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川柳的逍遥 人の世の一家言
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泣ききれず忘れきれずに風のまま  桑原すゞ代

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「真田庵」

昌幸が暮らしたとされる屋敷跡には現在「善名称院」という高野山真言宗の
寺院(尼寺)が建つ。明治27年に描かれたこの絵と変わらぬ佇まいで残る。

「九度山蟄居」

関が原の合戦から6日後の慶長5年(1600)9月21日、

伊吹山中で石田三成が捕らえられた。

24日には、大坂城から西軍総大将の毛利輝元が退去し、

徳川家康に大坂城を明け渡す。上方は完全に東軍に制圧され、

上田城の真田昌幸のもとにも、
信之の使者が訪れる。

「一命は助けるゆえ、紀伊・高野山へ蟄居すること」

という家康の口上が伝えられた。

信之は父と弟の一命だけは助けるべく、

舅の本多忠勝とともに家康に嘆願を繰り返し、晴れて認められたのだ。

ありがとうの形に曲がりかけている  三村一子

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真田父子に従って高野山へ下った家臣たちの名簿


池田長門・原出羽・高梨内記・小山田治左衛門・田口久左衛門・窪田作之丞
関口角左衛門・関口忠右衛門・川野清左衛門・三井仁衛門ら16人が従った。

それを聞いた昌幸は、抗戦を諦めて城を明け渡し、高野山行きを

受け入れたのである。


年も暮れようかという12月13日、昌幸は正室・山手殿を上田に残し、

信繁は妻子を伴いそのほかに6名の家臣が随行して高野山へと向かう。
                   れんげじょういん
高野山には真田家を檀家とする蓮華定院があったが、

当時の高野山は女人禁制であった。

信繁に妻子が同行したため滞在は許されず、

蓮華定院のとりなしで逗留が山麓の「九度山」に変更された。

許せない場所に〆縄張っておく  橋倉久美子

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昌幸が信之宛に出した手紙

信之からしばらく音信がないことを心配して、昌幸が出した内容に、
信之との再会を望んだが叶わなかったことが認められている。
筆跡から信繁が代筆したとされる。

しかしただの流人と違い、腐っても大名である。
                                  あさのながあきら
徳川家から真田親子の監視を命じられた和歌山城主・浅野長晟は、

昌幸・信繁とその家臣らのために十数件の屋敷を造営したという。

素朴な山村に過ぎなかった九度山は、小さな城下町のようになった。

浅野氏は九度山および紀ノ川対岸の橋本の住民に監視を命じ、

時々役人を寄越す程度であった為、昌幸主従の暮らしは比較的自由だった。

蟄居中の昌幸は川で釣りをしたり、

京都や和歌山城下にも顔を出したという記録も残る。

プチプチつぶしに命かけてはる  雨森茂樹

九度山に来た翌年、信繁と妻・竹林院の間に長男・大助が生まれ、

その大助は成長した後に紀ノ川で川遊びに興じている。

九度山と橋本の住民たちもいつしか真田親子に親近感を抱き、

緩い監視を続けたようだ。

また当初、昌幸は九度山に長く棲む気はなかったようで、

何年か経てば赦免されるはず、という希望を持っていた。

しかし、徳川家は昌幸を許すつもりはなかった。

特に煮え湯を飲まされた徳川秀忠にしてみれば、

「命があるだけでも有り難く思え」
とでもいうべき思いだったのだろう。

振り向けば悔い点々と水溜り  新家完司

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九度山で読書中の昌幸 (常山紀談通俗挿画)

「近頃は気力もない。くたびれた。長く山に暮らしていると
   不自由な事ばかりだ」
という内容の手紙を信之に送っている。


結局、赦免はなかった。

そんな九度山生活も11年が経ち、昌幸はとうとう病に倒れた。
     おおくたびれもの
自分が「大草臥者」になったとする信繁に手紙を書かせ、

自虐的な近況を信之に伝えている。

そして慶長16年(1611)6月4日、昌幸は65歳で世を去った。

昌幸の亡骸は火葬され、信繁や家臣が九度山に埋葬。

分骨されて国許・上田にも運ばれた。

あとひとつ泡が消えれば旅に立つ  上田 仁

翌年に一周忌がすむと、

上田から従ってきた家臣の多くが国元へと帰り、
信之に帰参。

九度山には、高梨内記、青柳清庵らわずかな共が残るだけとなった。

この時、信繁45歳、当時40歳を超えれば初老の域である。

武将として一番脂の乗る時期を山奥で過ごさねばならなかった彼の心境は、

いかばかりであったのだろう。

鏡の中に他人のような私  ふじのひろし

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