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川柳的逍遥 人の世の一家言
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生きている実感朝めしが旨い  早泉早人



          覚馬の家族

後方に八重と新島襄がいる。
                                                 
(画面は拡大してごらん下さい)



「新たな生き方として選んだのは従軍看護婦」


明治23年4月、46歳で未亡人となった八重は、

日本赤十字社の正社員になる。

家庭内に踏みとどまるのではなく、八重は社会へ出ることを選ぶ。

ところが新たな一歩を踏み出した八重を、

さらに不幸が襲った。

の死の2年後、兄の覚馬がこの世を去った。

襄亡き後、覚馬は同志社の臨時総長も務めたが、

兄の死去で八重と同志社の縁も途絶えた。

瘡蓋がはがれるまでのノーサイド  寺川弘一



 八重の従軍看護婦姿

八重は、日清・日露戦争では「従軍看護婦」を務めている。

明治以後、八重だけでなく多くの会津女性たちが、

看護婦の道を選んだ。

理由は、言うまでもない。

会津の女性たちは籠城中、自分の帯の芯までほぐして、

包帯代わりとし、負傷兵を手当てをするが、

薬も医学的知識もない中で、彼らが死んでゆくのを、

ただ見守るしかできなかった。

降伏はしないシーソーなんだから  みつ木もも花

彼女たちは強烈な無力感に打ちのめされていたはず。

「その無念を晴らしたい」

という思いが会津の女性たちにはあったのではないか。

禁門の変から戊辰戦争まで、

三千名余の会津人が犠牲になった代わりに、

明治以後の看護学の基礎ができあがったとも言えるのである。

生きていてくれと言われて生きている  永井 尚

 

日本赤十字篤志看護婦人会

翌年、「日本赤十字篤志看護婦人会」が設立され、八重も会員になる。

皇族や華族の夫人が参加してできた組織で、

会の中に会津出身の大山捨松がいて、理事を務めていた。

明治27年、日清戦争が始まると、

会津戦争の原風景が残る八重たちは、

「お国のために何かしなきゃいけない」

日本赤十字社の幹事となり、

仲間とともに篤志看護婦として、名乗りをあげる。

この道でいいかと天に聞いている  岡内知香



  八重と看護婦仲間

戦場に女が行くなど考えられなかった時代、

八重は40名を率いて広島陸軍予備病院に赴任する。

看護婦取締りの役目を担い、4ヵ月間、

30時間を交代で務めるという、激務をやり抜いた。

この果敢なる行動により八重たちは、

翌年、赤十字社の修身社員となり日清戦争の従軍記章も授与された。

一本の樹は愛になり風がらみ  前田扶美代



明治20年校長代理の山本覚馬が、

同志社の卒業式において卒業生に送った言葉がある。
                 その
「諸氏の今や業を終えて、各其目的とするところに進まんとす。

―中略・・・而して其従事すること等しからずと雖も、

子等是非とも勉むべきは貧民のともたること之なり。
                                           けんかく
吾れ思ふに日本は将来英国の如く、貧富の懸隔追日甚だしきに至らん。

此時に当り能く弱を助け強を挫き、貧を救い富を抑ゆるものは誰ぞ。
                           ふくよう
諸氏乞う吾が言を常に心に服膺して忘るる勿れ」

懸隔=二つの物事がかけ離れている(差がある)こと。

服膺=心にとどめて忘れないこと。

咲きなさい自分の好きな色かたち  嶋澤喜八郎

維新後、物心両面から京都の近代化を図り、

成果をあげた覚馬だが、とりわけ重んじたのは、精神の気高さだった。

弱きを助け強きを挫き、貧を救い富を抑える人であれ―。

そこには、新政府の「勝てば官軍」の歪んだ価値観では、

「新時代を背負う人材は育たない」という覚馬の信念があった。

早咲き遅咲き一度はきっと咲くはずだ  森下よりこ



晩年も若者たちと会話することを好み、

また頼ってくる会津出身者を快く迎え入れて、同志社に学ばせた覚馬。

最後まで、自分の信じる新しい国づくりに力を尽くし、

明治25年に瞑目した。

享年65歳。

幕末の上洛より、覚馬がふるさと会津の土を踏むことはついになかった。

しかし、

その生き方は、誠を尽くし、何があろうとも屈しない、

会津武士そのものであった。

残照を描き私を俯瞰する  前中知栄

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