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川柳的逍遥 人の世の一家言
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積み上げたノートがわたくしの地層  勝又恭子


  家中善悪の帳

官兵衛は家臣の相性を帳面に書きとめ、家を丸く収めた。

「官兵衛の名言」

官兵衛と唯一の妻である幸圓(光)の間に生まれた嫡男・長政

幼少期を人質として過ごし、数々の武功をあげる武将へと成長した。

官兵衛は、そんな長政を頼もしく思いながら、

折にふれて、その猪突猛進な戦いぶりを窘めている。

「官兵衛(如水)の名言-4」

【是は汝が為なり。乱心にあらず】

官兵衛は病に伏せった頃から家臣を辱めたり罵ることが増えたという。

その言動を注意しに訪れた長政に、官兵衛はこう言った。

「これは措置のためにしているのだ。乱心ではない」

   官兵衛は求心力の強い指導者だった。

   自分が亡くなったあと、家臣たちが官兵衛を敬愛したままでは、

   後継者の長政にとって不都合が起こる。

   そこで自らが嫌われるように仕向けていたのだ。

けなすだけけなして最後には褒める  立蔵信子
         ひでり
【夏の火鉢、旱の傘ということを 能々味はい堪忍を守らざれば、

   士の我に服せぬものぞ】

暑い夏に火鉢は役に立たず。

同様に旱のときは傘はいらない。

しかし、必ずそれが必要になるときがくる。

家臣も同じで、そこをよく考え、無駄だと思えることも、

続ける忍耐力がなければ、人はついてこない。

夏の火鉢、旱の傘ということを 

よく味い、堪忍を守らなければ家臣は自分に従いてこないものだ。

短い言葉で気合いを入れられる  佐藤正昭


例-村田出羽と仲良き相手   仲悪しき相手

一人一人の家臣の相性の善し悪しを記した帳面。

【人の上に相口、不相口といふことあり】

ある時、如水(官兵衛)は、長政も同席させ、家老たちに言った。
                                 あいくち
「すべて人には相口と不相口ということがある。

   主君が家臣を使うのに、特にこのことがある。

   家人多しとはいっても、そのなかで主君の気に入る者がいる。

   これを相口というわけだ。

   この者がもし善人ならば、国の重宝となり、

   もし悪人ならば、国家の害物となるわけだから、

   大切なことだと思わなければならぬ。

さしのべて貰った温い手の他人  山本早苗
おのおの
各々もかねてより知っている通り、

 侍どものなかにもわしの相口の者がいて、傍近くに召し仕え、

 軽い用事などをも勤めさせてはいるが、それだからといって、

 その者に心を奪われるつもりはない。

 しかし相口だと、自然に場合によっては、

  悪いことに気づかぬこともあろうから、

 おのおの十分に気をつけて、それをみつけだし、

 そういうことがあれば、わしを諌めてくれ。

 またその者が驕って行跡がわるいときには、

 各々の側に呼びつけて意見してやってくれ。

人の手を借りホンモノの胡麻になる  下谷憲子

 それでも聞かないときには、わしに告げよ。

 詮議のうえ罪科に処す。

 わし一人の心では諸人の上にまでこまごまと及ばないから、

 自然に気づかないこともあろう。

 そういう時には、遠慮なく、すみやかに告げ知らせてくれ、

さっそく改めよう。

憎いわけでないけど鰯の首を切る  安土理恵

 さてまた、そちたちの身にも、相口・不相口によって仕置にも、

 間違ったことがでてくる場合があるであろう。
                                                                                                                              まいない
 相口な者には贔屓の心が起こり、悪を善と思い、あるいは賄に惑って、

 悪いこととは知りながら、自然と親しむことがあるものだ。

 反対に、不相口な者には、善人も悪人と思い、

 道理も無理なように思い誤ることがある。

 こういうわけで、相口・不相口によって仕置のしようも、

 私曲がでてくるものであるから、おのおのよく心得るべきである。

深追いはしない穴には入らない  竹内ゆみこ

 また家老たる者が威張りちらして諸士に無礼をし、

 末々の軽輩者にはことばもかけないようなことでは、

下に遠くなってしまい、そのため諸士は心をへだてて、

表面だけの軽薄な勤務をするようになるので、

 諸人の善悪・得手不得手をわからなくなり、

 諸士にも、その者の不得手な役を勤めさせるようなことになるから、

 かならず仕損じ、場合によってはその者の身も滅ぼし、

 主君のためにも悪いことである。

腰に手をこれからのこと考えて  河村啓子

 つねに温和で、小身者をも近づけて、その者の気質をよく見定め、

 それにふさわしい役を勤めさせるべきである。

 このようなことは、その方などがもっぱら詮議すべきことであるぞ」

(人間関係には、相口―良い相性、不相口―悪い相性がある。

 「相口の人」ばかりをまわりに集め、良い気分・・・となっていても、

    決してその人にとって、良いことではない。

    不相口の人の発言こそ、傾聴すべき大切なことだ‐‐‐と教える)

鑑真和上のクローンではないか  井上一筒

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