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川柳的逍遥 人の世の一家言
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湯豆腐の脇をくすぐる冬の底  岩根彰子
  

   松下村塾

「松下村塾の存亡」

安政5年(1858)松陰再投獄の命令が下る。

小田村はそれを阻止しようと運動するが、覆すことは出来なかった。

(ドラマでは小田村の苦渋の厚意で松陰を投獄したとしている)

このように、松陰のために寸暇を惜しんで活動した結果、

ままならないことも多く悩みは深かった小田村だが、

松陰は、江戸に送られる前、彼の働きに、

「三度の罪を犯したときは、すべて周旋にあたってくれた。

   今度ばかりは萩へ帰る見込みもなく、何か言い残したいが、

   いろいろ思いがこみあげてどうにもならない。

   生まれた甥の端午の祝いの詩を書いて別れの言葉にしたい」

と、感謝する言葉を遺している。

小田村としても、報いられる思いがしたであろう。

耳垢がごっそり取れて春うらら  合田瑠美子



そんな小田村に松陰は、

「松下村塾のことだが」と話しかけ、

「今は閉鎖の命を受けておるが、いずれは許されよう。

   再開されれば骨折ってやってください」

と頼んでいる。さらに松陰は、

「至誠にして動かざる者、未だ之有らざるなり」 

という孟子の言葉を使って、

至誠をもって、幕府に対決する決意を吐露した書を託している。

「江戸へ行ったら、誠を尽くして話そうと思う、

   もしそれが功を奏したら、

  これを世に伝え、うまくいかなかったら焼き捨てて欲しい」

と依頼している。

もろもろの傷やがて根っこに翼にも  小林すみえ

松陰は、誠を尽くして話したにもかかわらず、

刑死してしまうわけだが、

小田村は後世に残したいと考えたのだろう。

その後、松陰の誠は弟子たちに伝えられていったのだから、

小田村の判断は正しかったということになる。

志士としての情熱には物足りないものを感じ、

「小田村の論では、なかなか納得ものではない…」
                いぬころ
「伊之助その他 政府の狗子などと言ったことはあったが」

むしろそれゆえに後を託すにふさわしいと考えたのである。

正夢にしたい素敵な夢だった  吉岡 民



安政6年(1859)松陰が再び野山獄に投じられ、

補助役の富永有隣も故郷に去ると、松下村塾は立ち行かなくなる。

事ここに及び、小田村は明倫館での仕事の一部を捨てる覚悟を決め、

松下村塾での教育にあたった。

松陰は江戸に護送される際、

小田村に塾のことを頼み、塾生たちは今後、

後のことは小田村に従うよう言い残している。

エンディングノートは多色刷にする  本多洋子

しかし、松陰の刑死に前後して有能で知られた小田村は、

藩主の側近にとりたてられ、長州藩政に深く関わることとなり、

もはや、松下村塾での教育から退かざるをえなくなる。
                                   まじまほせん
それから後、弟子たちの中でも、学問を評価された馬島甫仙

慶応元年(1865)に塾を再開させるが長続きせず、

明治にお入ると玉木文之進が再び教育にあたり、

最終的には松陰の兄・梅太郎が明治13年から、

日清戦争の前ごろまで「松下村塾」を続けた。

逆立ちをする充電をするために  前岡由美子               


 稔麿への情報依頼文

「飛耳長目」

「耳を飛ばして遠くのことを聞き、目を長くして遠くのものを見る」

ことを飛耳長目という。

つまり情報収集のことである。

松陰は兵学者として「情報」を非常に重視した。

全国を行脚し、ついには海外渡航を目論んだのも、

ひとえに情報を得るためだった。

そうして得た情報で、日本の採るべき道を模索しつづけたのである。

松下村塾では、塾生をはじめとする仲間から集まった情報をまとめ、

「飛耳長目帳」と題した。

窓口は三つ醤油味にする  山本早苗

単に情報を待つだけではなく、公用や遊学で藩外に出る仲間に

情報収集を依頼し、会うべき人物を教え、

飛脚を使う渡していたという。

『孫子』には情報の大切さを説かれているが、

自分で独自の情報ネットワークを築くことは、

今日でもなかなかできない。

力を注いだ甲斐あって松陰の情報入手の早さは、

時に藩政府をも上回っていた。

イヤホンの片方かりる待合室  河村啓子

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