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川柳的逍遥 人の世の一家言
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波乗りの男が帰らない晩夏  山本早苗



「真田昌幸の最期」

「第二次上田合戦」昌幸関が原は終り、高野山への流罪に決した。

昌幸は思惑通り生き延びたが、行先の望みを断たれた失意の旅たちだった。

昌幸と信繁は慶長5年(1600)12月13日、

青柳青庵ら旧臣・16名をお供に高野山へ向かった。

一行はかねてより真田家が宿坊と定めていた高野山蓮華定院に入り、

のち九度山村に屋敷を構え移った。

真田庵(善名称院)がその屋敷跡という。

右目から涙 左目から鱗  高田まさじ

お供の者は真田屋敷の周囲に居住したが、

大所帯の生活は金銭に事欠く有様で昌幸はその都度しかも頻繁に国許に

無心して凌いだ。

そして困窮に苦しみながら、昌幸はひたすら放免の沙汰を待った。

国元、信鋼寺宛てに放免の期待をつづり、

旧臣などには老いゆく愚痴を書き送った。

歳月は昌幸を老いさせ、信繁は村人に焼酎をねだる体たらくで、

武将の意地意地をすっかりなくしてしまった。

空っぽの頭揺すって酢の匂い  佐藤正昭

配所暮らしから11年目の慶長16年6月4日、下山も叶わぬまま、

昌幸は信繁を呼び、「三年を過ぎずに関東と大坂が合戦に及ぶ」と予告し、

もし徳川と豊臣がふたたび戦になった場合、

「わしならば…」と、徳川軍を混乱させて寝返りを誘発する秘策と、

息子が講じるにあたっての難点も授けた。

死の直前までも徳川を倒す執念を捨てきれない昌幸なのである。

それからまもなく、昌幸は65歳で真田屋敷に没した。

出がらしを出したらそれでさようなら  森田律子



「三成の最期」

関が原の開戦から4時間を経たころ、

家康小早川秀秋が陣を張る松尾山へ大砲を打ち込んだ。

「約束通り、早く寝返りせよ」との催促である。

秀秋自身、そのころまで、


「このままで西軍として戦うべきか、寝返るべきか」

と去就を決しかねていたが、家康からの威嚇の大砲に恐れをなし、

意を決して山を下り、麓に布陣する西軍・大谷吉継隊に攻めかかった。

この秀秋の寝返りがきっかけで三成率いる西軍は、総崩れとなり、

午後3時ごろに勝敗が決した。

三成は伊吹山に逃げ、逃亡6日、ついに21日に捕らえられ
              あんこくじえけい
10月1日、小西行長、安国寺恵瓊と共に京の六条河原で処刑された。

関節の右の産業廃棄物  井上一筒

処刑の直前、三成は、いったん家康のもとに送られている。

そこで家康は多くを語らず、「さらばでござる」の一言だけを残し、

三成の身を本多正純に預けた。

そこで正純は、三成に静かに言った。

「秀頼公が年若くいるうちは、

   平和を保つ道を考えるべきでございますものを、


    理由もない戦を起こしたがために、あなたはこうして、

    縄目の恥辱を受ける羽目になったのですよ」

この正純の言葉に三成は冷静に応じた。

「自分にとっての太閤殿下のご恩は、とてつもなく大きいものである。

    内府を討たねば豊臣家のためならずと考え、軍を起こしたのだ。

    しかし、いざ合戦となって裏切り者が出て、

    勝つべき戦を落としたのは、口惜しいことだ。

   とはいえ、かの源義経公でさえも、

    天運に見放されたが故に衣川で滅びた。


    それがしの敗戦も天命であろう。 是非もない」

自分のこと猫と思っていない猫  片岡加代

この三成の言葉を受けて正純は、言った。

「智将というものは、人情をはかって時勢を知るものだ。

    諸将が裏切ったのは、心から同心していなかったからで、

    そんな状態で軽々しく兵を挙げ、敗れても自害すらせず、

    捕らえられて、こうしておるとはなんたることだ」 

この言葉に三成は日頃の平静さを失い、

「汝は武略を露ほども心得ておらぬ。

    敗けて腹を切るなどは、葉武者の所業よ。


    源頼朝公が石橋山の敗戦後、朽木の大洞に身を潜めた。

    その心が汝にはわかるまい。

     頼朝公があの時、大庭景親に捕らえられておれば、


    汝らはわしと同じように、頼朝公をも嘲ったことであろうな」

と応答したという。

命を惜しむは、ひとえに我が志を達せんと思うがゆえなり (三成辞世)

節穴からのぞく天国らしきとこ  田口和代

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