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川柳的逍遥 人の世の一家言
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観音の手の千本の脈をとる  嶋澤喜八郎

 

                     スイスで記した襄の遺書

「襄ー倒れる」

は、八重との結婚当初から病弱で、ー2

健康に留意しながらの布教活動であった。

明治17年4月から、翌18年12月にかけて、襄は欧米を外遊する。

ところが明治17年8月6日、

襄はイタリアからスイスへ至るサンゴタール峠で心臓発作を起こし、

呼吸困難となり山頂の旅館で二通の遺書を認めている。

作家の徳富蘆花は、『黒い眼と茶色の目』の中で、

「自分(襄)はその時非常に苦しんだ。諸君のことを思い、妻のことを思い」

と書いており、

襄が自身の病よりも生徒と八重のことを気に掛けていたことが分かる。

実際、八重は絶えず襄の体を気遣う毎日であった。

襄が旅行をする際もできるだけ付き添って看護をしていた。

落葉の季節遺言書を書かす  小林満寿夫  

そして前年に父を亡くした心労もあったのか、

明治21年の4月、襄が井上馨邸で倒れる。

医師より、倒れた襄の病が、全治不可能な心臓病、

「今のうちに大事なことは聞いておくように」

と言われた八重は、大きな衝撃を受けた。

自宅療養だが、襄も余命を自覚していたようで、

八重の身の振り方や、学校の将来など万一に備えて手を打った。

本日の渦へ入って渦を出る  筒井祥文



心配でならない八重は、襄が寝ている間、

きちんと息をしているか襄の口元に手をかざし、

気付いた襄が、八重に言う。

「八重さん、わたしはまだ死なぬよ。あなたがあまりに心配して寝ないで、

  私より先に死んだら大困りだから、安心して寝なさい」

八重の『亡愛夫襄発病の覚』 には、
    わたし                あるとき
(「妾は、日夜の看病に疲労し、或時は亡夫の目覚め居れるを知らずして、
                   その                
 寝息を伺はんと手を出せば、其手を捕へ、

 『八重さん未だ死なぬよ、安心して寝よ』
                         なんじ
 余りに心配をなして寝ないと、我より先に汝が死すかも知れず。
  さよう
 左様なれば我が大困りだから安眠せよ。と度々申したり」

と記されている。

傍観者のかたちで一度目は通過  たむらあきこ



そんな状況でも、襄は募金活動だけは病の身を押して行った。

募金活動で東京、そして明治22年11月、

群馬県前橋市で遊説していた襄が腹部の激痛に襲われ東京に引き返す。

診断は胃腸カタルであった。

この知らせを受けた八重は、直ぐにでも現地へ駆けつけようとしたが、

「病気で寝ている母親を看病して欲しい」

という襄の願いを受け入れ京都に残った。

余命幾ばくもない襄でも、

残される母・とみのことが気がかりでならなかった。

一画で0から9を書くへんこ  清水久美子

 

新島襄終焉の地(旅館百足屋跡)

明治22年12月、東京で静養していた襄は、

医師や蘇峰に温暖な地での休養を勧められると、

大磯海岸にほど近い百足屋旅館で静養の日々を送ることにした。

この大磯での静養中に八重は、重ねて看病を願い出るが、

やはり襄は病気がちな老母の「看病こそが大事」

配慮の言葉を八重に返している。

明治23年の正月を襄は、百足屋旅館の離れ座敷で迎えたが、

1月17日、襄の容態は急変する。

診断を終えた医師は、

「呼びたい方がいれば、今のうちに呼んでください」

と襄に告げた。

ブラックホールの傍にインターホンがある  岩田多佳子

襄に残された時間はわずかであった。

側に居た者が八重に電報を打とうとするが、襄が制した。

自分よりも、年老いた母親・とみの看病を優先して欲しかったからだ。

1月19日、弱っていく襄を心配した永岡喜八が、

八重に襄の危篤を知らせる。

八重が百足屋に駆けつけたのは、1月20日の夜だった。

既に襄は憔悴しきっていた。

八重を見た襄は、

「これほど八重さんに会いたいと思ったことは無かった」 と喜んだ。

これを聞いた八重は、

「何という暖かいお言葉。私は死んでも、来世でも忘れません」

と涙を流した。

ダリの絵のぐにゃりがとてもやさしい日  岩根彰子

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