の子が他人の子として育てられている」

という結果が出て、探すと名乗り出てきた娘がいるという。

「ならば、雲居雁との仲をお前は、お引き裂かれてしまったのだから、

   その娘にしたら」


と夕霧に言う風を装い、それは内大臣に向けての皮肉を言ったのだった。

落葉掃くこの楽しさは何だろう  笠嶋恵美子


納涼で夕霧や内大臣の息子らと談笑する源氏

内大臣と源氏は、大体は仲のよい親友なのだが、ずっと以前から

性格の相違が原因になったわずかな感情の隔たりがあった。

このごろはまた夕霧を侮蔑し、失恋の苦しみをさせている内大臣の態度に

腹に据えかねるものがあり、皮肉を吐いたのである。

夕暮れになって、源氏は一人玉鬘のいる西の対にでかけるので、

内大臣の息子たちも源氏を送ろうと、そちらのほうへ移動する。

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源氏は玉鬘の御簾に入り、

「御覧なさい。内大臣の子息たちを連れてきましたよ」という。

「みんなあなたに下心を抱いているのです。

   あの方々は教養のある人たちですけど、特に内大臣の長男である柏木は

   こちらが気恥ずかしくなるほど、人柄が優れています」

玉鬘はそっと覗いてみた。

自分の実の弟たちなのだ。


夕霧は、こうした立派な人たちに混じっても、際立って美しい。

「うちの夕霧を嫌うとは、内大臣もどうかしている。

   約束しあった幼い同士の仲を長い間裂いて、内大臣の気持ちが情けない」

と言いながら、源氏は溜め息をついた。

玉鬘は実父と源氏との間に、こうした感情の疎隔があることを初めて知る。

そして親に逢える日が、まだ遥か遠いことと思うと悲しくもなるのだった。

耳たぶは秋の寒さになっている  河村啓子

一方、内大臣は、雲居雁のことが残念でならなかった。

源氏が玉鬘にしたように、雲居雁を使い公達をやきもきさせたかったのに、

そう思うと今さらながら悔しかった。

夕霧とはそれほど昇進しないうちは、結婚を許すまいと思うのだが、

その一方で父親の源氏が謝れば、

夕霧の雲居雁との結婚を許してもいいと思っていた。


だが、源氏も夕霧もさっぱりと結婚を申し込む気配を見せない。

それがますます内大臣を不愉快にさせるのだった。

内大臣には頭痛の種が、もう一つあった。

玉鬘の噂を聞くたびに、夕顔の娘が偲ばれてならない。

そこで夢のお告げに従い、柏木に捜すように命じたのだ。

名乗りでたのは、近江の君という娘だった。

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近江の君を訪う内大臣

この近江の君という娘が、とんでもない田舎娘だった。

顔立ちはそれなりに愛嬌があり、元気があり余っている。

でも、おでこがとても狭いこと、突拍子もない言動、ものすごい早口、

内大臣は話しているだけでうんざりしてしまう娘なのだ。

折角、引き取っても不自由な思いをさせていることを気づかった内大臣に

「不自由なんて、そんな心配はありません。

   人よりも立派に見られたいと
考えているなら窮屈でしょうが、

   私などは、便器掃除の役でも何でも致します」


と近江の君が言うので、内大臣は思わず笑い出した。

「それは不相応な役目のようだ、あなたに親孝行の気持ちがあるなら、

   もう少しゆっくり喋ってもらいたいがね」

と内大臣は少しおどけて、にこにこ笑いながら言う。

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内大臣は笑ってはいるものの、やはり一番厄介なのは近江の君である。

そこで冷泉帝のもう一人の娘・弘徽殿に女房として使ってくれるよう頼む。

「今、女御が里帰りしています。ときどきそちらに参上して、

   女房たちの立ち振る舞いなどを見習いなさい」


と内大臣が言うと

「まあ、なんて嬉しいことでしょう。

   宮仕えのお許しさえいただければ、
水を汲み、頭に載せて運ぶことも

   厭わず、お仕えいたしましょう」


と、近江の君はすっかり上機嫌になり、もっと早口で喋り出すので、

内大臣はすっかり匙を投げてしまった。

何かあったらしい今夜の飲みっぷり  美馬りゅうこ

弘徽殿は、近江の君とはまだ会っていないので、

噂ほど変な娘ではないだろうと、
父・内大臣の頼みを受けてくれた。

近江の君は、

「いくら父上が、私を可愛がってくださっても、

   お姉さまが私を冷たく
なさったら、私の身の置き所がなくなるもの」

と言い、弘徽殿に手紙をだすことにした。

近江の君が、その手紙に添えた和歌は、


草わかみ ひたちの浦の いかが崎 いかであい見ん たごの浦波

届いた和歌を弘徽殿が目にすると、

「使ってもらえてうれしい」 

ということらしいのだが、文面も筆跡も変なのだ。


和歌のなんとなく分かる意味は、「いかであい見ん」だけである。

何とかしてお目にかかりたいということ。

その歌に彼女の知る限りの地名が詠み込んであり、

「ひたち」は常陸、
「いかが崎」は近江、「たごの浦」は駿河で、

要は支離滅裂の内容なのだ。


弘徽殿は、なんとも先が思いやられるのだった。

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【辞典】 常夏

常夏の巻名は「撫子のとこなつかしき…」という和歌に由来する。
常夏は、玉鬘の母親、夕顔のこと。
内大臣は夕顔のことを「常夏の君」と呼んでいたのである。

二巻で内大臣が行方不明になった恋人・夕顔のことを語るくだりがある。
夕顔が、生まれた子どもを撫子にたとえ、内大臣に和歌を贈り、
内大臣はそれに
答え、夕顔を常夏にたとえ愛情を示している。

また「常夏」は、妻や恋人などを称して使われる言葉でもある。
内大臣は夕顔の撫子の言葉を受けて、常夏という言葉にかけて返歌した。
そして今、源氏は成人した夕顔の娘・玉鬘に向け撫子という呼び名を使った。
亡くなった母が自分の娘をたとえ、恋人に贈った呼び名である。
二巻でも内大臣は、行方不明になったこの親子を探していると、
源氏に告白している。


常識の波にただよう薄ぐもり  皆本 雅

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