悪口にぐっしょり濡れるのも修行 新家完司
ごうすなりかぶと 戦の激しさを物語る傷み
官兵衛とともに歴戦を戦い抜いてきた「銀白檀塗合子形兜」
稀代の軍師・官兵衛が人並み外れて優れていたのは、
戦略や城下町づくりだけではなく、人心掌握術に長けていたことが、
黒田家譜や「名将言行録」によって伺い知ることができる。
「官兵衛(如水)の名言-2」
「本音」
【左手は、何事を為したりしか】
時は戦国時代。
関ヶ原の戦いで、官兵衛の嫡男・
長政は、豊臣の旧臣たちを引き込み、
徳川方の勝利に貢献した。
領地の豊前中津城に戻ると、父・
如水(官兵衛)に、
「家康公は感激して私の手を3度も押し頂いてくれました」
と得意げに報告した。
ところが、官兵衛は冷淡に、
「その時、空いていた方の左手は何をしていたのか」
と問うばかり。
長政は絶句した。
実は官兵衛、天下分け目の合戦が長引く間に九州を征服、
そのまま東に攻め上り、あわよくば天下を……との構想を抱き、
戦いを始めていた。
が、関ヶ原が1日で終わったことで野望は挫折。
その苦々しい心境を息子にぶつけたのだった。
私のノートだどうだ重いだろう 居谷真理子
「得手不得手」
【采配を振りて、一度に敵を千も二千も討ち取ることは得手者に候】
官兵衛の秀でたところの一つが、人や時勢を見つめる目であった。
それがよく表れていっるのが、
「采配を振りて、一度に敵を千も二千も打ち取ることは得て者の候】
という言葉である。
【人には得手・不得手のあるものなり おそるべし】
武士ならば、自らの手で手柄を挙げそれを自慢したいものだ。
しかし、自身の長所や短所をよく理解していた官兵衛は、
「槍を取り、敵を倒すのは不得意だが、
指揮官として一度に大量の敵を倒すのは得意である」と言う。
このように自分の立つ位置をしっかりと認識し、
自分自身をも冷静に見つめる。
官兵衛の優れた観察眼は、他者にも向けられ、
それぞれの短所や長所を役立てることにより、組織の力を強めていった。
尺骨を弾けば六段の調べ 井上一筒
「官兵衛の金銭感覚」
【此後摺切たると着きたらば、曲事に申付べきぞ、
必ず博打を打つな、又、無益な物を買うな、摺切らぬ様にせよ】
【人が物を買ひたると、自分に買ひたるとは、何れが嬉しきや】
【我、常に倹約をするは、取らせ度者に 思ふさま取らせ遺し度ためなり】
官兵衛は、野菜の皮や魚の骨も工夫しておかずにするよう命じるなど、
非情に倹約家だった。
一方、
【貯めこむだけの金は石ころにも劣る】という考えから、
家臣に褒美を与える際は、惜しげもなく与えており、
日ごろ倹約するのは、
「やりたいと思う者に十分くれてやりたいからだ」
と言っている。
ふところは四季を通じて寒気団 ふじのひろし
「天下について」
【君が御運開かせたもふべき始めぞ。 よく為させたまえ】
動揺する主君(
秀吉)に悩んでる時ではないと発破をかけた言葉。
広く知られた言葉である。
逆にこの言葉は、秀吉に官兵衛の恐ろしさを教えることになり、
警戒心を持たせることになった。
【天下を望む者は、親も子も顧みては叶わぬなり】
官兵衛の戦場で学んだ冷静さと冷淡さが伝わってくる。
【大将たる人は、威と云うものなくては 万人の押さへ成り難し】
大将に威厳がなければ多くの人を統率することはできない。
【上になれば、太閤に仕えずして天下を取るなり
又下にてもなければこそ、国を取り居り候】
上でしたら、太閤殿下に仕えて天下を取ります。
また下ではありませんから、国を取って国持ち大名になっております。
これが官兵衛の
「天下についての考え方」である。
この後、無欲な官兵衛は名を「如水」と改め、現役を引退している。
幽閉の歯型が船を漕いでいる 高橋 蘭
「長政へー道を説く」
【神の罰より主君の罰おそるべし。主君の罰より臣下百姓の罰】
という考えを官兵衛は基本にしている。
主君への忠節が一番だった武士の世の中で、
官兵衛は、神や主君罰以上に、臣下や百姓の罰は、
恐ろしいものだといっている。
神や主君の罰は、功績と引き換えに許されるかもしれない。
しかし、為政者が間違った判断や政治を続ければ、
人々の心は次第に離れる。
家臣や民の心が離れていくことが、何よりも恐ろしいこと、
慈しみ気配りを忘れるな、とこれもまた、長政に説いた言葉である。
流れる雲と反省会をしています 西澤知子
「処世」
【自分の行状を正しくし、理非賞罰をはっきりさせれば、
叱ったり脅したりしなくても家臣は自然に自分を敬うようになり、
法を軽んじるものもいなくなる。故に、自然と威厳が備わるもの】
【人の思付、我に及ばず、是人の使ひ様悪き故なり】
【人を殺すと言うは、容易ならざることなり】
【道にて余に逢ふとも避くべからず】
【我、不媚人、不望富貴】 (ー我、人に媚びず、富貴を望まず)
こしらえ
【拵え事で、いかにも威を身につけたようにふるまってみても、
それはかえって大きな害になるものだ】
他人から恐れられることが、威厳だと勘違いすると、
誰に対しても威張りちらすようになり、
誰も忠義を尽くそうとしなくなる-----と、言うのである。
真っ直ぐに歩いた路を子に残す 西田百合子[5回]
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